【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1297話 魔道具『玉手箱』

 俺はエリオット王子が発動した魔道具『呪鎖』により、再び拘束された。
 そこに『海神の憤怒』や『海神の怒り』が殺到してくるも、ネプトリウス陛下の『王の威厳(キングズ・マジェスティ)』によって動きを封じられる。
 これで終わりかとも思ったが、エリオット王子にはまだ奥の手があるらしい。
 彼は懐から小さな水晶玉を取り出した。

「ははは……! 海神よ! その憤怒をここに示したまえ!!」

 エリオット王子が叫ぶ。
 すると、水晶玉に海中の魔素が集まってきた。

「……なんだ?」

 俺は訝しむようにつぶやく。
 その直後だった。
 水晶玉が発光し、何かが部屋の壁を突き破って現れる。
 それは――大きな蛇のように見えた。

「これは……!?」

「海神の化身、アビス・サーペントだ!!」

 エリオット王子が叫ぶ。
 ……どうやら、魔物を召喚・使役する類のアイテムだったらしい。

「なるほど。それが殿下の切り札か」

 かなり強そうな魔物だ。
 今の俺は、『海神の呪鎖』によって再び魔力や闘気が抑え込まれている。
 力を込めれば、身動きが取れないほどではないが……。
 この状態での勝算は……。

「勘違いするな。真の切り札はこれからだ!」

 エリオット王子は叫ぶと同時に、懐から箱のようなものを取り出す。
 ずいぶんと物々しい雰囲気の箱だ。

「エリオット! 貴様!! 宝物庫からそれを持ち出したのか!?」

 ネプトリウス陛下が目を見開く。
 その表情は怒りというより驚愕や不安の色が濃い。

「へ、陛下?」

「あれは……。魔道具の――」

 ネプトリウス陛下が何かを言いかける。
 だが、エリオット王子はそれを遮るように言った。

「魔道具『玉手箱』だ! これを開けると――ぬううぅん!! はあああぁ……!!!」

 エリオット王子が玉手箱を開けた。
 その瞬間、周囲に濃密な魔素が溢れ出てくる!
 彼の周囲が白く染まり、こちらから見えなくなった。

「ぐううぅっ……!!」

 エリオット王子は、苦しそうな声を上げる。
 一体何が……?
 俺は嫌な予感を覚えながらも、状況を見守るしかない。
 やがて魔素の放出は終わり、視界がクリアになってきた。

「な……!?」

 俺は驚愕する。
 なぜなら、エリオットの姿に大きな変化が訪れていたからだ。
 彼の体は一回り大きくなり、瞳は真っ黒に輝いている。
 口は大きく割れて鋭くとがり、両手には鋭い爪が伸びていた。

「おお……!!」

 エリオットは歓喜の声を上げる。
 その口元は愉悦に歪んでいた。

「な、なんだ……!? あれは!!」

 俺は戦慄する。
 まさか、こんなことになるなんて……!

「魔道具『玉手箱』は、未来の力を前借りするもの……」

 ネプトリウス陛下がつぶやく。
 未来の力を前借りする……だと!?

「使用すれば、一足飛びに強大な力を得られるだろう。しかし、その代償として使用者の寿命を削ってしまう」

「なんですって!?」

 ネプトリウス陛下の言葉に、俺は驚きの声を上げる。
 そんな恐ろしい魔道具があるのか……。

「くふっ……。俺の寿命が尽きるのが先か、人族を殲滅するのが先か……」

 エリオットがニヤリと笑う。
 その体からは濃密な魔素があふれ出していた。

「エリオット兄様……。なぜそんなことを……」

 メルティーネが悲痛な声を上げる。
 彼女の表情は青ざめていた。

「なぜ? 決まっていよう。俺は世界を手に入れるのだ!!」

 エリオットは高笑いする。
 もはや、彼の目には俺やメルティーネ姫の姿もまともに映っていないようだ。

「ぐふふ……。『海神の化身』よ! まずは人族に死を!! 奴は海の支配者たる我が種族の敵である!!」

 エリオットが叫ぶと同時に、アビス・サーペントが動き出す。
 鋭い牙がずらりと並んだ巨大な口を開き、こちらへと飛び掛かってきた。

「ナイ様!! 逃げてくださいですの!!」

 メルティーネ姫が叫ぶ。
 しかし、俺はその場から動かなかった。

「男には、引けねぇときがある。俺の場合……それは今だ!!」

 俺はグッと拳を握りしめる。
 そして、アビス・サーペントやエリオットを迎え撃つのだった。

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