みんなの役に立ちたい気持ちは誰にも負けない!!!

桜桃

始まり

    〜13年前〜

「何が......起きてるの?」

 俺は今目の前で起こっている光景から目が離せられなくなっていた。
 ここは先程までは普通のリビングで大きなテーブルがあり、四人がけの椅子で家族3人仲良くご飯を食べていた。
 しかし、今の状態はそんな平和が嘘のようになっている。
 俺の周りにはテーブルや椅子が転がっており、ガスからは火が漏れており周りは火の海になっている。

 なぜこのような状況になったのか。
 なぜ俺は今この場で腰を抜かして座っているのか......何も分からない。

 先程までは普通の日常だった。お父さんとお母さんと一緒に楽しくご飯を食べていた。
 いつもの日常だったのに。

 今俺の目の前にはお父さんがお腹から血を流して倒れており、視線を足の方へと移すとそこにあるはずの右足が無い。
 お父さんの隣には上半身だけのお母さんがうつ伏せに倒れていた。
 そして、お父さんの近くには鉄で身を包んだ『何か』が見下ろしている。

 体が動かずただただ座って見ているしかできない俺にそいつはゆっくり、カシャカシャと音を立てながら近づいてきた。
 目の前に来たかと思ったら静かに腕を上げる。その手には剣が握られていた。

 何が起こっているのか理解できない。体が動いてくれない。
 誰でもいい、お父さんを助けて。
 
「だ……誰か……」

 振り落とされる手を見ているしか出来ない。
 やっと出た声も誰にも届かず、体も言うことを聞いてくれない。
  
 鉄に身を纏った何かは振り上げた手を俺に向かって思いっきり振り下ろした。

 俺はその瞬間、目をそらすことも出来ず目の前で起こっている事を見ているしか出来なかった。
 すると、動かなかった体が何かによって後ろに逸らされた。その時に剣が右目を掠り触れると温かい物が流れていた。
 触った手を確認すると真っ赤な血が付いていた。

「すまない少年、少し遅かったか。だが、話はあとだ。逃げるぞ」

 後ろには自分を軽々持ち上げるお父さんくらいの男の人が立っていた。その人は俺を脇に抱えドアをくぐり走り出した。

「ま……まって! お父さんがまだあそこに!!」

 状況が分からない。いや、分からなくてもいい。
 助けなければ。今だったらまだ助かるかもしれない。
 助けないと.....あのままだったら死んでしまう。
 俺は右目を抑えながら叫ぶ。

「ま.....まだお父さんが!!」

「少年、人間とは簡単に死んでしまうのだ。
 今、この状況こそがそれを物語っている」

 そう言う男の人は周りに目を向けていた。
 その視線に釣られるように俺も周りに目を向ける。

 そこは今までに見た事もない。
 本当の「絶望」が映し出されていた。

 何十、何百人の人が倒れ、辺りは真っ赤に染っている。
 建物などは崩されており原型を残していない物まである。
 そして、その「絶望」の中をさっき俺の家族を襲った鉄の塊の化け物達が沢山歩いている。
 剣を持った化け物達だけじゃない。蜘蛛みたいに足が何本もある物、鳥みたいに空を飛んでいるのもいる。

「な……なんでこんなことに……」

「絶望に落ちる時間が来たんだ」

「絶望……に? 」

「そして、人間達がこれに抗うために強くなる。その時が今」

「わかんない……分からないよ……」

「今は分からなくてもいい。ただ、これだけは伝えておくよ」

 しばらく走ったあと化け物達がいない所で男の人は立ち止まった。
 そして、男の人は俺を下に降ろし立膝になり目線を合わせた。

「君は1人になってはいけないよ」

「1人?」

「この世界は変わる、変わらなければならない。
 そのためには仲間を集めなければならない。自分と同じ「力」を持った仲間を集めるんだ」

 そう言い残し男の人は来た道を戻って行く。
 俺はそれをただただ見ているしか出来なかった。

   〜数年後〜

「そっち行ったぞ!!」

「おう!」

 俺は今仲間である男性2人と一緒に目の前にいる『鎧を着た化け物』と戦っていた。
 化け物は複数おり、片手にむき出しの剣を持っている。
 ガシャンガシャンと1人を囲い込み襲いかかろうとする。

「よっしゃ! 『アルカ』の言った通り。こっちに来た! 」

 そう言うと襲われた男性は手に持っていたトンファーで次々と敵を殴り倒していく。
 その隣で深緑色の外套を身にまとったもう1人の男性も片手に剥き出しの刀を持ちながら音を立てずに化け物の後ろへと近づく。そして、最後の一体を右手に構えていた刀で鎧の隙間を突くように貫いた。
 スムーズすぎるだろう……。
 まぁ、俺が相手の動きを読んであいつらに伝えたからだろうけどな。

「おい! これは俺の獲物だぞ! 」

「関係ねぇだろ」

「ふざけるなぁー! 」

 先程複数居た化け物達を一瞬にして倒した後直ぐに2人は睨み合い口喧嘩を始めた。
 おいおい……終わって直ぐに喧嘩するんじゃねぇよ。お前ら仲間だろ、もっと仲良くしようぜ。

「おい……言い争うな。
 街への被害はどのくらいだ?」

 俺は冷静な声で今だ尚睨み合っているふ2人に問いかけた。
  
「……無傷……では無い。少なからず帰る家が無くなった者もいるだろう。どうするつもりだ?」

「そうか。なら、『また』記憶を変えるしかない。崩れてしまった家は空き地にし、帰る家が無くなってしまった者には新しい家を『我が家』にする」

「了解!」

 2人に指示をし俺は周りを確認した。

「また……守りきれなかった……」

 目の前に広がる光景が目に映る。
 今ここは住宅街と言う訳では無いが小さい家が何個かある。
 だが、その家は倒壊寸前だったり、1部が壊れてしまったりと人が住める状態の家は無かった。
 人も数人居たらしく家の近くでうずくまって泣いている人も居る。
 また、守りきることが出来なかった。
 後悔しても失ったものは戻らない。
 俺は仲間である2人の後ろを追いかけるように歩き出した。

「みんなの役に立ちたい気持ちは誰にも負けない!!!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く