みんなの役に立ちたい気持ちは誰にも負けない!!!

桜桃

組織

 ……ピピピピ

「あ……終わったみたい」

 ガブと話していると途中で携帯が鳴った。それを直ぐに確認している。
 って、すごく気になる所で切らないでくださいよ。

「え……あの……?」

 ガブは私の言葉を聞かないで立ち上がる。

「じゃ……屋敷に戻ろ?」

 手を差し出してくれたのでその手をとり私も立ち上がった。
 そして屋敷へと歩みを進めた。

「ねぇ、さっきの話の続きなんだけど……」

「さっきの続き……? あぁ……あの子の『チェガン』の話? それなら……行ったらわかるんじゃないかな」

 こちらを見ずにガブは淡々と答えてくれる。
 いや、これは答えてくれたでは無いな。

「……本当?」

 ガブは私の方に少し顔を向け手を口元に置き、考える素振りを見せる。

「それに……教えたくても僕も……詳しくは……わからない」

 ガブのチェガンは、相手の力を見破ることは出来るがそれは簡単な単語でらしい。
 だから、ややこしい物とかは見えたとしても全部を理解するのは自分の頭では難しいと言っていた。

「だから……今からあの青年について調べる……保護してくれてるといいんだけど……」

 眉間に少しシワを寄せ、少し困った顔をしている。意外に表情筋動くんだ。

「保護してくれてるんじゃないの? 流石に殺しはしないで……しょ……」

 そう言うといきなりガブは私の顔をじ〜っと見てきた。

「な……何よ」

 いきなりだったので少し萎縮してしまった。

「いや……よくもそこまで……人を信じる事が出来るよねって……思っただけ……」

「……どういうこと?」

「普通……知らない人を見たら疑うし……あの二人の喧嘩見たんでしょ? なら……あの二人がうっかり殺しちゃってるとか……思わない?」

 また歩き出したガブの横を遅れないように着いて行く。
 横目で私の表情を確認しながら問いかけてきた。何怖いこと言っているんですかやめてください。

「うっかりって……ん〜……でも、あの二人は殺さないんじゃないかな」

「……意味わかんない」

「なんでよ!」

 怒ろうと思った時……

「ほら、着いたよ」

 話に夢中になっていたせいで屋敷に着いた事に気が付かなかった。

「今戻ったよ」

「お〜! 無事だったか、お疲れさん」

 ガブと一緒に中に入ると中央階段に座っているアルカが居た。もうくつろぎモードに入っている感じだな。

「お疲れ様です……。あの……さっきの子は……どうなったんですか?」

 その言葉に私も周りを見回してみたがさっきの青年の姿がない。
 も……もしかして……こ……ころ……。

「あぁ、さっきの青年ならほら、あそこにいるぞ?」

 アルカが指さしたのは私達の左隣だ。でもそこには誰も居ない。

「あぁ……ここに居たんだ」  

 ガブの方を見ると視線は私の後ろ少し下を見ていた。私もガブの視線の先に目を向けると縄で縛られている先程の青年が不機嫌そうに座っていた。

「こ……ここにいたんだ……」 

 さすがに驚いた。座っていたら確かにすぐ横見ても気づかないか。
 なんか……アルカを睨んでる?

「……よく殺さなかったね……もしかして帰ってきたんですか?」

 ーー帰ってきた?
 
 青年を確認した後、アルカの方を向きガブが聞いていた。

「帰ってきたっつーか、呼んだんだ」

「なるほど……」

 話についていけない。
 でも、カルムさんは他にも仲間がいるって言ってたし、外に出ていた人をアルカが呼んだってことかな?

「他の人達はどこに……?」

「ん〜? あ〜、御影町にベーゼが来るから先に行ってもらってる。俺は留守番だ」

 アルカはガブの質問に対し何かの資料を確認しながら答えた。
 御影町って今日寄り道しようとしていた所だ。ベーゼってなんだろう。

「そうですか……」

 アルカは資料から少し目線を外しガブの様子を見た後……。

「御影町に行ったのは、かるねぇーと『アルバ』だよ。戦闘員ではないけどあの二人なら多分大丈夫だ。戦闘能力も低いわけではないから」

「……そう……ですか」

 ガブは少し安心したような顔をしている。
 聞き覚えない名前が出てきて誰の事だろうと、私は今まで出会った人を思い出してみたが『アルバ』って人には会った事はないはずと1人で完結させた。
 考えても分からないし……。

「そうそう、ヒュースとソフィアは切り傷程度だったから自分で何とかしていると思うぞ。さっき2人は部屋に戻って行ったからな」

「そ……うなんですね……。ところで……こいつについては……調べたんですか……?」

 ガブは、ドアの隣に座っている青年を指さしながらアルカに確認している。

「それが、俺が何回も質問したけどずっと無言なんだわ。どうしたらいいかね?」

「……僕……考えるの苦手……考えるのはアルカさんの仕事」

「人任せかよ……」

「だって……アルカさんが一番頭いいし」

「アルカって本当に頭いいの?」

 先程のガブからはそう聞いていたがやはり信じられなかった。人を馬鹿にする事しか頭のない人が〈頭がいい〉なんて、普通は思わないだろう。

「……さっき……『チェガン』の話したの……覚えてる?」

「……うん」

「アルカさんの『チェガン』は……」

「ガブ……余計なことをペラペラ喋るな」

 ガブの言葉を遮られてしまった。
 アルカの声は少し怒ってるようにも感じる。

「アルカさんが……連れてきたんじゃないのですか?」

「そうだ。でも、俺が興味あったのはもう一人の方でこいつじゃない」

  「なっ!」

 文句を言おうと口を開いたが、少しだけアルカの方が早かった。

「こいつは『チェガン』を持っていない。なら、俺達に関わるのは危険すぎる。このまま記憶を消して返した方がいいだろう」

 今のアルカの言葉が頭の中で響く。

 ーー記憶を消す

「でも……」

「記憶を消すって……何?」

 当たり前のように記憶を消すと言い放つアルカに私は咄嗟に聞いてしまった。
 だって、なんでそんな事を当たり前のように言うのか分からなかった。

「どういうこと? なんで……なんで私はここにいちゃいけないの?」

 アルカに会ってから分からない事だらけだ。そんな中……まさか記憶を消すと言われるなんて……。

「まぁ……どーせ記憶消すから言ってもいいか。言わないとこいつは諦めなさそうだしな」

   アルカが真剣な顔で話し出した。

「俺がなぜこいつらを『友達』ではなく『仲間』と呼んでいるのか。その理由は俺達は組織としてここにいるからだ。
 組織名は『シャイン』。
 集まっている理由は周りに気づかれないようにこの街を守るためだ」

「気付かれないように……?」

「そうだ。この街には今、『ベーゼ』と呼ばれる物が異世界からこちらに来ている。簡単に言えばこの街は異質な化け物に狙われている」

「でも、なんでそれを周りの人には気付かれないようにしてるの? 守っているなら隠す必要なんてないんじゃ……」

「お前は馬鹿なのか?」

「いきなりなんなのよ!」

 ガブが喧嘩しそうな私達の中に割って入った。

「とりあえず……話……進めて?」

 私達はガブを見たあと再び話し始めた。

「お前は、13年前の出来事を覚えているか?」

「……えぇ、あれは……忘れる方が難しいと思う」

 あれは、あまりに酷く思い出すだけでも身震いしてしまうほど怖い記憶。
 自分の周りには、瓦礫や逃げ惑う人、怖くて怖くて動けない人や泣きじゃくっている人も居た。よくわからないものが、次々と周りの人を殺したり、どこかへ連れて行ったりしていた。私はその時はまだまだ子供だったが、小さい子供でも分かるくらいの絶望が目の前で繰り広げられていた。

「そう、みんなは13年前の出来事を忘れられないでいる。その中で、もしまだこの世界は狙われていると言ったら、街の人はどうなる?」

 そこまで言ってくれたら今の混乱寸前の頭でもわかった。

「日々の生活を安心して過ごせなく……なる?」

「簡単に言うとそういう事だ」

「でも、みんなは守ってるんだよね? なら、言っても俺達が守ってやるから安心しろとか言ったら……」

 アルカはこっちに少し目線を寄こして……

「そんな事言えるわけねぇーだろ」

「……なんで?」

「何を根拠にそんな事を言える? 絶対に守ってやるって……守れる確証なんて俺達にはない」

「でも! 今まで守ってくれたんでしょ?! ならこれからだって……」

「守れてたらこんなに苦労しねぇーよ!!」

 アルカはいきなり大きな声で怒鳴った。
 屋敷内に悲痛の叫び声が響く。
 悲しさと怒りが混ざったかのような悲痛の叫びに聞こえた。

「あ……」

 アルカは驚いているのか、舌打ちをしたあと目線を私から違う所へと移した。 

 ……驚き過ぎてすぐに声を出すことが出来なかった。まさか、アルカがあんな焦った顔で怒鳴るなんて想像すらしなかった。
 今までどんな状況でもニヤニヤして笑っていたのに。
 アルカは、目をそらしたまま動かなかった。

 私達の中に沈黙が流れた。すごく重い空気が身体にのしかかる。
 自分の言葉にすごく後悔した。何も知らない自分が口を出していい事ではなかったのだ。
 そう思えば思うほど心の中の罪悪感は大きくなりどうすればいいのか……何を考えればいいのかも分からなくなってきた。
 そんな中、その重い沈黙を崩したのはガブだった。

「アルカさんはすごいよ」

「……あぁ?」

 アルカがガブを睨んでいる。
 いきなり突拍子もない事を言うのだ、無理もない。だが、それを気にせずガブは話し出した。

「アルカさんの『チェガン』は常人を超えた頭の良さ……回転の速さなんだよ……だから今までもベーゼの出てくる所を予測して……いち早く僕達に知らせてくれた……だから……町への被害も減らせているんだよ」

 減らせている?

「おい……余計な事を話すな」

「余計じゃないから……話してもいいよね? 
 今の段階だと……減らすので精一杯なんだよ……だから絶対に守る……なんて言えるわけ……ないんだ」

 減らせている状態が精一杯。でも、その言い方だと被害は出てしまっていると言う事になる。でも、そんなのニュースでも見た事ないし噂だって流れていてもおかしくないと思う。

「周りから……気付かれないようにって……言ったでしょ……。被害にあった人達の記憶を……消しているんだよ」

「記憶……を?」

 そうだ。さっきアルカが言っていた。
 記憶を消すって。

「でも、それにはいつか……」

「うん……限界は……ある……。それでも……やり続けなければならない……。それが……僕達の使命……だから」

 そんな。だったらここの人達は今までずっと苦しんできて、そしてこれからもずっと辛い思いをしなければならないの?
 そんなの……悲しすぎる。

「アルカさん……話したい事話した……あとは……お任せします」

「……ここで俺に丸投げか?」

「投げてません……バトンタッチ……です」

「投げてるだろうよ」

 先程よりは少し空気が軽くなった気がする。でも、ガブの話を聞いた私の心境は先程より暗いし重い。
 この人達はどれだけの物を背負って生きているのだろうか。考えるだけで怖い。

「気にするな。お前が気にするような事じゃない」

 アルカは私の頭に手を添え優しく言ってくれた。頭は少し落ち着いたらしく先程の重たい感じはしない。でも、それがまた悲しく感じる。

「今はこいつについて考えねぇとならんしな」

 アルカはそう言うと顔を青年に向けた。

「でも……どうするんですか?」

「そうだなぁ……」

 アルカが何か考えているといきなりこちらに目線を向けた。
 ってなんですか?

「な……なに?」

 アルカの視線を追ってか、ガブの視線までこっちに集中している。
 え、いきなり何? 怖いんだけど。

「……何よ……私の顔に……なにか付いてる?」

 顔を触りながら確認した。

「あぁ付いてる付いてる」

「うそ! どこ? どれ?!」

 慌てふためく私に対して真剣な顔でアルカが言った。

「下の方に口と〜真ん中の方に鼻と〜上の方に……」

「それはあんたもでしょーが!!」

 思わず怒鳴ってしまった。真剣な顔で言うから本当に何か変なのが付いてるのかと思ったのに。
 怒ってる横で、ガブとアルカはお互い目を合わせて何か納得したように頷いた。

「んじゃ、任せたわ」

 ポンと、アルカは私の肩に手を置いた。

 ……ん? 任せた?

「うん……君の方が何かと都合が……いいと思う」

「え? ……なんのこと?」

「よし! 任せたぜ。いろいろ質問してこいつの事を知るぞ? お前はすげぇー重要なんだからな?」

「うんうん」

「……え? ……え! えぇー!!?!?」

 私の悲鳴は屋敷内に響き渡った。

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