【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1302話 海神石

 エリオットは正気に戻った。
 瘴気だけを取り除いたので、後遺症が残る心配もないだろう。

「ナイトメア殿。貴殿に受けた恩は忘れない」

 ネプトリウス陛下が頭を下げる。
 俺は恐縮した。

「当然のことをしたまでですから」

「いいや。貴殿がいなければ、人魚族の未来は暗いものであっただろう」

 ネプトリウス陛下は首を横に振る。
 彼は真剣な眼差しで俺を見た。

「改めて……貴殿に頼みたい。どうかこの里に留まり、人魚族を守ってくれぬか?」

「俺は……」

 一瞬、迷った。
 だが、答えは最初から決まっている。

「申し訳……ありません。俺には帰らなければならない場所があるのです」

「ふむ。だろうな」

 ネプトリウス陛下は、あっさりと引き下がった。
 まぁ、さっきも断ったもんな。
 ダメ元で再確認しただけだろう。

「ならばせめて……これを」

 陛下が差し出したのは、古びた青い石だった。

「これは……?」

「『海神石』と呼ばれるものだ。我が王家に代々受け継がれている宝物でな」

 ネプトリウス陛下は語る。
 海神石……初めて聞くアイテムだな。

「そんな貴重なものを、俺が受け取ってしまってもいいのですか?」

「構わん。貴殿には多大な恩がある。今しがたエリオットの命を救った他、仇敵であるジャイアントクラーケン討伐のきっかけをつくってくれたな。他にもいろいろ聞いておるぞ?」

「と言いますと……」

「治療岩で多数の負傷者を治療し、防壁を補修し、魔物を討伐し、結界魔法の発動を補助したそうではないか。それに、我が娘を地上で監禁していた男を倒してくれたとも聞いている。……その礼だ」

「そうですか……」

 俺の活躍は、しっかりと国王にまで届いていたらしい。
 頑張ってきた甲斐があった。
 ここは遠慮なくもらっておこう。

「ありがたくいただきます」

 俺は海神石を受け取った。
 その瞬間、何やら不思議パワーが流れ込んでくるのを感じる。

「おお!?」

 驚いて海神石を落としてしまった。
 ネプトリウス陛下が目を丸くする。

「どうしたのだ? 大丈夫か?」

「申し訳ありません、貴重なものを……。ちょっと魔力が暴走しそうになっただけです」

「ふむ……?」

 ネプトリウス陛下が海神石を拾った。
 目上の人に落とし物を拾わせたみたいで申し訳ないな。

「確かに、海神石には持ち主の魔力を強化する効果がある。だが、その強化量には個人差があってな……。余が持つと力強さこそ感じるが、落としてしまうほどではない。エリオットやメルティーネに持たせたこともあるが、落としたりはしなかった」

「その通りですの。では、ナイ様と海神様の相性が悪かったのでしょうか……」

 メルティーネ姫が不安そうに言う。
 確かに、相性の問題はありそうだ。

「いや、逆かもしれんぞ? ナイトメア・ナイト殿は海神ポセイドン様に愛されておられるのではないか?」

 エリオットがそう意見する。
 なるほど……そういう考え方もあるのか。

「だとしたら、素晴らしいことですの!」

 メルティーネ姫が嬉しそうに言う。
 俺も彼女と同じ気持ちだった。

「そうかもしれないな。俺は以前から上位存在とも関わりを持っているんだ」

「上位存在ですの?」

「詳しくは話せない。ま、そういうこともあるんだと思ってくれ」

 まずは、俺にミッションを与えてくる謎の存在『権限者』だな。
 次いで、リンドウ古代遺跡にいた炎の上位精霊『プロドナス』、参級精霊『サラマンダー』あたりである。
 聖女リッカも、神の代行者とか代弁者と言っていい存在かもしれない。

 海神『ポセイドン』は、どれくらいの立ち位置なのだろう?
 さすがにサラマンダーやリッカよりは上かな?
 しかし、謎の存在『権限者』と並び立つほどの存在なのかどうかは微妙なところである。
 上位精霊『プロドナス』と同格あたりの可能性が高い気もする。
 ならば――

「俺なら、ポセイドンっちとも仲良くなれる。そんな気がするぜ」

 俺は冗談めかして言う。
 メルティーネたちも、軽く笑ってくれた。
 だが――

『矮小ナル存在ヨ……。我ガ名ヲソノヨウニ軽々シク呼ブトハ、不敬デアル……』

 玉座の間に、重苦しい声が響いた。
 これはまさか……!?

「海神石が喋ったですの!?」

 メルティーネ姫が目を瞠る。
 海神石から発せられるのは、確かに声だった。
 しかし、生命の存在は感じない。
 スピーカーのような役割を持っている感じか……?

『我ガ名はポセイドン……。海ヲ司ル者ナリ……。貴様ガ更ナルチカラヲ与エルニ足ル存在カドウカ、見極メテヤロウ……』

 海神石が明滅する。
 直後――
 俺の視界が暗転したのだった。

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