〜異世界で契約した従魔がEXランクの魔物達でした〜
第26話〜魔法の授業と処分の行方〜
第2章 イングレア王立学園編
第26話〜魔法の授業と処分の行方〜
...
...
その日の学院での授業が終わった後、僕とルディとシルフィは国王様の使いの人に案内されずにオーグと一緒に馬車に乗っている。
オーグ「ところで父上はユーマ達になんの用事なんだろうな?」
「オーグは今日僕達が、フランツって言うバラント伯爵の部下に絡まれたことは知ってるだろ?」
オーグ「ああ、勿論だ」
「その件を陛下に話したら今日の放課後使いの者を出すから、3人で王城に来てくれって言われてたんだよ。おそらくその件のことだと思う」
シルヴァティ「その認識であっていますよ、ユーマ様。それと私の事は殿下と同じくシルとお呼びください」
「ああ、分かったよ。よろしくな、シル」
シル「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。ユーマ様」
僕達は、馬車に揺られながら談笑していた。
王城に着くと、直ぐに陛下のいる応接間に通された。
勿論オーグも一緒だ。
「陛下、今朝は急な訪問にも関わらず、対応していただきありがとうございました」
ガルム「いえ、この国に住む民の悩みを聞くのは当然のこと。しかもユーマくんの頼みとあらば聞かないわけには行きませんよ」
「ありがとうございます。ところで今日みんなを呼び出したのはやはり今朝のことですか?」
ガルム「ええ、フランツ及びその場にいた兵士や雇われた冒険者の処遇が決まったのでお知らせしようかと思いまして。あとは君達に会いたいと言っている人物が2人ほどいますので後ほどご紹介します。まずはバラント伯爵の処遇ですが、国家反逆罪として爵位の剥奪と国外追放及び罰金として白金貨15枚を請求しました。この白金貨に関しては迷惑料の意味合いがあるのでユーマ君に受け取って欲しいのです」
「ありがたく頂戴いたします」
ガルム「うむ。そしてフランツとフランツの部下であった兵士は奴隷落ちとしました。雇われていた冒険者達は、調べたら余罪がありましたので、兵士と合わせて奴隷落ちとなりました。そちらのお金と先程のバラント伯爵の時の罰金を加えて、合計白金貨20枚をユーマ君に渡します」
「全てを任してしまい申し訳なく思いますが、対応してくださってありがとうございます」
ガルム「いえ、こちらとしても裏で帝国と繋がっていた貴族の奴らの中心人物の1人であるバラント伯爵を追放できたのは、ユーマ君のおかげなのです。なのでこちらも礼をさせてください。ユーマ君、ありがとう!」
陛下はそう言うと、僕達に向かって頭を下げたのだ。
それを見たヨハン宰相が慌てて止めた。
ヨハン「陛下、なりませんぞ。国王が民に頭を下げるなど!」
ガルム「ヨハンよ、これで良いのだ。私達はユーマ君のお陰で帝国主義の者をこの国から1人追い出すことができたのだ。これで他の帝国とつながっておるだろう貴族達にも牽制になったであろう。ユーマ君、本当にありがとう」
「ありがとうございます。僕としても陛下が動いてくださらなければ、次にもし絡んできたら僕はあの人達を手に掛けてしまうかもしれません。それを未然に防いでくださった陛下には感謝しております。なので、頭を上げてください」
ガルム「ありがとう、ユーマ君」
こうして、僕達に絡んできたフランツ達の処遇が決まったのだ。
「ところで僕に会いたい人って誰なんですか?」
ガルム「おっと、そうだったな。もう入って来て良いぞ」
陛下が入室を許可すると扉の向こうから若い女の人と可愛らしい女の子(僕より2つか3つくらい違うかな)が入ってきた。
女の人もとんでもないくらいの美人さんだなぁと思った。
ん?もしかしてこの2人って・・・
オーグ「母上⁉︎それにシャルロッテも⁉︎」
エーゼロッテ「ユーマ君、はじめまして。ガルムの妻でオーグの母親であるエーゼロッテよ。一応この国の王妃をしているわ。そして、私の横にいるのが娘のシャルロッテです。シャルロッテ、ご挨拶なさい」
シャルロッテ「はい、お母様。私の名前はシャルロッテと申します。兄のオーグ共々よろしくお願いしますわね」
「はじめまして、王妃様、シャルロッテ様。私の名前はユーマ・シンフィールドと申します。隣にいるのは、幼馴染のルディ・リザベートとメイドであるシルフィ・ホーンベルクです。以後よろしくお願いします」
僕が紹介すると、ルディとシルフィも王妃様に頭を下げていた。
エーゼロッテ「ユーマ君、私の事はエリーゼと呼んでくれないかしら?王妃と呼ばれるのはあんまり嬉しく無いの。それに夫のことだって陛下とかではなく、名前で呼んであげてください」
ガルム「そうだな。ユーマ君、これからは私の事も名前で呼んでくれないだろうか?」
「良いのですか?お二人さえよろしければそうしますよ」
ガルム「うむ、良いぞ」
エーゼロッテ「ええ、私も構いませんわ」
「では、今後はガルムさんとエリーゼさんと呼ばせてもらいます」
僕にさん付けで呼ばれて嬉しそうにしている2人とは対照的にシャルロッテ様はどこか不機嫌そうな顔をしていた。
「どうしましたか?シャルロッテ様?」
シャルロッテ「ユーマ様、私の事もお兄様と同じくシャルと呼んで欲しいですわ。お父様とお母様だけずるいです。私ももっとユーマ様と仲良くしていきたいです」
その言葉を受けて、僕は陛下の方を見ると無言で頷いていたので、そう呼んでも良いよと言う事なんだろうと解釈した。
「分かりました。ではシャルと呼ばせてもらいますね」
シャル「ええ、ありがとうございます。あと敬語もいらないですよ?ユーマ様に方が年上なのですから」
「しかしそれは・・・」
オーグ「良いと思うぞ。シャルは年上に憧れるところがあるからな。恐らく父上や母上も同意見だろうから」
陛下と王妃様も頷いていたので、敬語もやめた。
「分かり・・・分かったよ。これからはこう話すな。よろしくシャル」
シャル「はい!こちらこそよろしくお願いしますわ。ユーマ様」
「じゃあ僕の事も呼び捨てでいいよ。あんまり様って呼ばれる事に慣れてないからね」
シャル「では、ユーマとお呼びしますわね」
「うん!よろしく」
そう言い、僕とシャルは握手をした。
ガルム「そういえばユーマ君は剣も魔法も優れていましたよね?」
「ええ、自分ではまだまだだと思ってますけどね」
ガルム「そこで、そこにおるシャルにも稽古を付けてやってくれんかな?正直なところ騎士団や魔法師団の中で、ユーマ君より優れている者などいないと思うので」
「シャルさえ良ければ、僕でよければやらせてもらいますよ」
シャル「ユーマは、武芸にも精通していますのね。ではよろしくお願いできますか?」
「うん、分かったよ。ただルディとシルフィとの時間もありますので、あんまり時間は取れないかもしれませんよ?」
僕との時間と言った瞬間、ルディもシルフィも顔を赤くしていた。
シャル「勿論構いません。ところでお二人との関係をお聞きしても?」
「ああ、ルディもシルフィも僕の婚約者なんだ。デートしたりとかいろいろあるからね。勿論学園や冒険者としての活動を疎かにするわけじゃ無いよ」
シャル「婚約者ですの?それはおめでとうございますわ」
「うん、ありがとう」
こうして、シャルに稽古をつけることが決まった。
王妃様とも知り合えたし、僕の周り、凄い人ばっかりだなぁと感心した帰り道だった。
翌日・・・・・・
今日は魔法の授業だな。
全力出しちゃうと校舎や王都に被害が出るかもしれないからな。試験の時くらいに抑えよう。
1人で考えていると、後ろからシルフィが声をかけてきた。
シルフィ「ユーマ、おはよ」
「びっくりした〜。シルフィか、おはよう」
シルフィ「考え事してたの?」
「うん。今日の魔法の授業、加減しないと校舎とか最悪王都に被害がでるかもしれないからね」
シルフィ「強すぎるのも苦労が絶えないね笑」
「本当だよ、まあみんなを守れる力をくれた神様達には感謝してるけどね」
シルフィと話していると、ルディがやってきた。
ルディ「ユーマ君、シルフィ、おはよう」
「ルディ、おはよ」
シルフィ「おはよう、ルディ」
今日は魔法の授業なので、ルディはクリスをユリウスさん達に預けてきたみたいだ。
因みに僕の従魔であるルクスとリムルは、僕の空間魔法の中に入っているから一応連れて行く事になる。
「じゃあ、行こうか」
ルディ、シルフィ「「うん!」」
僕達は、今日も3人仲良く学園に登校するのだった。
クラスに入ると、アリスとヴェルディ以外は揃っていた。
「みんな、おはよ」
オーグ「3人ともおはよう。今日も仲良しだな!羨ましいぜ」
入るなりオーグがからかってきた。
「うるさいぞ、オーグ。別に婚約者同士仲良くしたっていいじゃ無いか」
オーグ「別に悪いとは言ってないだろ?仲が良さそうで羨ましいなと思っているだけさ」
「オーグくらいイケメンだったら婚約者の1人くらいいるんじゃ無いのか?」
オーグ「ああ、いるにはいるがちょっと訳ありでな。しかも婚約者がいても、女の人からは詰め寄られるから日々疲れるよ」
「イケメンも大変なんだなぁ」
みんなで話していると、チャイムぎりぎりにアリスとヴェルディが入ってきた。
アリス「間に合ってるよね?大丈夫だよね?」
ヴェルディ「間に合ってますか?」
「ああ、間に合ってるよ。おはよ、2人とも」
アリス「おはよ〜ユーマ君」
ヴェルディ「おはようございます、ユーマさん」
よく見ると、アリスの顔に朝ご飯に食べたと思われるパンのジャムが少しついていた。
余程かっこんで来たのだろうと思い、ハンカチを取り出してアリスの前へ行った。
アリス「?どうしたの?ユーマ君」
「アリス、ちょっとじっとしててな」
そう言うと、ハンカチでアリスの顔についていたジャムを取ってあげた。
すると、次第にアリスの顔が赤くなった。
アリス「も、もしかしてなんか付いてた?」
「うん、ジャムみたいなのが付いてたよ。朝かっこんでパン食べたでしょ」
アリス「うん照、時間なかったから」
「ちょっとだけだったから、気にするほどじゃ無いと思うよ」
アリス「気にするよぉ〜」
もうすぐ授業が始まりそうなので、席に移動しようとするとアリスが僕にお礼を言ってきた。
アリス「ありがとう、ユーマ君」
「うん、どういたしまして」
アリスはお礼を言うと、そそくさと自分の席に座った。
(アリスの顔、柔らかくて気持ちよかったな。それに近くで見るともっと可愛いし)
アリスに対して、そんなことを思っているとルディやシルフィからはジト目で見られてしまった。
うーん、女の子ってみんなエスパーなのかな?
そんな事を思いながら、授業の準備をしていると先生が入ってきた。
ラルフ「みんな、おはよう」
「「「「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」」」」
ラルフ「今日もみんなは元気だな!休みはいないな。では今日は魔法の授業から始めるから、みんな校庭に行くぞ」
先生が先導でみんなで校庭に向かうと、人形が5体立っていた。
ラルフ「あれは、魔法人形と言って食らったダメージによって、魔法の威力を数値化してくれるんだ。俺がここに就任してからの最高記録は3年前の卒業生が火属性の魔法で出した1500だったな。このあとみんなに火属性の〈火槍〉を唱えて、あれに撃ってもらう。そのあと、自分の得意魔法で撃ってもらうからな」
先生が用意した魔法人形は魔力を数値化してくれる代物でカンストは9999らしい。
みんなが先生の言った説明に頷くと、先生は授業を始めた。
ラルフ「では、エリカからだ」
エリカ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
エリカの手から放たれた火の槍は真っ直ぐ魔法人形に向かい飛んで行った。
人形に着弾すると、数値が表示された。
ラルフ「エリカは680だな。これだけあれば、Bランクの魔物も倒せるかもな」
エリカ「やった!」
エリカは喜びを名一杯表現していた。
うーん、可愛いな。
ラルフ「では次は、フーガ。頼むぞ」
フーガ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
フーガに放ったファイアランスも人形に向かって真っ直ぐ飛んでいった。
着弾すると、数値が表示された。
ラルフ「お、フーガは510か。これでも十分すぎるが、これから鍛錬を積めばもっと良くなるぞ」
フーガ「はい、ありがとうございます」
「おつかれ、フーガ」
フーガ「ユーマか、ありがとう。僕は火属性の魔法はそんなに得意じゃ無いんだけど、良い数値が出て良かったよ」
そうして話しているうちに、どんどんとみんなが終わっていった。
ファイアランスを撃った人の順番で、数値を並べると、ヴェルディが500、アリスが590、ウルトが560、ザノが450とみんなが軒並み高数値を叩き出していた。
ザノも魔法はそんなに得意じゃ無いと言っていたが400越えと良い数値だった。
ラルフ「みんな、数値が良いな。今年は例年、いや僕がここの先生になってから初めてだよ。では次は、殿下。お願いします」
オーグ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
オーグのファイアランスは、今までの中では大きく、それが飛んでいく様はとてもかっこよく見入ってしまった。
人形に着弾すると、驚きの数値が出た。
ラルフ「殿下の数値は、1400⁉︎初の大台ですよ!」
オーグ「良かった、鍛錬の成果が出たようだな」
オーグは終わった後、僕のところに来た。
「オーグ、凄いな。大台だなんて」
オーグ「ありがとう。日々の鍛錬によるものだからな。これからも頑張るよ。まあシルフィやルディ、ユーマの方が俺より高いと思うがな」
「恐らくね。僕なんかは抑えないと人形どころか校庭や校舎に被害が出そうだよ」
オーグ「まじか⁉︎お前どんだけ強いの?」
「さぁな、母さんとの修行でもあの人形は出てこなかったからな〜」
僕とオーグが話していると、シルフィが終わったようだ。
「シルフィ、おつかれ。どうだった?」
シルフィ「聞いてよ!私、オーグ超えちゃった。1840だったよ!」
「まじか!おめでとう」
シルフィ「うん。これも紅銀の大地の皆さんに鍛えられたおかげだね」
オーグ(やはり、シルフィにも超えられたか。という事はルディやユーマはもっと高いのか?俺もまだまだ研鑽する必要があるな)
ラルフ「次はルディだ。頑張れよ」
ルディ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
ルディの撃ったファイアランスは大きくなかったが、大きさ=強さではないため、数値が楽しみだった。
ルディのファイアランスが人形に着弾し、数値が出た。
ラルフ「ルディの数値は2600だ。今年の子達はどうなってるんだ⁉︎」
なんと2500を大きく超えたのだ。
見た資料によると、かつて大賢者と呼ばれた最強の魔法使いでも最大で2000を超えるくらいだったと聞く。
だから、学生の枠の中ではみんな凄いんだけどオーグやシルフィ、ルディは頭何個分か抜きん出てる感じだ。
恐らく僕は、加減してもこの数値を大きく上回ってしまうと思う。
出来れば4000は超えたくないな。
攻撃魔法を授業で撃つの禁止にされたらつまんないもんね。
ラルフ「最後はユーマだな。多分お前もとんでもない数値を出すんだろうが、頑張れよ」
「はい!〈火槍!〉
僕は、いつも通り無詠唱で魔法を放った。
先生やみんな(ルディとシルフィは修行してたときから見てたから気にしてなかった)が口をポカーンと開けてる間に人形に着弾した。
数値を見ると、軽く撃ったのに3800という数値を叩き出していた。
「先生?終わりましたよ」
ラルフ「ユーマ、お前詠唱はどうした?」
「必要ないですよ。僕は無詠唱で撃てるので」
ラルフ「無詠唱⁉︎無詠唱って確か詠唱するより威力落ちるんじゃないのか?」
「詠唱するのってイメージしやすくするためだってお母さんから聞いていたので、僕は詠唱しなくてもイメージできるので無詠唱で撃ってます。それに威力も詠唱魔法とあまり大差ないですからね」
ラルフ「それで、ユーマの数値は幾らだったんだ?」
「3800でした。軽く撃ったんですけどね」
ラルフ「軽く撃って4000近く行くのか⁉︎やばいな。今年の武魔法大会はうちが取れるかな?」
「何ですか?その武魔法大会って?」
ラルフ「毎年夏頃に行われる大会でな。近隣国3ヵ国の王立学校の代表生徒5名で争うんだ。毎年順位は変わるんだが、ここ3、4年はずっと帝国にあるノズワール帝国学院が優勝していて、うちはずっと最下位なんだ。校長も陛下も今年こそ優勝したいと言っておられている。どうやら最下位がずっと続いているのを突いてくる貴族達がいるそうなんだ。恐らく帝国主義の者だと思う。このままではいつクーデターが起こってもおかしくはない。だが今年はみんながいる。みんなの実力があれば、優勝だって狙えるはずだ」
「その武魔法大会って1年生から3年生まで出るんですか?」
ラルフ「ああ、その学園の全ての生徒の中から代表5名を選抜するんだ。3年生からしたら最後の大会だから不服だろうが、僕はここにいる1年生の中から5人を推薦しようと思ってるよ」
「文句とか反感を買いそうなんですけど?」
ラルフ「実力がある者が出るのが当たり前の道理だ。プライドを優先させて負けてしまっては元も子もないからな」
その後、それぞれの得意魔法を人形に向かって撃ったりした。
得意魔法なだけあって、みんな軒並み高数値を叩き出していた。
これなら武魔法大会は僕達1年生だけで勝てるのではないかという自信が出てきた。
第26話〜魔法の授業と処分の行方〜
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その日の学院での授業が終わった後、僕とルディとシルフィは国王様の使いの人に案内されずにオーグと一緒に馬車に乗っている。
オーグ「ところで父上はユーマ達になんの用事なんだろうな?」
「オーグは今日僕達が、フランツって言うバラント伯爵の部下に絡まれたことは知ってるだろ?」
オーグ「ああ、勿論だ」
「その件を陛下に話したら今日の放課後使いの者を出すから、3人で王城に来てくれって言われてたんだよ。おそらくその件のことだと思う」
シルヴァティ「その認識であっていますよ、ユーマ様。それと私の事は殿下と同じくシルとお呼びください」
「ああ、分かったよ。よろしくな、シル」
シル「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。ユーマ様」
僕達は、馬車に揺られながら談笑していた。
王城に着くと、直ぐに陛下のいる応接間に通された。
勿論オーグも一緒だ。
「陛下、今朝は急な訪問にも関わらず、対応していただきありがとうございました」
ガルム「いえ、この国に住む民の悩みを聞くのは当然のこと。しかもユーマくんの頼みとあらば聞かないわけには行きませんよ」
「ありがとうございます。ところで今日みんなを呼び出したのはやはり今朝のことですか?」
ガルム「ええ、フランツ及びその場にいた兵士や雇われた冒険者の処遇が決まったのでお知らせしようかと思いまして。あとは君達に会いたいと言っている人物が2人ほどいますので後ほどご紹介します。まずはバラント伯爵の処遇ですが、国家反逆罪として爵位の剥奪と国外追放及び罰金として白金貨15枚を請求しました。この白金貨に関しては迷惑料の意味合いがあるのでユーマ君に受け取って欲しいのです」
「ありがたく頂戴いたします」
ガルム「うむ。そしてフランツとフランツの部下であった兵士は奴隷落ちとしました。雇われていた冒険者達は、調べたら余罪がありましたので、兵士と合わせて奴隷落ちとなりました。そちらのお金と先程のバラント伯爵の時の罰金を加えて、合計白金貨20枚をユーマ君に渡します」
「全てを任してしまい申し訳なく思いますが、対応してくださってありがとうございます」
ガルム「いえ、こちらとしても裏で帝国と繋がっていた貴族の奴らの中心人物の1人であるバラント伯爵を追放できたのは、ユーマ君のおかげなのです。なのでこちらも礼をさせてください。ユーマ君、ありがとう!」
陛下はそう言うと、僕達に向かって頭を下げたのだ。
それを見たヨハン宰相が慌てて止めた。
ヨハン「陛下、なりませんぞ。国王が民に頭を下げるなど!」
ガルム「ヨハンよ、これで良いのだ。私達はユーマ君のお陰で帝国主義の者をこの国から1人追い出すことができたのだ。これで他の帝国とつながっておるだろう貴族達にも牽制になったであろう。ユーマ君、本当にありがとう」
「ありがとうございます。僕としても陛下が動いてくださらなければ、次にもし絡んできたら僕はあの人達を手に掛けてしまうかもしれません。それを未然に防いでくださった陛下には感謝しております。なので、頭を上げてください」
ガルム「ありがとう、ユーマ君」
こうして、僕達に絡んできたフランツ達の処遇が決まったのだ。
「ところで僕に会いたい人って誰なんですか?」
ガルム「おっと、そうだったな。もう入って来て良いぞ」
陛下が入室を許可すると扉の向こうから若い女の人と可愛らしい女の子(僕より2つか3つくらい違うかな)が入ってきた。
女の人もとんでもないくらいの美人さんだなぁと思った。
ん?もしかしてこの2人って・・・
オーグ「母上⁉︎それにシャルロッテも⁉︎」
エーゼロッテ「ユーマ君、はじめまして。ガルムの妻でオーグの母親であるエーゼロッテよ。一応この国の王妃をしているわ。そして、私の横にいるのが娘のシャルロッテです。シャルロッテ、ご挨拶なさい」
シャルロッテ「はい、お母様。私の名前はシャルロッテと申します。兄のオーグ共々よろしくお願いしますわね」
「はじめまして、王妃様、シャルロッテ様。私の名前はユーマ・シンフィールドと申します。隣にいるのは、幼馴染のルディ・リザベートとメイドであるシルフィ・ホーンベルクです。以後よろしくお願いします」
僕が紹介すると、ルディとシルフィも王妃様に頭を下げていた。
エーゼロッテ「ユーマ君、私の事はエリーゼと呼んでくれないかしら?王妃と呼ばれるのはあんまり嬉しく無いの。それに夫のことだって陛下とかではなく、名前で呼んであげてください」
ガルム「そうだな。ユーマ君、これからは私の事も名前で呼んでくれないだろうか?」
「良いのですか?お二人さえよろしければそうしますよ」
ガルム「うむ、良いぞ」
エーゼロッテ「ええ、私も構いませんわ」
「では、今後はガルムさんとエリーゼさんと呼ばせてもらいます」
僕にさん付けで呼ばれて嬉しそうにしている2人とは対照的にシャルロッテ様はどこか不機嫌そうな顔をしていた。
「どうしましたか?シャルロッテ様?」
シャルロッテ「ユーマ様、私の事もお兄様と同じくシャルと呼んで欲しいですわ。お父様とお母様だけずるいです。私ももっとユーマ様と仲良くしていきたいです」
その言葉を受けて、僕は陛下の方を見ると無言で頷いていたので、そう呼んでも良いよと言う事なんだろうと解釈した。
「分かりました。ではシャルと呼ばせてもらいますね」
シャル「ええ、ありがとうございます。あと敬語もいらないですよ?ユーマ様に方が年上なのですから」
「しかしそれは・・・」
オーグ「良いと思うぞ。シャルは年上に憧れるところがあるからな。恐らく父上や母上も同意見だろうから」
陛下と王妃様も頷いていたので、敬語もやめた。
「分かり・・・分かったよ。これからはこう話すな。よろしくシャル」
シャル「はい!こちらこそよろしくお願いしますわ。ユーマ様」
「じゃあ僕の事も呼び捨てでいいよ。あんまり様って呼ばれる事に慣れてないからね」
シャル「では、ユーマとお呼びしますわね」
「うん!よろしく」
そう言い、僕とシャルは握手をした。
ガルム「そういえばユーマ君は剣も魔法も優れていましたよね?」
「ええ、自分ではまだまだだと思ってますけどね」
ガルム「そこで、そこにおるシャルにも稽古を付けてやってくれんかな?正直なところ騎士団や魔法師団の中で、ユーマ君より優れている者などいないと思うので」
「シャルさえ良ければ、僕でよければやらせてもらいますよ」
シャル「ユーマは、武芸にも精通していますのね。ではよろしくお願いできますか?」
「うん、分かったよ。ただルディとシルフィとの時間もありますので、あんまり時間は取れないかもしれませんよ?」
僕との時間と言った瞬間、ルディもシルフィも顔を赤くしていた。
シャル「勿論構いません。ところでお二人との関係をお聞きしても?」
「ああ、ルディもシルフィも僕の婚約者なんだ。デートしたりとかいろいろあるからね。勿論学園や冒険者としての活動を疎かにするわけじゃ無いよ」
シャル「婚約者ですの?それはおめでとうございますわ」
「うん、ありがとう」
こうして、シャルに稽古をつけることが決まった。
王妃様とも知り合えたし、僕の周り、凄い人ばっかりだなぁと感心した帰り道だった。
翌日・・・・・・
今日は魔法の授業だな。
全力出しちゃうと校舎や王都に被害が出るかもしれないからな。試験の時くらいに抑えよう。
1人で考えていると、後ろからシルフィが声をかけてきた。
シルフィ「ユーマ、おはよ」
「びっくりした〜。シルフィか、おはよう」
シルフィ「考え事してたの?」
「うん。今日の魔法の授業、加減しないと校舎とか最悪王都に被害がでるかもしれないからね」
シルフィ「強すぎるのも苦労が絶えないね笑」
「本当だよ、まあみんなを守れる力をくれた神様達には感謝してるけどね」
シルフィと話していると、ルディがやってきた。
ルディ「ユーマ君、シルフィ、おはよう」
「ルディ、おはよ」
シルフィ「おはよう、ルディ」
今日は魔法の授業なので、ルディはクリスをユリウスさん達に預けてきたみたいだ。
因みに僕の従魔であるルクスとリムルは、僕の空間魔法の中に入っているから一応連れて行く事になる。
「じゃあ、行こうか」
ルディ、シルフィ「「うん!」」
僕達は、今日も3人仲良く学園に登校するのだった。
クラスに入ると、アリスとヴェルディ以外は揃っていた。
「みんな、おはよ」
オーグ「3人ともおはよう。今日も仲良しだな!羨ましいぜ」
入るなりオーグがからかってきた。
「うるさいぞ、オーグ。別に婚約者同士仲良くしたっていいじゃ無いか」
オーグ「別に悪いとは言ってないだろ?仲が良さそうで羨ましいなと思っているだけさ」
「オーグくらいイケメンだったら婚約者の1人くらいいるんじゃ無いのか?」
オーグ「ああ、いるにはいるがちょっと訳ありでな。しかも婚約者がいても、女の人からは詰め寄られるから日々疲れるよ」
「イケメンも大変なんだなぁ」
みんなで話していると、チャイムぎりぎりにアリスとヴェルディが入ってきた。
アリス「間に合ってるよね?大丈夫だよね?」
ヴェルディ「間に合ってますか?」
「ああ、間に合ってるよ。おはよ、2人とも」
アリス「おはよ〜ユーマ君」
ヴェルディ「おはようございます、ユーマさん」
よく見ると、アリスの顔に朝ご飯に食べたと思われるパンのジャムが少しついていた。
余程かっこんで来たのだろうと思い、ハンカチを取り出してアリスの前へ行った。
アリス「?どうしたの?ユーマ君」
「アリス、ちょっとじっとしててな」
そう言うと、ハンカチでアリスの顔についていたジャムを取ってあげた。
すると、次第にアリスの顔が赤くなった。
アリス「も、もしかしてなんか付いてた?」
「うん、ジャムみたいなのが付いてたよ。朝かっこんでパン食べたでしょ」
アリス「うん照、時間なかったから」
「ちょっとだけだったから、気にするほどじゃ無いと思うよ」
アリス「気にするよぉ〜」
もうすぐ授業が始まりそうなので、席に移動しようとするとアリスが僕にお礼を言ってきた。
アリス「ありがとう、ユーマ君」
「うん、どういたしまして」
アリスはお礼を言うと、そそくさと自分の席に座った。
(アリスの顔、柔らかくて気持ちよかったな。それに近くで見るともっと可愛いし)
アリスに対して、そんなことを思っているとルディやシルフィからはジト目で見られてしまった。
うーん、女の子ってみんなエスパーなのかな?
そんな事を思いながら、授業の準備をしていると先生が入ってきた。
ラルフ「みんな、おはよう」
「「「「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」」」」
ラルフ「今日もみんなは元気だな!休みはいないな。では今日は魔法の授業から始めるから、みんな校庭に行くぞ」
先生が先導でみんなで校庭に向かうと、人形が5体立っていた。
ラルフ「あれは、魔法人形と言って食らったダメージによって、魔法の威力を数値化してくれるんだ。俺がここに就任してからの最高記録は3年前の卒業生が火属性の魔法で出した1500だったな。このあとみんなに火属性の〈火槍〉を唱えて、あれに撃ってもらう。そのあと、自分の得意魔法で撃ってもらうからな」
先生が用意した魔法人形は魔力を数値化してくれる代物でカンストは9999らしい。
みんなが先生の言った説明に頷くと、先生は授業を始めた。
ラルフ「では、エリカからだ」
エリカ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
エリカの手から放たれた火の槍は真っ直ぐ魔法人形に向かい飛んで行った。
人形に着弾すると、数値が表示された。
ラルフ「エリカは680だな。これだけあれば、Bランクの魔物も倒せるかもな」
エリカ「やった!」
エリカは喜びを名一杯表現していた。
うーん、可愛いな。
ラルフ「では次は、フーガ。頼むぞ」
フーガ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
フーガに放ったファイアランスも人形に向かって真っ直ぐ飛んでいった。
着弾すると、数値が表示された。
ラルフ「お、フーガは510か。これでも十分すぎるが、これから鍛錬を積めばもっと良くなるぞ」
フーガ「はい、ありがとうございます」
「おつかれ、フーガ」
フーガ「ユーマか、ありがとう。僕は火属性の魔法はそんなに得意じゃ無いんだけど、良い数値が出て良かったよ」
そうして話しているうちに、どんどんとみんなが終わっていった。
ファイアランスを撃った人の順番で、数値を並べると、ヴェルディが500、アリスが590、ウルトが560、ザノが450とみんなが軒並み高数値を叩き出していた。
ザノも魔法はそんなに得意じゃ無いと言っていたが400越えと良い数値だった。
ラルフ「みんな、数値が良いな。今年は例年、いや僕がここの先生になってから初めてだよ。では次は、殿下。お願いします」
オーグ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
オーグのファイアランスは、今までの中では大きく、それが飛んでいく様はとてもかっこよく見入ってしまった。
人形に着弾すると、驚きの数値が出た。
ラルフ「殿下の数値は、1400⁉︎初の大台ですよ!」
オーグ「良かった、鍛錬の成果が出たようだな」
オーグは終わった後、僕のところに来た。
「オーグ、凄いな。大台だなんて」
オーグ「ありがとう。日々の鍛錬によるものだからな。これからも頑張るよ。まあシルフィやルディ、ユーマの方が俺より高いと思うがな」
「恐らくね。僕なんかは抑えないと人形どころか校庭や校舎に被害が出そうだよ」
オーグ「まじか⁉︎お前どんだけ強いの?」
「さぁな、母さんとの修行でもあの人形は出てこなかったからな〜」
僕とオーグが話していると、シルフィが終わったようだ。
「シルフィ、おつかれ。どうだった?」
シルフィ「聞いてよ!私、オーグ超えちゃった。1840だったよ!」
「まじか!おめでとう」
シルフィ「うん。これも紅銀の大地の皆さんに鍛えられたおかげだね」
オーグ(やはり、シルフィにも超えられたか。という事はルディやユーマはもっと高いのか?俺もまだまだ研鑽する必要があるな)
ラルフ「次はルディだ。頑張れよ」
ルディ「はい!我が手に来れ、火の魔力よ 集まり火の槍となれ!〈火槍〉!」
ルディの撃ったファイアランスは大きくなかったが、大きさ=強さではないため、数値が楽しみだった。
ルディのファイアランスが人形に着弾し、数値が出た。
ラルフ「ルディの数値は2600だ。今年の子達はどうなってるんだ⁉︎」
なんと2500を大きく超えたのだ。
見た資料によると、かつて大賢者と呼ばれた最強の魔法使いでも最大で2000を超えるくらいだったと聞く。
だから、学生の枠の中ではみんな凄いんだけどオーグやシルフィ、ルディは頭何個分か抜きん出てる感じだ。
恐らく僕は、加減してもこの数値を大きく上回ってしまうと思う。
出来れば4000は超えたくないな。
攻撃魔法を授業で撃つの禁止にされたらつまんないもんね。
ラルフ「最後はユーマだな。多分お前もとんでもない数値を出すんだろうが、頑張れよ」
「はい!〈火槍!〉
僕は、いつも通り無詠唱で魔法を放った。
先生やみんな(ルディとシルフィは修行してたときから見てたから気にしてなかった)が口をポカーンと開けてる間に人形に着弾した。
数値を見ると、軽く撃ったのに3800という数値を叩き出していた。
「先生?終わりましたよ」
ラルフ「ユーマ、お前詠唱はどうした?」
「必要ないですよ。僕は無詠唱で撃てるので」
ラルフ「無詠唱⁉︎無詠唱って確か詠唱するより威力落ちるんじゃないのか?」
「詠唱するのってイメージしやすくするためだってお母さんから聞いていたので、僕は詠唱しなくてもイメージできるので無詠唱で撃ってます。それに威力も詠唱魔法とあまり大差ないですからね」
ラルフ「それで、ユーマの数値は幾らだったんだ?」
「3800でした。軽く撃ったんですけどね」
ラルフ「軽く撃って4000近く行くのか⁉︎やばいな。今年の武魔法大会はうちが取れるかな?」
「何ですか?その武魔法大会って?」
ラルフ「毎年夏頃に行われる大会でな。近隣国3ヵ国の王立学校の代表生徒5名で争うんだ。毎年順位は変わるんだが、ここ3、4年はずっと帝国にあるノズワール帝国学院が優勝していて、うちはずっと最下位なんだ。校長も陛下も今年こそ優勝したいと言っておられている。どうやら最下位がずっと続いているのを突いてくる貴族達がいるそうなんだ。恐らく帝国主義の者だと思う。このままではいつクーデターが起こってもおかしくはない。だが今年はみんながいる。みんなの実力があれば、優勝だって狙えるはずだ」
「その武魔法大会って1年生から3年生まで出るんですか?」
ラルフ「ああ、その学園の全ての生徒の中から代表5名を選抜するんだ。3年生からしたら最後の大会だから不服だろうが、僕はここにいる1年生の中から5人を推薦しようと思ってるよ」
「文句とか反感を買いそうなんですけど?」
ラルフ「実力がある者が出るのが当たり前の道理だ。プライドを優先させて負けてしまっては元も子もないからな」
その後、それぞれの得意魔法を人形に向かって撃ったりした。
得意魔法なだけあって、みんな軒並み高数値を叩き出していた。
これなら武魔法大会は僕達1年生だけで勝てるのではないかという自信が出てきた。
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