【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1309話 決着

 タカシが海溝の奥底で態勢を立て直している頃――

『フム……。少シヤリ過ギタカ?』

 海神ポセイドンの石像が唸る。
 彼はタカシがいるはずの海溝を見据えた。

『ソロソロ、戻ッテキテモ良イ頃ノハズダガ……。奴ヲ買イカブッテイタカ?』

 彼は神である。
 だが、全知全能の神ではない。
 その名の通り、海を管轄する神だ。
 それも、この世界全ての海を掌握しているわけではなく、およそ7つ程に分けられた区分の内の1つを管轄しているのみである。
 加えて言えば、今の彼は依代の石像を使って活動している。
 暗い海溝に沈んだタカシの動きは、彼には見えなかった。

『所詮ハ矮小ナル人ノ子カ……。失望シタ』

 ポセイドンの石像はそうつぶやく。
 彼はタカシを、抜きん出た存在として認めていた。
 だからこそ、依代の体で出せる範囲で本気の一撃を与えたのである。
 しかし、今の彼は失望していた。
 所詮は人間であり、矮小な存在の1つであると。

『サテ、ソロソロ追撃シテ終ワラセルカ。千年以上ノ時ヲ経タ我ガ依代デ、直々ニ引導ヲ渡シテヤロウ』

 ポセイドンはそうつぶやき、海溝の底に沈んでいるであろうタカシの元へ向かおうとする。
 その刹那、ポセイドンの石像は何かを感じ取った。

『ナ……!?』

 彼は股間の下を見る。
 するとそこには――いつの間にかタカシがいた。
 それも、魔力や闘気を全開にした臨戦態勢である。

『馬鹿ナ!? ソレホドノ出力ヲ発揮シテ、我ガ気付カナカッタナド……!!」

 ポセイドンは驚愕する。
 とっさに体勢を変えようとするが、もう襲い。

「うおおおおっ! 千年以上の時を生きる海神ポセイドンよ!! 俺の必殺技を食らえぇえええ!!!」

 タカシは左右の手を組み、構える。
 両の人差し指に、膨大な闘気と魔力が込められた。

「【万年殺し】ッ!!!」

 タカシの必殺技が繰り出される。
 それは、千年以上の時を戦い抜いた海神ポセイドンの依代のケツを襲った。

『オッ……オオオォオオオーーッ!! ソ、ソンナ馬鹿ナァアアアーッ!!!』

 ポセイドンの絶叫が海底洞窟に響く。
 その石像は、あくまで依代ではある。
 しかし、痛覚的な感覚は一部共有されていた。

「ハァ……ハァ……! ど、どうだっ!!」

『ヌオオオオォーッ!? 千年ズット守ッテキタ急所ヲ……一目デ見抜イタト言ウノカ!?』

 タカシの攻撃を食らったポセイドンの石像は、海中で体勢を崩して悶えている。
 どうやら、この石像の弱点は肛門部だったらしい。

『グオォオオ……ッ!! 依代ガ……壊レル!! 我ガ依代ガァアアアーッ!!!』

「……やり過ぎたか? やっべ……」

 タカシは焦る。
 彼としては、命まで取るつもりはない攻撃だった。
 よく考えてみれば、海神は最初に『力を与えるに足りる存在かどうか見極めてやる』という趣旨のことを言っていた。
 それに、戦闘中には『海流爆陣』で魔力回路や気門をほぐしてくれたりもした。
 不意打ちで全身全霊のカンチョーをするのは、やり過ぎだったかもしれない。
 石像はひび割れ、今にも壊れそうだ。

『グヌッ! 我ハ神デアルゾ!! 依代ナド、マタ作リ直セバ良イ! ダガ、ソノ前ニヤルコトガアル!!』

 ポセイドンの石像は吠える。
 その刹那、彼の体が発光した。

「うおっ!?」

『貴様ノ強サヲ認メヨウ! ポセイドンノ名ニオイテ、貴様ニ弐級水精ノ加護ヲ授ケル!!』

 ポセイドンの石像はそう叫ぶ。
 そして――
 ドッゴーン!!!
 石像は、そのまま粉々に砕け散った。

「弐級水精……。ああ、君がそうか」

 タカシの目の前には、一雫の魔力水があった。
 ピカピカと光っており、意思が宿っていることが分かる。
 だが、人型になったり言葉を発したりすることはなかった。

「炎精サラマンダーと同じパターンか? 力が馴染むまで、時間が必要なのかもしれないな」

 タカシはそうつぶやきながら、魔力水に手をかざす。
 それは彼の体へと吸収されていった。

「さて……。里に帰るか。突然いなくなって、メルティーネや陛下たちが心配しているだろうしな」

 タカシはそうつぶやく。
 そして、彼は『海神の大洞窟』の出口を目指して泳ぎ始めたのだった。

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