みんなの役に立ちたい気持ちは誰にも負けない!!!

桜桃

謎の青年

 〜アルカ視点〜

 さっきガブにリヒトの事はお願いした。これで突如として現れた『あいつ』に集中出来る。
 今この場にいるのはソフィア、ヒュース、かるねぇと俺含め4人。
 4人いるが戦闘員じゃないのが俺とかるねぇ。
 ソフィアとヒュースだけで何とかできるか……。
 さっきのソフィアへの攻撃の動きを見ると半端者ではないことは確かだ。
 今現在一瞬の隙も見せずに俺達を睨んでいる。
 怖いねぇ。

 先程の動き、突然現れた青年、自分達へ向けての殺気。頭で整理していると隣から冷静な声が聞こえた。

「アルカ、さっきの動きは見えたか?」

 ソフィアだ。 こんな時でもいつもと変わらない口調と声色なのは流石だ。1番経験豊富だから冷静でいられるんだろうな。
 こういう時は1番頼りになる。普段からも気をつけて欲しいが……。

「あぁ……何となくな」

「じゃー大体わかったんじゃねぇの? あいつについて」

 ヒュースが軽く問いかける。
 こいつもこいつで場馴れが凄い。この状況でこの軽さ。正直笑いながら人を襲いそうでちょっと怖いぞ……。

「そうね……何かわかったことは無いかしら?」

 みんなが俺に注目する。だが、流石に情報がほとんどないこの状況でそんなこと言われましても……。だが、全くないと言う訳でもないしとりあえず伝えられる事は伝えるか。何となく分かってはいたしな。

「そうだな……」

 俺が今の考えを言おうと口を開いた瞬間ずっとこちらの動きを伺っていた青年が急に襲ってきた。

「アルカ!」

「?! やべ?!」

 今度は俺に攻撃を仕掛けてきた。
 青年は小さなナイフで躊躇なく首を狙ってきた。
 って、いやいやいや! なんで俺だよ! 狙うならソフィアかヒュースにしてくれ……。

「……ぶね」

 間一髪。体を後ろにさげ持っていたナイフで軌道を少し逸らしたおかげで切り傷程度で助かった。でも、ソフィアの声がなければ殺されていただろうな。

「はぁ……だから……俺は戦闘員じゃねぇーんだよ」

 手を項に回しながらそう愚痴をこぼし青年を見る。
 先程と変わらず鋭い目線で俺達を見ていた。これは正直厳しいな。

「これさぁ〜、カルムは逃げてた方がいいんじゃない? 流石に無理でしょ?」

「そうね……私も戦闘員ではないので、足でまといになりますね」

「いや、そういう意味で言ったのではなく」

 少しにこやかにヒュースがかるねぇの言葉を否定していた。
 ……冗談抜きに笑顔で人を殺しそうだな……。
 そういえば、今までも笑顔のまま『化け物』を殺してたっけ。つーか、今は関係ないしあいつに集中するか。

「とりあえずお前は逃げろ。流石にこの状況であいつに『触れる』のは無理だろ?」

 青年の事を警戒しつつソフィアはかるねぇに言う。

「確かに無理ね……では、あとは任せるわ」

 かるねぇは裏口から外へ出るため中央階段の横に続いている廊下を青年を警戒しながら走って行った。
 いいなぁ……羨ましい。

「なぁ俺は? 逃げてもいいか?」

「「ダメに決まってるだろ」」

「だよなぁー 知ってた」

 色んな意味で泣きそうだ。
 俺も戦闘員じゃないんだから逃げてもいいだろうよ。

「最低でもあいつの正体がわかるまではここに居ろ。お前の『チェガン』が必要だ」

「この状況で俺に『チェガン』を使わせる気か? 俺死ぬぞ」

「死にたきゃ死ねばいい。だが、あいつの情報を俺達に伝えてからだ」

「……酷くね? まぁ、使わなくても何とかしてみせるさ」

『チェガン』とは簡単に言えば異能力みたいなものだ。

 そして、俺のチェガンは『常人を超えた頭の良さ、回転の速さ』だ。だが、それを使うにはそれなりのリスクが伴う。正直今回は使わずに何とかしたい。

 とりあえず……もう少し情報が欲しいな。いきなりすぎてあまり情報を集められなかった。
 まぁ予想は出来るけどな。
 さて、どうやってあいつから確実な情報を取ろうか。

「……なぁ、お前ちょっといいか?」

 俺はソフィア、ヒュースより前に出て青年に声をかけた。
 拳で語り合うより言葉で伝えあった方が平和的でわかりやすいだろ。

「……」

「お前……一体何者だ? なぜこんな事をする? 話しなら聞くぜ?」

 ちょっと偉そうな声で手を広げ言い放った。
 まぁ、警戒している相手にこれはどうなんだろうと思うが、こちらをなめられるのも困るしな。
 これくらいがちょうどいいだろ。
 話し合いで終わらせることが出来るのならそうしたいし。

「……お前には関係ない」

 よしっ、言葉はちゃんと通じるらしい。なら、会話の中で情報を抜き取れれば……。

「いやいや、関係あるだろ? こっちは殺されかけたんだぞ? それで関係ないはないだろ?」

 俺はいつも通りの口調を心がけながら青年と対話する。緊張や不安を相手に悟られるわけにはいかない。

「お前が一番殺しやすそうだったからそうしたまでだ」

「答えになってないだろ」

「……」

 睨みをきかせる青年はいつ向かってきてもおかしくない。
 今、さっきのような突進されたら確実に粉砕されるな……俺。
 先程より距離も近いし予備動作で動きがわかっても体は反応してくれないからな……。
 とりあえず、最初から気になっていることを聞いてみるか。

「なぁお前、エレナちゃんをどうした?」

 ーーーーーぴくっ

「エレナ……だと?」

 反応した。エレナちゃんと何かあるのは確実だな。

「そうだ。エレナちゃんをどこへやった?」

 俺は1歩足を前に出し質問した。すると……。

「お前らにエレナの事を聞く資格なんてない!!」

「わぉ。まじか」

 すごい殺気が肌にビリビリと伝わってくる。
 さっきまでは何を考えているのか読みにくい顔だったが、今は違う。
 鬼の形相で今にも人を何十人と殺しそうな目をしている。

「まずい!」

「ちょ! まじかよ」

「あらら〜? まじかよ」

 俺達三人はいつでも動けるように臨戦態勢になった。
 エレナちゃんがこいつの〈鍵〉と言うわけか。
 恐らくあいつも俺達と同じ……。

「……エレナの名をお前らが口に出すな! この! 塵どもが!!」

 すごいスピードでヒュースの方へと突っ込んでいく。ナイフがヒュースの首を狙ったが、何度も見てきた動きで目が慣れたのか、それとも読んでいたのか。ヒュースは少し後ろへ下がり冷静に避けた。
 その後の連続攻撃もヒュースは綺麗に避けている……が、途中で壁に追い込まれてしまった。
 そのチャンスを逃がさぬようにか、青年が最後の一撃を喰らわせようとナイフを振り下ろした。いや、振り下ろそうとしたがそれは、青年の横からの拳によって遮られた。
 青年はすんでのところで身軽に壁を上手く使い拳を避けた。

「ちっ……避けやがったか」

「ちゃんと当てろよ! せっかく囮になってやったのに無駄じゃねぇーかよ!」

「そのままお前諸共殺してやろうか悩んでいたのだ。しょうがないだろ」

「なんだとこらぁー! しょうがねぇーじゃねぇーだろ!!」

「お前ら〜いい加減にしろよ〜かるねぇーにチクるぞ?」

「「?!?!」」

 流石にこの状況で喧嘩をするのは肝が据わっているとかではなくただの阿呆だぞ。
 これ以上言い争いをされるのは勘弁だ。

「ちっ」

「それだけは勘弁!!」

「なら、相手に集中しろ」

「「了解」」

 だが、こいつが狙ったのがヒュースで助かったのかもしれない。こいつの『チェガン』のおかげで助かったようなもんだからな。

 ヒュースのチェガンは『強化身体能力』だ。簡単に言えば肉体強化。身体能力も上がり反射神経も鋭くなる。

 あいつは俺達を観察しているな、確実に。
 さっきまで暴走気味に見えたが戦術はしっかりしているし周りも良く見えていた。初めての動きではない。
 やっぱりこいつは……いやあの子は『持ってるな』。

「わかったか? こいつの正体」

「大体な。まぁ、まだ仮定だけどな」

「もうわかったのかよ! 流石だな! アルカ」

「……そんなキラキラした目で見るな……つーか。ソフィアも大体わかったんじゃねぇの? 今だったら俺と変わんねぇだろ」

「これはお前の仕事だ」

 その一言で片付けられた。俺は悲しいぞ。
 いや、それは今はどうでもいい。もし俺の仮定が正しかったらこの人数じゃこっちが不利だ。
 殺すことは出来ても、捕獲は難しい。俺という戦闘に関しては論外の人も居るしな。

「ソフィア、お前今日は何持ってる?」

「……拳銃、刀、予備に鎖だ」

「鎖持ってんだな。だったら捕獲可能ってことか」

 ソフィアが武器マニアで良かったわ。
 あいつの動きを封じる手はある。
 1人、仲間を呼ぶか。そいつの『チェガン』だったらこの青年を『眠らせることが出来る』
 
「俺はもう1人の仲間。『アルバ』を連れてくる」

「……なるほどな」

「え? なるほど? 何が? 」

 さすがソフィアだな。俺の考えを一瞬で読んだ。
 ヒュースの頭については諦めてるので無視。

「あいつの正体、必ず暴いてみせる。待っててくれよ『エレナちゃん』」

 俺は2人と目線を合わせ最後にいつもの言葉を投げかけた。

「んじゃ、俺は行く。あとはお前らの[好きにやれ]」

「「了解だ、この命懸けて全う致します」」

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