【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1286話 魔法師団

「ふむ。確かに防壁が補修されておる」

 やって来た魔法師団の隊長っぽい女性人魚が、防壁を見て頷く。
 俺はそんな彼女に向けて問いかけた。

「お前が団長か?」

「否。私は結界魔法担当の分隊長に過ぎない。団長は、エリオット殿下と共にリトルクラーケンの討伐へ向かっておられる」

「討伐か……」

 そう言えば、エリオット王子はそんなことを言っていたな。
 本人や戦士たちだけでなく、魔法師団のトップも連れていっているらしい。
 それだけ重要な任務なのだろう。
 無事に帰ってきてくれるといいが……。

(まぁ、今は目の前のことを見届けるか)

 俺は気持ちを切り替えると、分隊長に向き直る。

「それで、結界魔法による補強作業とやらはいつ始まるんだ?」

「すぐに始めよう。……そなたがナイトメア・ナイト殿か?」

「ああ」

「エリオット殿下から話は聞いている。人族でありながら、それなりに役に立つらしいな」

「それなりに、か……」

 俺は苦笑する。
 まぁいいさ。
 エリオット王子からの信頼は、これからもっと勝ち取っていけばいい。

「そなたは結界魔法に関して、どの程度の知識を持っている?」

「全く知らん。名前しか聞いたことがない」

「そうか。ならば、邪魔にならんよう端の方で見ているがいい」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 俺は頷く。
 分隊長も頷き返すと、魔法師団のメンバーたちに向けて声を上げた。

「では、これより結界魔法の詠唱を開始する! 結界魔法を構成する主要メンバーは前へ! 残りは、後方から魔力補助をするように!!」」

「「はっ!!」」

 分隊長の声に、数人の人魚が前に出る。
 そして彼らは、一斉に呪文を唱え始めた。

「「我らが身に宿すは、守りの魔力! 不届きなる者の侵入を阻む壁となりて、この里に静寂と安寧をもたらすべし!! 【ヴェイル・フィールド】!!」」

 呪文を唱え終えた直後。
 彼女たちの身体から、淡い光が立ち上った。
 そしてそれは、俺たちが補修してきた防壁の石材に吸収されていく。

「これが結界魔法か……」

 俺はつぶやく。
 見るのは初めてだな。
 この結界魔法は、外部から認識しづらくなる効果があるらしい。

「うむ、上手くいった。次だ」

 分隊長も頷く。
 彼女は結界魔法の出来に満足しているようだ。
 その後も、複数の結界魔法が防壁の周辺に施されていった。

「これで、今日の予定の7割は終了したな」

 分隊長が呟く。
 俺はその呟きに、問いかけた。

「まだ7割か?」

「ああ、そうだ。今回の襲撃を受け、結界魔法の重要性が見直された。一通りの結界魔法を展開した後、さらに重ねがけしていく予定となっておる。悠長にしている暇はない」

「なるほどな」

 これも、ジャイアントクラーケンが討伐された影響と言っていいかもしれない。
 人魚族にとって奴は危険な魔物だ。
 討伐する方が良かったのは間違いない。
 ただ、里の安全性という点だけで言えば、討伐によりやや危険が増している。
 奴はその巨体ゆえ、里の周囲にある天然の岩石を抜けることが難しいだろうからな。
 危険なのは、あくまで狩りや採取に出かけたときの話である。

 そして今。
 ジャイアントクラーケンがいなくなったため、他の魔物の行動範囲が変わった。
 捕食者がいなくなったことで、今まで身を潜めていた他の魔物たちも活動的になっているのだ。
 最大級の危険はなくなった代わりに、ぼちぼちぐらいの危険の数が増した形だな。

「さて、お前たち。まだまだ集中して――む? そこ、どうした?」

「あっ!? も、申し訳ありません!!」

 分隊長に声をかけられたのは、一人の若い人魚だった。
 彼女は後方で魔力補助を担当していた内の1人だな。
 彼女は慌てて頭を下げると、謝罪の言葉を述べた。

「謝罪を要求しているのではない。どうしたと聞いておる。なぜ集中が乱れておるのだ?」

「そ、それが……。MPが尽きて来てしまいまして……」

「なに? 今日の予定はまだ3割も残っているというのに……」

 分隊長は目を細めながら、その人魚に目を向ける。
 彼女は恐縮しきった様子で俯いたままだ。

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