サムライだけど淫魔なので無双します ~淫魔王の血を引く少年は、剣と淫力で美少女達を屈服させる~
第21話 ナバル・ブルーの夜に
むせ返るような臭いの中、深窓の令嬢であったヴェストリア帝国の皇女ベルシアは、ブランゾワ一味によって惨い目に遭っていた。
「んん、ぐぅ、ふむぅん……」
呻き声を上げながら、ベルシアは涙をこぼしている。白蝋の如き裸体は、暑さと苦しさのあまり噴き出る汗で、光り輝いている。
「あ、ああ、ベルシアちゃん……」
「へへへ、たまんねえ……さすが皇女、格別の美味さだぜ……」
「ほらほら、嫌がってる割には……」
下卑た声を浴びせかけられるたびに、「ん、ふぅ……」とベルシアは鼻息を漏らす。肯定の言葉なのか、悔しさの表れなのか、よく判らない。
一部始終を眺めているブランゾワは、満足げにうなずいた。
「くひひひ、こりゃあ、思いがけず上玉を手に入れたもんだ」
夕食の骨付き肉を豪快に噛みちぎり、グッチャグッチャと音を立てて、肉の塊を崩していく。
「さあて、船にも入れたし、あとはアルマを捕まえるだけだぜ」
ブランゾワの下卑た笑い声が、室内にこだました。
 
※ ※ ※
 
満月が砂漠を照らし、青白い空間を創り出している。オリガは部屋の窓から外を眺め、延々と砂漠が続くだけの風景を、飽きもせずに観賞している。
なぜか楽しげに鼻歌を歌いながら。
「今晩は楽しみだわ♪」
「オリガ様、本当に、その、するんですか?」
「何を言ってるのよ。アズラックを出てから一度もしてないじゃない」
「ですが、正直、そういうことをしている場合では……ニーザの護衛もありますし」
「ニーザちゃんはザリタに任せておけば大丈夫よ。それより、私達の体のほうが心配よ。このまま何もしないでいたら、大事なところがカピカピに乾いちゃうわ」
「いえ、でも」
「さーて、シャワーでも浴びて、綺麗にしておかないとね!」
ソフィアの問いかけを無視して、オリガはシャワー室へと向かった。
(そういえば……)
ふと、疑問が湧く。
(どうして、この船はシャワーが使えるのかしら……)
砂の上を走る船に、多くの乗客が使えるだけの水が積んであるとは、到底思えない。となると、どうやって水を供給しているのだろうか。
「オリガ様、入りますよ」
部屋の扉を叩く音がし、イリーナの声が聞こえてきた。
「どうぞー」
「あ、すみません。シャワー浴びるところだったんですか?」
部屋の中に入ってきたイリーナは、ボンテージレオタードを脱ごうとしているオリガを見て、少しばかり立ち止まった。
「いいのよ、イリーナ。気にしないで、入ってちょうだい」
「それじゃあ……」
扉を閉めたイリーナは、首を傾げた。当然いるはずの人物が、影も形も見当たらない。
「あの、オリガ様」
「どうしたの?」
「ニーザは、どこへ行ったんですか?」
「あの子なら、ザリタと一緒に、甲板に出てるわ。船の中からじゃなくて、外で、夜の沙漠を眺めたいんだって」
「色々と物珍しいんですね」
「ほんと可愛い子。あの怖いザリタがいなければ、すぐにでも手を出しちゃうのに」
ペロリ、とオリガは唇を舐めた。
そんなオリガを見て、イリーナは嫌な予感がし、ソフィアのほうを見てみた。
「オリガ様が、もう抑えきれないんだって」
肩をすくめるソフィア。
イリーナもやれやれとかぶりを振った。オリガは性欲旺盛な女だが、まさか旅先でまでその性格を発揮するとは思ってもいなかった。
「ねえ、イリーナも思わない? いっぺん、スリード君を食べてみたい、って」
「それはまあ、彼、可愛いですから……」
「でしょ? 私は食べてみたい。ソフィアも付き合ってくれるって。あなたもどう? 私達三人と、スリード君で楽しく夜を過ごすの」
「いいですけど、ニーザの護衛も忘れないでくださいね。何かあったら、ザリタがブチ切れますよ」
とにかくザリタを怒らせると危ない、ということは、全員の中での共通認識となっていた。
※ ※ ※
ニーザは甲板に上がって、船の縁から夜のナバル砂漠を観賞している。
その横で、ザリタが詩を吟じていた。
「星座群は銀粉の如く、満月に照らされし砂漠は湖中の如く、我は愛しき汝の衣を身に纏い、果てることなき西方へ赴かん……」
朗朗とした歌声は、普段の無骨なザリタからは想像も出来ない、透き通った艶やかな声音だ。
「いざ踊らん、竜人の舞、我ら等しき土の民なり、相争うの愚を知るは、我のみならず汝のため、汝を愛するがため、汝の千年後の子を守るがため……」
パチパチ。
後ろで誰かが手を叩いた。思いがけない出来事に、ザリタは当惑して、詩を吟じるのをやめてしまった。
ニーザは後ろを振り返り、問いかけた。
「誰?」
拍手をした男が、ニーザの近くに寄ってくる。
整った口髭を生やした、40代ぐらいの男だ。中年だが、肉体は鍛え抜かれており、ザリタに負けず劣らず長身である。
「今晩は、お嬢さん。そちらは付き人の方かな? 素敵な詩を聞かせてもらいましたよ。今のは確か、ヴェストリアを建国した、ルドルフ一世の詩ですよね? ちょっと聞いただけでは、平等愛を説いているようでいて、実は去っていった恋人に対する忘れられない愛情が読み込まれている……やや古臭さはあるものの、今聞いてもいい詩だ。あなたはお好きなのですか?」
その問いは、ニーザに向けられていた。
若干戸惑いながら、ニーザは答える。
「う、うん。死んじゃったお母さんが、ボクによく聞かせてくれたの。だから、このボクのボディガードのザリタさんにお願いしたんだ。それより、オジサン、誰?」
「ははは、変な人と間違われたかもしれませんな。これは失礼」
そこで、男は被っていた帽子を脱いで、胸の前に片手で押さえた。そのまま、軽く腰を曲げて、ニーザとザリタにお辞儀をする。
「申し遅れましたが、私はこの砂上船ガラテア号の船長、ホークと言います。キャプテン・ホークで通っておりますので、どうぞ、そちらでお呼びください」
「ふうん……」
まだ多少は緊張しているが、ニーザは警戒を解いた。着ている服装も、船員の制服を豪華にしたようなデザインだから、本当に船長なのだろう。
ただ、船長と言うよりは、海賊船の大将でもやっていそうな風貌である。幅の広い羽付き帽子と、ピンと撥ね上がっている口髭が、ますます堅気でない印象を与える。
「ナバル砂漠の夜景は、大陸の三大絶景と呼ばれているのですよ。特に、今晩のように満月が美しい夜はね。お嬢さんは、素晴らしいときに船に乗ったものです。今日みたいに青みがかった夜は、ナバル・ブルーと呼ばれまして、一生に一度見られたら幸運な光景なのです」
「そうなんだー。じゃ、ボクはラッキーってこと?」
「ラッキー……確かにそうですね。ですが、一方で、問題もあります。満月の日には、奴らが現れやすくなっているからです」
「奴ら?」
「砂漠の亡霊、サンドライダーズですよ」
※ ※ ※
館内を散策していたスリードは、自分の部屋に戻り、扉を開けた瞬間、ギョッとして、その場で固まった。
ベッドに、オリガ、ソフィア、イリーナの三人娘が腰かけている。三人とも楽しげな表情を浮かべて。
「な、何かあったの?」
恐る恐る尋ねると、オリガがウィンクしてきた。
「今晩はみんなで楽しんでみない?」
「え? え?」
「ほら、私達としても、あなたが本当に淫魔王の血を引く者かどうか、試してみたいし……ね」
とんでもないことになってきた、とスリードは体を震わせていた。
「んん、ぐぅ、ふむぅん……」
呻き声を上げながら、ベルシアは涙をこぼしている。白蝋の如き裸体は、暑さと苦しさのあまり噴き出る汗で、光り輝いている。
「あ、ああ、ベルシアちゃん……」
「へへへ、たまんねえ……さすが皇女、格別の美味さだぜ……」
「ほらほら、嫌がってる割には……」
下卑た声を浴びせかけられるたびに、「ん、ふぅ……」とベルシアは鼻息を漏らす。肯定の言葉なのか、悔しさの表れなのか、よく判らない。
一部始終を眺めているブランゾワは、満足げにうなずいた。
「くひひひ、こりゃあ、思いがけず上玉を手に入れたもんだ」
夕食の骨付き肉を豪快に噛みちぎり、グッチャグッチャと音を立てて、肉の塊を崩していく。
「さあて、船にも入れたし、あとはアルマを捕まえるだけだぜ」
ブランゾワの下卑た笑い声が、室内にこだました。
 
※ ※ ※
 
満月が砂漠を照らし、青白い空間を創り出している。オリガは部屋の窓から外を眺め、延々と砂漠が続くだけの風景を、飽きもせずに観賞している。
なぜか楽しげに鼻歌を歌いながら。
「今晩は楽しみだわ♪」
「オリガ様、本当に、その、するんですか?」
「何を言ってるのよ。アズラックを出てから一度もしてないじゃない」
「ですが、正直、そういうことをしている場合では……ニーザの護衛もありますし」
「ニーザちゃんはザリタに任せておけば大丈夫よ。それより、私達の体のほうが心配よ。このまま何もしないでいたら、大事なところがカピカピに乾いちゃうわ」
「いえ、でも」
「さーて、シャワーでも浴びて、綺麗にしておかないとね!」
ソフィアの問いかけを無視して、オリガはシャワー室へと向かった。
(そういえば……)
ふと、疑問が湧く。
(どうして、この船はシャワーが使えるのかしら……)
砂の上を走る船に、多くの乗客が使えるだけの水が積んであるとは、到底思えない。となると、どうやって水を供給しているのだろうか。
「オリガ様、入りますよ」
部屋の扉を叩く音がし、イリーナの声が聞こえてきた。
「どうぞー」
「あ、すみません。シャワー浴びるところだったんですか?」
部屋の中に入ってきたイリーナは、ボンテージレオタードを脱ごうとしているオリガを見て、少しばかり立ち止まった。
「いいのよ、イリーナ。気にしないで、入ってちょうだい」
「それじゃあ……」
扉を閉めたイリーナは、首を傾げた。当然いるはずの人物が、影も形も見当たらない。
「あの、オリガ様」
「どうしたの?」
「ニーザは、どこへ行ったんですか?」
「あの子なら、ザリタと一緒に、甲板に出てるわ。船の中からじゃなくて、外で、夜の沙漠を眺めたいんだって」
「色々と物珍しいんですね」
「ほんと可愛い子。あの怖いザリタがいなければ、すぐにでも手を出しちゃうのに」
ペロリ、とオリガは唇を舐めた。
そんなオリガを見て、イリーナは嫌な予感がし、ソフィアのほうを見てみた。
「オリガ様が、もう抑えきれないんだって」
肩をすくめるソフィア。
イリーナもやれやれとかぶりを振った。オリガは性欲旺盛な女だが、まさか旅先でまでその性格を発揮するとは思ってもいなかった。
「ねえ、イリーナも思わない? いっぺん、スリード君を食べてみたい、って」
「それはまあ、彼、可愛いですから……」
「でしょ? 私は食べてみたい。ソフィアも付き合ってくれるって。あなたもどう? 私達三人と、スリード君で楽しく夜を過ごすの」
「いいですけど、ニーザの護衛も忘れないでくださいね。何かあったら、ザリタがブチ切れますよ」
とにかくザリタを怒らせると危ない、ということは、全員の中での共通認識となっていた。
※ ※ ※
ニーザは甲板に上がって、船の縁から夜のナバル砂漠を観賞している。
その横で、ザリタが詩を吟じていた。
「星座群は銀粉の如く、満月に照らされし砂漠は湖中の如く、我は愛しき汝の衣を身に纏い、果てることなき西方へ赴かん……」
朗朗とした歌声は、普段の無骨なザリタからは想像も出来ない、透き通った艶やかな声音だ。
「いざ踊らん、竜人の舞、我ら等しき土の民なり、相争うの愚を知るは、我のみならず汝のため、汝を愛するがため、汝の千年後の子を守るがため……」
パチパチ。
後ろで誰かが手を叩いた。思いがけない出来事に、ザリタは当惑して、詩を吟じるのをやめてしまった。
ニーザは後ろを振り返り、問いかけた。
「誰?」
拍手をした男が、ニーザの近くに寄ってくる。
整った口髭を生やした、40代ぐらいの男だ。中年だが、肉体は鍛え抜かれており、ザリタに負けず劣らず長身である。
「今晩は、お嬢さん。そちらは付き人の方かな? 素敵な詩を聞かせてもらいましたよ。今のは確か、ヴェストリアを建国した、ルドルフ一世の詩ですよね? ちょっと聞いただけでは、平等愛を説いているようでいて、実は去っていった恋人に対する忘れられない愛情が読み込まれている……やや古臭さはあるものの、今聞いてもいい詩だ。あなたはお好きなのですか?」
その問いは、ニーザに向けられていた。
若干戸惑いながら、ニーザは答える。
「う、うん。死んじゃったお母さんが、ボクによく聞かせてくれたの。だから、このボクのボディガードのザリタさんにお願いしたんだ。それより、オジサン、誰?」
「ははは、変な人と間違われたかもしれませんな。これは失礼」
そこで、男は被っていた帽子を脱いで、胸の前に片手で押さえた。そのまま、軽く腰を曲げて、ニーザとザリタにお辞儀をする。
「申し遅れましたが、私はこの砂上船ガラテア号の船長、ホークと言います。キャプテン・ホークで通っておりますので、どうぞ、そちらでお呼びください」
「ふうん……」
まだ多少は緊張しているが、ニーザは警戒を解いた。着ている服装も、船員の制服を豪華にしたようなデザインだから、本当に船長なのだろう。
ただ、船長と言うよりは、海賊船の大将でもやっていそうな風貌である。幅の広い羽付き帽子と、ピンと撥ね上がっている口髭が、ますます堅気でない印象を与える。
「ナバル砂漠の夜景は、大陸の三大絶景と呼ばれているのですよ。特に、今晩のように満月が美しい夜はね。お嬢さんは、素晴らしいときに船に乗ったものです。今日みたいに青みがかった夜は、ナバル・ブルーと呼ばれまして、一生に一度見られたら幸運な光景なのです」
「そうなんだー。じゃ、ボクはラッキーってこと?」
「ラッキー……確かにそうですね。ですが、一方で、問題もあります。満月の日には、奴らが現れやすくなっているからです」
「奴ら?」
「砂漠の亡霊、サンドライダーズですよ」
※ ※ ※
館内を散策していたスリードは、自分の部屋に戻り、扉を開けた瞬間、ギョッとして、その場で固まった。
ベッドに、オリガ、ソフィア、イリーナの三人娘が腰かけている。三人とも楽しげな表情を浮かべて。
「な、何かあったの?」
恐る恐る尋ねると、オリガがウィンクしてきた。
「今晩はみんなで楽しんでみない?」
「え? え?」
「ほら、私達としても、あなたが本当に淫魔王の血を引く者かどうか、試してみたいし……ね」
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