雨日和

みゆ

出会い

周りに合わせて、浮かないように。

自分を出さず、空気を読む。

嫌われないように、平和に平凡に。






そんな偽りで着飾ってる私を乱すのは
ずっとあなただけだった。







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─────十年前。


「やだ、卒業式なのに雨降ってきちゃったね~」


「ね~…。」






いつもは殺風景な体育館が卒業式らしく飾り付けられていて
少しだけソワソワしている空気感と、特別感。




今日は三年生の卒業式。


この卒業式が終われば
私も遂に三年生になる。

なんの夢も、未来も描けてないのに。







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「あー、昨日遅くまで起きてたから寝ちゃいそう」


「えー、卒業式に寝ちゃう?」


「でも横尾先輩の最後の姿は見たいから頑張って起きてるけど!」


「じゃあ寝てたら、パコーンって後ろから頭叩いて起こすね」


「激しいよ、起こし方がっ」


「ふふ、うそうそ」






友達の奈津子とそんな話をしながら
指定されてる、在校生の列に並ぶ。






しばらくすると、淡々と始められる卒業式。




眠くなるようなゆっくりとした音楽と静けさ。

そんな卒業式とは裏腹に雨は激しさを増していて
雨の音が強く、体育館に響いていた。

その音に耳をすませ、目を閉じると──





”北山”



と先生に呼ばれた名前と




”はい”と、答えた声。









その声に目を開けると
先輩が立ち上がって、卒業証書を受け取っていた。




北山先輩をこうして目に移すのも
きっと今日で最後───。








再び目を閉じると
耳につくその雨の音は、また激しさを増したように思えた。









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”たまには遊びに来てくださいねぇ~っ!”


”ねぇねぇ、第二ボタン貰いに行かない?”


”どうしよう~っ、先輩いなくなっちゃうなんてやだ~”







堅苦しい卒業式が終わると
途端に色付き出す生徒達。



特に興味もなく早く帰れることを喜んでる生徒もいれば、

好きな先輩との別れを惜しむ生徒もいる。









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「すごい雨……、」









そんな中私は
先輩の元へと向かっていく皆からひとりこっそりその輪を抜け出して
校舎裏の出入口、普段は誰も使わない小さな玄関に向かった。

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