みんなの役に立ちたい気持ちは誰にも負けない!!!
正体
私はよく分からないまま、今にも人を殺しそうなほどの形相をしている青年の前に立っている。
今すぐ帰りたいです。
青年は縄で縛られているので身動きは取れないと思うけどその目だけで殺されそうです。
「何してる? そいつはもう大丈夫だぞ?」
「完璧に大丈夫とは……言えないと思うけど」
─────ぶるっ!
嘘でも大丈夫と言い切ってよ。
「まぁ〜確かにな……安全とは言いきれねぇーな」
いや! だからそこは嘘でも言い切ってよ!!
うぅ……怖い……怖いんですけど。
でも、このまま黙っていても何も始まらないし……仕方が無い、頑張れ私。
「あ……あの……?」
「お前」
「ヒャイ?!」
青年は視線だけを私の方へ向けていきなり声掛けてきた。
緊張している所にいきなり声かけてくるから変な声が出たじゃん。
「ぷ……くく……っく」
後ろから笑いを堪えている声が聞こえた。大体予想つくがやはり腹が立つものだ。
「笑わないで!!」
後ろを振り向きアルカに対して怒鳴る。
何故人を怒らせる事をするのか……理解ができんぞ!!
私は怒った後にまた、青年の方へと顔を向き直した。
「お前はよく、エレナと絡む奴だな」
「え? そ……そうだよ」
話はちゃんと出来るのには安心したが、質問の内容が考えていなかった事だったため返事が曖昧になってしまった。
てか、なんでエレナの事知ってるの?
「エレナの事……知ってるの?」
青年は私から目を逸らさずに答えてくれた。
「知ってる……というかもう一人の俺がエレナだ」
……何を言ってるの?
「それってどういう事だ?」
後ろからいつの間にか来ていたのか、アルカが隣にいた。
気配が感じませんでしたが……。
「……お前に答える事なんて何もねぇ」
「……てめぇ、今の自分の立場わかって言ってんのか? いいから質問に答えろ」
「……っ?!」
青年は少しびくついていた。
私は今アルカの斜め後ろに居るなめ表情を確認出来ない。
怖い顔でもしてるの? 鬼の形相とか?
「落ち着いて……今怒っても……どうにもならない」
「チッ」
アルカは舌打ちをした後1歩後ろへと下がった。
だか、表情は怒りを隠しきれていない。
その表情を見て、アルカってちゃんと怒る人なんだって今ふと考えてしまった。
「ごめんね……話……続けて」
ガブがそう言うが青年は俯いたまま動こうとしない。
「ね……ねぇ……もう一人の俺がエレナってどういうこと?」
「……」
おそるおそる聞いてみた。すると、質問を質問で返された。
「……二重人格って分かるか?」
「二重人格?」
「そうだ……簡単に言えば、一人の中にもう一人の違う人格が宿る」
「……」
「……エレナは昔……親を亡くしている」
「あ……」
その話を聞き、今日のお昼ご飯を食べていた時の会話を思い出した。
「親が亡くなってエレナはもう何もする気がなくなった。生きることも放棄しようとしていた。でも、許せなかった」
「許せなかった?」
「あぁ……親を殺した者達、家を、自分の大切なものを全て奪っていった……『化け物』を許せないでずっと憎んでいた」
   そんな……。
「そこで、俺が生まれた……俺は、エレナの憎しみ、恨み……そんな気持ちから俺が生まれた 」
「恨み……からなんて」
「それで、俺はエレナがせっかくその苦しみから解放されたのに、また苦しい思いをエレナがしたら……。だから俺はエレナを守る。そう決めた」
「でも、エレナはそんなこと一言も言ってなかった! そんなこと言ってなかったよ?!」
「それは、親が亡くなった時の『気持ち』を、俺が預かったからだ」
ーー気持ちを預かった?
青年はあまり表情に出ないタイプらしく、エレナの事を話している顔も変化はない。 
淡々と話しているのが逆に場の雰囲気を醸し出しているように感じる。
「そうだ。だからアイツには、辛い……憎いといった感情はない」
「そ! そんな訳ないじゃない! あの子にだってあるよ、悔しい気持ちとか! 」
「本当にそうか?」
「……え?」
アルカの言葉に反応して後ろを向いた。
「本当にそう言いきれるか? 今までのアイツの空気というか……とりあえず。なんか変だと思っていたんだ」
「変?」
アルカの後ろの方にいたガブが問いかけた。
「アイツには『怒る、憎しみ』そんな気持ちが一回も感じなかったんだ」
「一回も?」
ガブが確認を兼ねて聞いている。
そういえばと私も今までのエレナの態度を思い出してみるが、確かに笑っている表情はすぐに思い出す事が出来た。だが、怒っている所を思い出す事が出来ない。
「普通、人間にはそういう『負の感情』が知らずに出る時がある。確信はないが、アイツには全くなかったんだ」
「確かに……僕は少ししか話してない……けど……あの子は……あの時『無の表情』を……してた……気がする」
   無の表情……?
「無の表情だと?」
「うん……僕が……あの子から離れた時……驚いたりしてなかった……それどころか……表情が無くなっていた……気がする」
「そうだな……」と2人が色々話しているが私は頭が真っ白で全然会話が入ってこなかった。
「いや……俺も少しそう感じていた。だから気になって連れてきたんだからな。そもそもリヒトが普通の反応のはずだ。怒ったり、怒鳴ったりな。それが全くなかったんだからな。そりゃ、気になるだろ」
「そうだったんだ……」
「ガブも少し感じてたんだったら、こいつの言ってることは嘘ではないのかもしれねぇーな」
「こんな事で嘘つくわけねぇーだろうが」
ガシッ
アルカは青年に近づき頭を鷲掴みにして口元に笑みを浮かべていた。が、目は笑っておらず冷たい目をしている。正直すごく怖い。
今まで言い争っていたがアルカは本気で怒らせたらいけない人かもしれない。
「テメー……俺の事なんだと思ってやがんだ」
顔を引き攣らせながら怒ってる。
青年は痛みを我慢しながらアルカを睨み、アルカは鷲掴みしながら会話を続けていた。
「大丈夫?」
ーーーーーびくっ
ガブが心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫とは……言えない……かも」
私は思わず下を向きながら答えた。
今の話を聞いている限りエレナは自分よりすごく辛く悲しい思いをしていた。
その思いに気付かずにずっと隣でヘラヘラと笑っていたのだと気付くと胸の当たりがきゅうと締め付けられるような罪悪感に襲われた。
「今、何が何だか分からないし……二重人格とか……エレナがすごく辛い思いをしたとか……知らなかった……いつも一緒にいたのに……私は!!」
泣きそうになってしまう。泣いちゃいけないって頭では分かっている。
今泣きたいのは自分じゃない。頭にそう言い聞かせるも目が潤んできてしまう。
「もしかしたら……エレナって子……自分が二重人格なんて事……知らないんじゃない?」
「え? ど……ういうこと?」
「だって……何も聞いてなかったんでしょ? なら……話さなかったんじゃなくて……話せなかったんじゃないかな」
話せなかった。
確かに、この事を知っていたらエレナはあんなに楽しく笑えているのだろうか。
「でも、エレナは自分の親が亡くなってるって知ってた……」
「でも、『化け物』の手によってとは……聞いてないんじゃない?」
確かにそうだ。
エレナは、親は殺されたと言っていたが、誰かの手によってとは言っていない。
「多分……知らないんだよ……何もかも」
「でも、それはそれで怖くなかったのかな」
「怖い……か」
「だって、自分の親が亡くなったって知ってるのに、他は何も知らない……私なら怖いよ」
何も知らない。なのに、親はいなくなっており自分の過去と今の自分は違う。
そんな状況で、今まで通り過ごすなんて不可能ではないのか。
想像しただけでも身震いしてしまうほど怖い。
「それは……君が……ずっと一緒に居たからじゃない?」
静かに告げたガブの声に少し顔を上げた。
「わた……し?」
「そう……君がずっと一緒にいてくれたから……だから……今まで笑って……いられたんじゃない?」
そうだったらいいな。
そう思いながら青年の方へ顔を向けた。
今もまだ、アルカと言い争ってるみたいだ。
「…………私、まだあの子に聞きたいことがあるから……聞いてくる!」
拳に力を入れて、前に歩き出した。
「……わかった」
ガブは少し微笑んだ後、私の背中をやさしく押してくれた。
今すぐ帰りたいです。
青年は縄で縛られているので身動きは取れないと思うけどその目だけで殺されそうです。
「何してる? そいつはもう大丈夫だぞ?」
「完璧に大丈夫とは……言えないと思うけど」
─────ぶるっ!
嘘でも大丈夫と言い切ってよ。
「まぁ〜確かにな……安全とは言いきれねぇーな」
いや! だからそこは嘘でも言い切ってよ!!
うぅ……怖い……怖いんですけど。
でも、このまま黙っていても何も始まらないし……仕方が無い、頑張れ私。
「あ……あの……?」
「お前」
「ヒャイ?!」
青年は視線だけを私の方へ向けていきなり声掛けてきた。
緊張している所にいきなり声かけてくるから変な声が出たじゃん。
「ぷ……くく……っく」
後ろから笑いを堪えている声が聞こえた。大体予想つくがやはり腹が立つものだ。
「笑わないで!!」
後ろを振り向きアルカに対して怒鳴る。
何故人を怒らせる事をするのか……理解ができんぞ!!
私は怒った後にまた、青年の方へと顔を向き直した。
「お前はよく、エレナと絡む奴だな」
「え? そ……そうだよ」
話はちゃんと出来るのには安心したが、質問の内容が考えていなかった事だったため返事が曖昧になってしまった。
てか、なんでエレナの事知ってるの?
「エレナの事……知ってるの?」
青年は私から目を逸らさずに答えてくれた。
「知ってる……というかもう一人の俺がエレナだ」
……何を言ってるの?
「それってどういう事だ?」
後ろからいつの間にか来ていたのか、アルカが隣にいた。
気配が感じませんでしたが……。
「……お前に答える事なんて何もねぇ」
「……てめぇ、今の自分の立場わかって言ってんのか? いいから質問に答えろ」
「……っ?!」
青年は少しびくついていた。
私は今アルカの斜め後ろに居るなめ表情を確認出来ない。
怖い顔でもしてるの? 鬼の形相とか?
「落ち着いて……今怒っても……どうにもならない」
「チッ」
アルカは舌打ちをした後1歩後ろへと下がった。
だか、表情は怒りを隠しきれていない。
その表情を見て、アルカってちゃんと怒る人なんだって今ふと考えてしまった。
「ごめんね……話……続けて」
ガブがそう言うが青年は俯いたまま動こうとしない。
「ね……ねぇ……もう一人の俺がエレナってどういうこと?」
「……」
おそるおそる聞いてみた。すると、質問を質問で返された。
「……二重人格って分かるか?」
「二重人格?」
「そうだ……簡単に言えば、一人の中にもう一人の違う人格が宿る」
「……」
「……エレナは昔……親を亡くしている」
「あ……」
その話を聞き、今日のお昼ご飯を食べていた時の会話を思い出した。
「親が亡くなってエレナはもう何もする気がなくなった。生きることも放棄しようとしていた。でも、許せなかった」
「許せなかった?」
「あぁ……親を殺した者達、家を、自分の大切なものを全て奪っていった……『化け物』を許せないでずっと憎んでいた」
   そんな……。
「そこで、俺が生まれた……俺は、エレナの憎しみ、恨み……そんな気持ちから俺が生まれた 」
「恨み……からなんて」
「それで、俺はエレナがせっかくその苦しみから解放されたのに、また苦しい思いをエレナがしたら……。だから俺はエレナを守る。そう決めた」
「でも、エレナはそんなこと一言も言ってなかった! そんなこと言ってなかったよ?!」
「それは、親が亡くなった時の『気持ち』を、俺が預かったからだ」
ーー気持ちを預かった?
青年はあまり表情に出ないタイプらしく、エレナの事を話している顔も変化はない。 
淡々と話しているのが逆に場の雰囲気を醸し出しているように感じる。
「そうだ。だからアイツには、辛い……憎いといった感情はない」
「そ! そんな訳ないじゃない! あの子にだってあるよ、悔しい気持ちとか! 」
「本当にそうか?」
「……え?」
アルカの言葉に反応して後ろを向いた。
「本当にそう言いきれるか? 今までのアイツの空気というか……とりあえず。なんか変だと思っていたんだ」
「変?」
アルカの後ろの方にいたガブが問いかけた。
「アイツには『怒る、憎しみ』そんな気持ちが一回も感じなかったんだ」
「一回も?」
ガブが確認を兼ねて聞いている。
そういえばと私も今までのエレナの態度を思い出してみるが、確かに笑っている表情はすぐに思い出す事が出来た。だが、怒っている所を思い出す事が出来ない。
「普通、人間にはそういう『負の感情』が知らずに出る時がある。確信はないが、アイツには全くなかったんだ」
「確かに……僕は少ししか話してない……けど……あの子は……あの時『無の表情』を……してた……気がする」
   無の表情……?
「無の表情だと?」
「うん……僕が……あの子から離れた時……驚いたりしてなかった……それどころか……表情が無くなっていた……気がする」
「そうだな……」と2人が色々話しているが私は頭が真っ白で全然会話が入ってこなかった。
「いや……俺も少しそう感じていた。だから気になって連れてきたんだからな。そもそもリヒトが普通の反応のはずだ。怒ったり、怒鳴ったりな。それが全くなかったんだからな。そりゃ、気になるだろ」
「そうだったんだ……」
「ガブも少し感じてたんだったら、こいつの言ってることは嘘ではないのかもしれねぇーな」
「こんな事で嘘つくわけねぇーだろうが」
ガシッ
アルカは青年に近づき頭を鷲掴みにして口元に笑みを浮かべていた。が、目は笑っておらず冷たい目をしている。正直すごく怖い。
今まで言い争っていたがアルカは本気で怒らせたらいけない人かもしれない。
「テメー……俺の事なんだと思ってやがんだ」
顔を引き攣らせながら怒ってる。
青年は痛みを我慢しながらアルカを睨み、アルカは鷲掴みしながら会話を続けていた。
「大丈夫?」
ーーーーーびくっ
ガブが心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫とは……言えない……かも」
私は思わず下を向きながら答えた。
今の話を聞いている限りエレナは自分よりすごく辛く悲しい思いをしていた。
その思いに気付かずにずっと隣でヘラヘラと笑っていたのだと気付くと胸の当たりがきゅうと締め付けられるような罪悪感に襲われた。
「今、何が何だか分からないし……二重人格とか……エレナがすごく辛い思いをしたとか……知らなかった……いつも一緒にいたのに……私は!!」
泣きそうになってしまう。泣いちゃいけないって頭では分かっている。
今泣きたいのは自分じゃない。頭にそう言い聞かせるも目が潤んできてしまう。
「もしかしたら……エレナって子……自分が二重人格なんて事……知らないんじゃない?」
「え? ど……ういうこと?」
「だって……何も聞いてなかったんでしょ? なら……話さなかったんじゃなくて……話せなかったんじゃないかな」
話せなかった。
確かに、この事を知っていたらエレナはあんなに楽しく笑えているのだろうか。
「でも、エレナは自分の親が亡くなってるって知ってた……」
「でも、『化け物』の手によってとは……聞いてないんじゃない?」
確かにそうだ。
エレナは、親は殺されたと言っていたが、誰かの手によってとは言っていない。
「多分……知らないんだよ……何もかも」
「でも、それはそれで怖くなかったのかな」
「怖い……か」
「だって、自分の親が亡くなったって知ってるのに、他は何も知らない……私なら怖いよ」
何も知らない。なのに、親はいなくなっており自分の過去と今の自分は違う。
そんな状況で、今まで通り過ごすなんて不可能ではないのか。
想像しただけでも身震いしてしまうほど怖い。
「それは……君が……ずっと一緒に居たからじゃない?」
静かに告げたガブの声に少し顔を上げた。
「わた……し?」
「そう……君がずっと一緒にいてくれたから……だから……今まで笑って……いられたんじゃない?」
そうだったらいいな。
そう思いながら青年の方へ顔を向けた。
今もまだ、アルカと言い争ってるみたいだ。
「…………私、まだあの子に聞きたいことがあるから……聞いてくる!」
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