１３１２話　宴会、リマとの一時

「ナイト様、お楽しみになられていますか？」

「ん？　ああ、リマか。もちろん楽しんでいるよ」

　メルティーネの侍女であるリマが話しかけてくる。
　今、俺は宴会を楽しんでいる。
　魔物襲撃やクーデターにより怪我人は多いものの、俺の治療魔法によって日常生活レベルにまでは回復している。
　宴の参加者は多い。
　王宮関係者の他、俺と関わりを持った人魚族の兵士や作業員たちが招待されているようだ。

　当然、侍女リマも参加している。
　まぁ彼女の場合、純粋なパーティー参加者ではなく、メルティーネや俺の世話役として参加している面もあるだろうが……。
　俺は彼女を見て、改めて思う。

（やっぱり、リマは可愛いよなぁ……。将来が楽しみだぜ）

　まだ１０歳前後だが、非常に聡明な女の子だ。
　俺が軟禁されていた頃、甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
　人魚の里の常識などを教えてもらった他、人魚族の下半身の構造についても実物で学ばせてもらった。
　おかげで退屈せずに済んだし、彼女とは仲良くなれたと思う。
　実際、彼女には加護（小）を付与できている。
　ここで彼女のステータスを確認しておこう。


レベル？、リマ＝ラティ
種族：人魚族
身分：下級貴族
役割：メルティーネ姫侍女
職業：ーー
ランク：ーー

ＨＰ：？？
ＭＰ：低め
腕力：？？
脚力：？？
体力：高め
器用：？？
魔力：？？

残りスキルポイント：？？？
スキル：
記憶力強化レベル２（１＋１）
？？


　彼女の種族は、もちろん人魚族だ。
　そして、実は下級貴族である。
　まぁ、王女であるメルティーネの侍女なのだから、階級が平民でないのは当然だ。
　基礎ステータスは、ＭＰが低めで体力が高めらしい。

　彼女の所持スキルには『記憶力強化』がある。
　１０歳ぐらいの割には聡明で思慮深い彼女だが、やはりスキルにもそうした傾向が表れている感じだろう。
　代わりに、戦闘能力は皆無っぽいが……。
　彼女はあくまで侍女なので、特に大きな問題はない。
　それに、今後の成長にも期待できる。

「なぁ、リマ」

「はい、何でしょうか？」

「リマも楽しんでいるか？」

「もちろんです。ナイト様のお側に仕えさせていただけるだけで、とても楽しいですよ」

　リマは笑顔で答える。
　その笑顔は、年相応の可愛らしいものだった。

「そうか……。なら良かったよ」

　俺はそう言って、料理を口に運ぶ。
　しばらく談笑していると、リマが尋ねてきた。

「あの……ナイト様……」

「どうした？」

「メルティーネ姫様から、お話は伺っております。もうすぐ旅立たれるのですよね？」

「ああ、そうだ」

　俺はうなずく。
　リマは寂しそうに俯いたが、すぐに顔を上げて言った。

「でしたら……せめてお別れのキスだけでもさせていただけませんか！？」

「……それは」

　俺は言葉に詰まってしまう。
　この人魚の里で、俺は何人かの女性と交友を深めてきた。
　キス以上の仲になった者もいる。

　リマとも、初日に下半身を見せ合った仲だ。
　ある意味では、キス以上の仲になっているとも言える。
　だが、それでもキスは特別だろう。
　彼女はまだ１０歳ぐらい。
　いくら何でも、さすがに……。

「お願いします！」

　リマは懇願するように言う。
　俺は迷ったが、彼女の顔を見て思い直した。
　ここでキスを避けたら、リマを悲しませることになるかもしれない。
　ならば……。

「分かったよ」

　俺はリマと爽やかなキスをする。
　リマは顔を赤らめ、とても幸せそうだった。
　その後も宴会は続いていく……。