【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1287話 補助役

 人魚族の魔法師団が、結界魔法を展開している。
 一度や二度では不十分で、何度も重ねがけをしていく必要があるらしい。
 だが、そのためには大量のMPを消耗する。

「はぁ……はぁ……」

 若い女性人魚は、息を荒げている。
 MPの使いすぎで消耗しているのだ。
 分隊長がそんな彼女に厳しい視線を向ける。

「ふむ……。確かお前は、新人だったな?」

「は、はい」

「ならば、仕方ないか。少し休憩するしかあるまい」

 分隊長が頷く。
 だが、その女性は首を横に振った。

「お、お待ちください! もう少しだけ……、もう少しだけなら、私はまだやれます!!」

「無理だ。その状態で集中を維持しろというのは酷であろう」

「でも……。里には、弱き者たちがたくさんいます! それらを守るのは、私たち魔法師団の役目です!!」

 彼女は懸命に訴えかける。
 だが、分隊長の表情は厳しいままだった。

「駄目だ。それでお前が倒れては何の意味もない」

「で、ですが……」

 押し問答を繰り返す彼女たち。
 これは……。

「なら、こうしようぜ」

 俺は口を開いた。
 分隊長の視線が俺に向かう。

「ナイトメア・ナイト殿?」

「俺がその魔法を代わりに補助するよ。それなら問題ないだろう?」

 俺は言った。
 彼女は俺の提案に、ため息まじりに返す。

「そなたは結界魔法について素人であろう? 何の役にも立たない」

「確かに俺は素人だ。でも、後方で結界魔法の発動を補助するぐらいはできるはずさ」

 魔法には、いろいろな発動方法がある。
 最も一般的なのは、普通に個人が詠唱して発動するタイプだろう。
 それよりも難易度は上がるが、詠唱省略や無詠唱なんてのも存在する。
 強者同士の戦いなら、むしろこっちの方が主流だな。
 チンタラ詠唱している暇はないことも多いし。

 また、信頼関係を築けている仲間内であれば、合同魔法の発動も可能だ。
 特定属性に適性を持つ者たちが力を合わせることで、段違いの威力を出せたりする。
 そういった合同魔法とは少し違うが、他者から魔力を補助してもらうなんてパターンもあったな。
 ゾルフ砦の防衛戦でも活用されていた。
 リーゼロッテと彼の兄リルクヴィストが氷魔法を構築し、コーバッツがそれを魔力で補助していたのだ。
 今回の結界魔法も、それに類似したやり方である。
 分隊長やその他の主要メンバーが結界魔法の基本部分を構築し、新人などがそれを補助している形だ。

 ちなみに、その他にも魔法の発動方法はまだまだある。
 事前に魔法陣を描いておく、アイテムを使って魔力の代用を行う、特殊な詠唱で自然の魔力を活用するなどだ。
 ま、今はおいておこう。

「しかしだな……。ナイトメア・ナイト殿の身体能力は高いのだろうが、魔力は別だ。補助なんて真似ができるのか?」

「当然だ。俺はむしろ、魔法の方が得意だぜ?」

 どうにも、俺に関する情報はあまり伝えられていないようだな。
 個人情報の保護という意味ではありがたいが……。
 里を訪れた人族の情報を共有してなくて大丈夫なのだろうか?

 いや、これはあえてそうしているのか。
 様々な立場の者をフラットな状態で俺に接触させることで、俺という存在の信頼性や危険度を見極めようとしているのだ。
 たぶん。

「そうか。そこまで言うのなら、彼女の代役をそなたに任せよう」

「ああ、任せてくれ。さっそく取り掛かろうぜ」

 俺は頷く。
 こうして、俺は結界魔法の発動を手助けすることになったのだった。

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