【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1279話 刺し身

 休憩中。
 俺は海ぶどうを堪能した。
 しかし一方で、俺以外の面々は生魚を食べている。

「美味そうだなぁ……」

 俺は少し興味をそそられた。
 サザリアナ王国にも魚は存在する。
 だが、生で食べる文化は存在しないのだ。
 海洋都市ルクアージュで食べた寿司はあくまで例外的な存在だし、寿司としての再現度も怪しい感じだった。

「おい兄ちゃん、興味本位ならやめときな。人族は生魚を食べないんだろう?」

「まぁそうだが……」

「無理せず、海ぶどうを食っとけ。1日の作業が終われば、魔道具で加熱処理した魚を用意できるはずだ。生魚に挑戦する意味はねぇ」

「うーむ……」

 生魚を食べる文化と、食べない文化。
 この二つは水と油だ。
 サザリアナ王国において、前者は多数派であり、後者はマイノリティである。
 俺が海ぶどうを食べて満足し、生魚を食べるのを止めるのが合理的な判断だろう。

(だが……)

 俺は、生魚を食べる戦士たちを見やる。
 彼らは、実に美味しそうに生魚を食べていた。
 そのままかぶり付くのではなく、刃物で加工済み。
 まるで、刺し身のような雰囲気がある。

(良いんじゃないか? 別に)

 俺はそう思った。
 人族の常識に囚われて、せっかくの海の幸を楽しめないのは勿体ないことだと。

「忠告ありがとう。だが、せっかくだし挑戦してみることにするよ」

「おいおい……。本気かよ……」

 俺の言葉を聞いて、俺を引き留めていた作業員が驚いた表情を浮かべる。
 しかし、俺の決意は固い。

「おーい、俺も生魚を食うぞ!」

 俺は海ぶどうを食べ終えると、そう宣言する。
 そして、生魚を食べている戦士たちのところへ向かった。

「お! 兄ちゃんも生魚に挑戦するのか!?」

「ああ。海ぶどうは十分に堪能したからな」

 俺は答えながら、戦士たちの輪に加わる。
 すると、数人が懸念を示した。

「おいおい! 人族が生魚なんて食って、腹壊しても知らねぇぞ?」

「過去にも生魚――刺し身に挑戦した人族はいたらしいが……。体が受け付けなかったと聞いている」

「お前もそうなる前に、海ぶどうのおかわりでもしに行ったらどうだい?」

「ふむ……」

 俺は刺し身を食べている戦士たちを見る。
 どうやら全員、俺が刺し身を食べられるとは思っていないようだ。

「いや、俺は大丈夫だ。俺にも分けてもらっていいか?」

「お、おう。それはいいけどよ……」

 俺が言うと、一人の作業員が刺し身の塊を差し出してくれる。
 俺はそれを受け取ると――かぶりついた。

「うぐっ!?」

「おい、兄ちゃん。本当に大丈夫か!?」

「う……! ううう……!!」

 俺の様子を心配した作業員が、俺の背中をさすってくれる。
 しかし俺はそれどころではなかった。

(こ、これは……!!)

 人魚族が日常的に食べている生魚――刺し身。
 それがこれほどまでに……。
 これほどまでに……!!

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