【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1273話 黙認

 治療岩の職員用休憩室で、俺はリリアンに迫った。
 しかし、いいところで邪魔者が入ってしまう。

「ああ。この俺――ナイトメア・ナイトは確かにここにいるぞ。殿下」

 俺はそう答える。
 すると、エリオット王子は俺たちの方へ歩み寄ってきた。

「また貴殿に救われたようだな。礼を言うぞ、ナイトメア・ナイト殿」

 エリオット王子はそう言って俺に礼を述べる。
 そして、俺の隣のリリアンに目を向けた。

「ふむ……。貴殿は責任者のリリアンだな。戦士たちの治療に尽力してくれたようだ。ご苦労である」

「い、いえ! 滅相もございません!!」

 リリアンは深々と頭を下げる。
 治療岩の責任者とはいえ、王子から直々に話しかけられるなど、そうあることではないだろう。
 彼女は緊張しているようだ。
 ここは、俺が主体となってエリオットに対応するとしよう。

「ところで、エリオット殿下はどうしてここに?」

「もちろん、戦士団の負傷状況を確認するためだ。今回の被害は、王宮にも伝わっているからな」

 そう言って、エリオットは肩をすくめた。
 まぁ当然か。
 戦士の1人や2人が負傷した程度なら、わざわざ王族に報告するほどではない。
 だが、今回のように多数の戦士が重傷を負ったのであれば話は別だ。
 彼は忙しい身であるはずだが、自ら現場に足を運んだらしい。

「それに、メルティーネからも頼まれた。『王宮務めの治療魔法使いを派遣してほしい』と」

「おお、そういうことだったのか。それはありがたい」

 そう言えば、途中からメルティーネの姿が見えないと思っていた。
 彼女は俺の付き添いであり、治療魔法は使えない。
 てっきり、邪魔にならないよう隠れているのかと思ったのだが……。
 まさか王宮の方に戻っていたとは。

「しかし、見ての通りこの治療岩は大丈夫だ。何とか死者を出さずに済んだ」

 俺はそう言って、休憩室の外に視線を向ける。
 すると、エリオットもうなずいた。

「どうやらそのようだな。他の治療岩も、ギリギリで対応できたと聞いている。ナイトメア・ナイト殿のおかげだ」

「いや、俺は大したことはしていないさ。リリアンや他の職員が頑張ってくれたおかげさ」

 俺は謙遜する。
 実際、俺1人では無理だっただろう。
 リリアンや他の職員たちがいなければ、対応しきれなかったはずだ。

「それを含めて貴殿の功績だ。よって、さらに拘束を1つ外す許可を――ん?」

 エリオットが俺の右足に視線を向ける。
 そこには、何の拘束処置もされていない。

「貴殿の拘束は解かれたのか?」

「ああ、緊急事態だったのでな。自力で解除させてもらった」

 俺は答える。
 エリオットは目を丸くした。

「じ、自力で解除……だと? この拘束をか?」

「そうだが……。緊急事態だったからな。別にいいだろ?」

「…………。……………………。ま、まぁいい。結果的には、それが功を奏したのだ。俺からは何も言うまい」

 エリオットは少し考えた後、そう言って肩をすくめた。
 勝手な解除は、ちょっとマズかったようだな。
 だが、少なくとも彼は黙認してくれるようだ。

「ところで、貴殿は今回の魔物襲撃の原因について聞いているか?」

「いや、聞いていない。治療作業に集中していて、それどころではなかったからな」

「そうか……」

 エリオットは神妙な面持ちで呟く。
 彼の表情を見て、俺はピンときた。

(ああ……これは何かあるな)

 そう思った瞬間、彼は続けて口を開いたのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品