【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1292話 クーデター

 俺は玉座の間で、ネプトリウス陛下に謁見していた。
 そこそこ平和的に会話していたところで、思わぬトラブルが発生する。
 それは――クーデター発生だ。

「それで、反乱勢力の戦力は?」

 ネプトリウス陛下が兵士に尋ねる。
 兵士は状況を伝えるため、玉座の間にまで急いで来たらしい。

「はっ! 人数はおよそ百名ほど! 現在、宮殿の奥にある『宝物庫』へと進軍しているとのことです!」

「なに? ここ玉座の間を狙うのではなく、宝物庫だと?」

 兵士の報告を受け、ネプトリウス陛下が顔をしかめる。
 俺も同じような顔をしていただろう。
 どうして玉座の間じゃない?
 クーデターで最優先されるのは、国王の殺害ではないのか?

「……まぁ問題あるまい。百人程度では、余の命には届かぬ」

「しかし陛下。宝物庫の宝が奪われてしまうのではありませんか?」

 俺は口を挟む。
 どんなものが保管されているのか知らない。
 だが、盗まれてマズイものもあるはずだ。

「王族の命に比べれば、大した意味はない。奪ったところで使い道に困るものばかりだ。金に換えようとしても、足がつく」

「なるほど……」

 俺はうなずく。
 この人魚の里は、決して小さくない。
 しかし同時に、国という枠組みの中で言えば大きいわけでもない。
 他の人魚の集落との交流ぐらいはあるかもだが、地上の国々との交流はない。
 クーデター軍が宝を手に入れたところで、処分方法に困るだろう。

「奴らの処理は、あとでゆるりと行えばよい。どうせ、逃げる場所はないからな」

 陛下が言う。
 この閉じられた国で、反抗勢力がいつまでも隠れ潜むことは難しい。
 長期戦になれば正規軍が有利だ。

「まずは守りを固めよ。特に、エリオットとメルティーネの二人を何としても守れ」

「し、しかし陛下……。そのお二方なのですが……」

 兵士が言いにくそうに言う。
 それを聞いて、ネプトリウス陛下は眉をひそめた。

「どうかしたのか? まさか、二人はすでにクーデター軍の手に……?」

「その……。クーデターの首謀者こそ、エリオット殿下なのです……!」

「「…………は?」」

 兵士の報告に、俺と陛下は驚愕した。
 エリオット王子がクーデター?
 あり得ないだろう、それは。

「エリオット殿下は、リトルクラーケン討伐軍をそのまま利用して宮殿を襲撃しているご様子。不意打ちであったこともあり、入口付近の兵たちは大多数が戦闘不能になりました」

「なんと……。あのエリオットが……」

 ネプトリウス陛下がつぶやく。
 彼はエリオットの父親だ。
 親子仲がどのようなものだったかは知らないが、おそらくは悪くなかったのだろう。
 突然の蛮行を信じられない様子だ。

 もちろん、想定外だったのはネプトリウス陛下だけではない。
 王子であるエリオットが乱心するなど、誰も想定していなかったはず。
 警備兵たちが突然の戦闘に対応できなかったことは仕方ないか……。

「殿下はその勢いのまま、宮殿内を進んでいます。メルティーネ姫様を人質にとり、宝物庫の方面へ向かっている模様です」

「メルティーネを人質に……だと? あのエリオットが?」

 ネプトリウス陛下が目を丸くする。
 クーデターも信じがたいことだが、メルティーネに対する行いも信じがたいことだ。
 彼は相当なシスコンだったはずなのに……。

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