【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1283話 タコを食べる文化

 アビス・オクトパスと戦闘中だ。
 奴の攻撃により、俺の左足の拘束が解けた。

「墓穴を掘ったな、タコ野郎」

「ギュルルルッ!」

 俺の言葉に、奴は触手を伸ばして攻撃してきた。
 それを俺は回避する。
 そして――蹴りを放った。

「はあっ!!」

 俺の蹴りがアビス・オクトパスに直撃する。
 肉弾戦が有効ではなくても、全く意味がないわけではない。

「ギュッ……!?」

 俺の蹴りを受けたアビス・オクトパスは苦悶の声を上げる。
 奴の体勢が崩れた、今がチャンスだ。

「来い、鉄剣」

 俺はアイテムボックスから、適当な剣を取り出した。
 紅剣アヴァロンとかの方が高性能だが、海中で使うとサビそうだからな。
 これぐらいが無難だ。

「くたばれ、タコ野郎」

「ギュルッ……!?」

 俺はアビス・オクトパスの触手を斬り落としながら近づくと、奴の体の中心部分に剣を突き刺した。
 海の中で剣を振り回すのは少々難儀だったが……。
 それでも何とかなったようだ。

「ギュルルッ! ギィィイイッ!!」

 アビス・オクトパスが苦しそうに悶える。
 抵抗する触手の動きが鈍ってきた。
 俺はその隙に、更に攻撃を加える。

「終わりだ」

 最後にアビス・オクトパスの頭部を斬り裂く。
 それと同時に――奴の動きが止まった。
 どうやら、絶命したらしい。

「おおっ……」

「すげぇな……!!」

 周囲にいた作業員たちが驚きの声を上げる。
 俺はそんな彼らに向き直って、言った。

「大丈夫か? 怪我はないか?」

「お、おう……。大丈夫だ」

 リーダー格の男が答える。
 どうやら、治療魔法の出番はなかったらしい。

「そ、それにしても……兄ちゃんすげぇなぁ! こんな化け物を倒すなんてよ!!」

 リーダー格の男は興奮した様子で言う。
 その言葉に、作業員たちも賛同するように頷いた。

「大したことはない」

「謙遜するなって!! いやしかし……本当に助かったぜ……」

 まぁ、俺がいなければ危なかったのは事実だろう。
 この場にいるのは、作業員たちばかりだからな。
 防壁を補修できていれば、地の利を活かして多少は戦えただろうが……。
 補修の最中に襲われては厳しい。

「みんなが無事で良かったよ。……それより、思わぬご馳走が手に入ったな」

 俺はそう言って、アビス・オクトパスの死体を眺める。
 巨大なタコだ。
 さぞや食い出があるだろう。

「なにっ!? アビス・オクトパスを……食べるつもりか?」

「ん? ああ」

 リーダー格の男が尋ねる。
 俺は頷いた。

「もしかして、毒があったりするのか? だったら無理して食べはしないが……」

「あ、いや……。別に毒があるって話は聞いたことないが……。人族ってのは、タコを食べるのか?」

 俺はアビス・オクトパスを指さしながら言う。
 スキル『異世界言語』で魔物名は『オクトパス』と翻訳されている。
 それに、人魚族の面々はこいつを『タコ』とも呼んでいた。
 地球におけるタコと細かい違いはあるだろうが、大きく異なる存在ではないだろう。
 ならば、食用としても問題はないはずだ。

「そうか。タコを食べる種族もいるんだな……」

 リーダー格の男はそう言うと、考え込んでしまう。
 どうしたのだろうか?

「ま、無理することはない。俺一人で食べるよ」

「いや、待ってほしい! 俺にも……いや、俺たちにも食べさせてくれ!!」

「……ほう?」

「人族の兄ちゃんが生魚を食ったんだからな! 俺たちだって、人族の食文化に歩み寄る努力をすべきだろう!?」

 リーダー格の男が叫ぶ。
 その言葉に、他の作業員たちも頷いていた。
 どうやら、限定的ではあるが人族と人魚族の相互理解が進んでいるようだ。
 タコを食べるのは人族の食文化ではなく、俺――日本人の食文化なのだが、細かいことは置いておくか。

「うむ、いいだろう」

 俺は頷く。
 そして俺たちは、タコを調理し堪能した。
 種族を超えた交流は、こうして順調に進んでいくのだった。

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