【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1260話 修羅場

 左手を解放された俺は、さっそくメルティーネを可愛がることにした。
 両腕で彼女を抱きしめ、頭を撫で、口唇にキスをする。

「はわわ……ナイ様ぁ……」

 メルティーネが真っ赤になって照れる。
 そんな反応も可愛らしいな。
 だが、俺の行動は少々迂闊だったようだ。

「ふざけるなよ! 人族などに、義兄上と呼ばれる筋合いはない!!」

 エリオットが激怒している。
 人族への偏見が控えめだった彼だが、やはり少しぐらいはあったのだろう。
 俺とメルティーネの急接近により、人族への拒絶反応を引き起こしてしまったらしい。

「まぁ待て、エリオット王子」

「黙れ! 貴殿の言葉など聞くつもりはない!!」

 エリオットは激昂する。
 だが、これで『はいそうですか』と引き下がるわけにはいかない。
 王子である彼から俺への評価は重要だ。
 ミッション『10人以上の人魚族に加護(微)を付与せよ』を果たしていくためにも、エリオットからの評価を回復しておく必要がある。
 俺はメルティーネの頭を撫でながら、彼女に問う。

「メルティーネ……。義兄上が怒っているぞ? どうしたらいいと思う……?」

「は、はい……。えっと……」

 メルティーネは少し悩むと、すぐに答えを出した。
 そして、エリオットに向かって言う。

「エリオット兄様! ナイ様をいじめちゃダメですの!」

「なっ……」

 エリオットが呆気にとられる。
 まさか、メルティーネに言い返されるとは思わなかったのだろう。
 だが、そのおかげで少し冷静になったようだ。

「いや……俺は別にいじめているわけでは……」

 エリオットはそう反論する。
 だが、メルティーネの勢いは止まらない。

「ナイ様は私の恋人ですの! とっても優しくしてくれますし……キスもしてくれましたの! 将来は子どもを何人もつくって幸せに暮らす予定ですの! そのナイ様に、エリオット兄様は意地悪をするんですの!?」

「お、おい……メルティーネ……?」

 今度は俺が面食らう。
 メルティーネがここまで饒舌に、しかも情熱的に語り出すとは……。
 意外な一面を見た気がする。
 だがメルティーネが語れば語るほど、エリオットの顔色が悪くなっていく。

(これはこれで、やりづらいな……)

 あくまで予定だが、エリオットは義兄になる存在だ。
 年齢は俺の方が少し上っぽいが、メルティーネの兄である以上は敬意を示す必要がある。
 エリオットからの評価を回復するためにも、ここは俺たちが引いておいた方がいいかもしれないな。

「メルティーネ、少し落ち着――」

「ふぁああ……。なんだか、騒がしいですね。何かあったんですか……?」

 メルティーネを落ち着かせようと声をかけたとき、そこに第三者の声が聞こえてきた。
 それは、人魚族の少女の声であった。

 彼女の声はどこから聞こえたのか?
 護衛兵たちの中?
 洞窟の入り口方面?
 いや、違う。
 彼女の声は、俺のベッドの方から聞こえてきたのだ。

 そこには、一人の少女がいた。
 彼女は俺のベッドの上に横たわり、俺やエリオットたちに目を向けている。

(……マズイ!!)

 俺の中で警報が鳴り響く。
 ベッド上の少女は全裸だった。
 そしてもちろん、知らない者ではない。
 メルティーネの侍女、リマである。
 俺は慌てて彼女に駆け寄り、毛布を掛ける。

(ナイト様……?)

(しっ! 静かに!)

 俺は小声でリマに指示を出す。
 だが、時すでに遅しだった。
 エリオットが叫ぶ。

「おい! 誰だ、その女は!?」

 エリオットの怒声が響き渡る。
 毛布の中のリマは、驚いた様子で身体をすくめている。
 そんな彼女をかばうようにして、俺は叫ぶ。

「待て! 誤解だ!!」

「何が誤解だ! 裸の少女を床に招いていたなど……」

 エリオットが追及する。
 だが、このまま押し切るしかない。
 俺はリマをかばいながら反論する。

「ただの種族間交流だ! お互いの体の仕組みについて、教え合っていただけだ! 人魚族と人族の体の仕組みがあまりにも違うから、勉強していたんだ!!」

「嘘だっ!!! いかがわしいことをしようとしていたに違いない!!」

 エリオットは聞く耳を持たない。
 他の護衛兵も、彼に同調するような声を発している。

(マズイな……)

 俺は心の中で焦る。
 こんなことなら、リマとの交流は控えておくんだった。
 エリオットの訪問が突然だったので、毛布の中で寝かしたまま放置するしかなった。
 彼との会話が白熱したせいで、リマが起きてしまうとは想定外である。

「……ええっと。ナイ様、エリオット兄様……」

「おお、メルティーネ! なんとか言ってくれ!!」

「メルティーネ、お前も許しがたいだろう!? この男はとんでもない浮気性だぞ!!」

 俺とエリオットは、それぞれメルティーネに加勢を求める。
 なかなかカオスな状況だ。
 次のメルティーネの一言はとても大きな意味を持つぞ……。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品