【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
1257話 エリオット王子
俺が治療岩(治療院)で軽傷者の治療をした数日後――。
「ふむ……。貴殿がナイトメア・ナイト殿か。このたびは、人魚族の戦士たちの傷を癒やしていただき、心より感謝する」
俺が滞在している『海神の大洞窟』にて、1人の青年人魚がそう告げる。
彼はなかなかに立派な鎧を身に着けており、気品ある雰囲気を漂わせていた。
「エリオット兄様……」
メルティーネが小声でつぶやく。
兄様?
つまり、メルティーネのお兄さんか。
確かに顔立ちや雰囲気が似ている。
「ああ、俺はナイトメア・ナイトだ。好きに呼んでくれ」
俺はそう名乗る。
本名はタカシだが……。
この里の人たちには、既にそう名乗ってしまっているからな。
今さら訂正するのも面倒だし、このままでいいや。
「それで、エリオット殿下はどうしてここに?」
「もちろん、貴殿の様子を見に来た。父上やメルティーネからも話は聞いているが、人族が人魚族の里で滞在しているというのは実に興味深い」
エリオットが言う。
人魚族は、人族への偏見や嫌悪感が強いはずだが……。
エリオットはそうでもないのか?
どうして……。
「不思議そうだな。人魚族の俺が、人族の貴殿に敵対心を向けていないことが」
「あ、ああ……。エリオット殿下は俺に対して、特に偏見や嫌悪感を示さなかったからな……。メルティーネも同じだったし……」
俺は少し驚きながらそう言う。
「人族への警戒心は、教育によって叩き込まれていたものだ。幼い子どもや無茶な若者が、無闇に人里へ行かぬようにな」
「ふむ……?」
エリオットが説明してくれる。
そういえば、メルティーネの侍女リマも同じようなことを言ってたな。
「現時点で20歳以上の者は、そういった教育を色濃く受けている」
「ならば当然、エリオット殿下やメルティーネもそうなのではないか?」
俺はそう指摘する。
エリオットは、間違いなく20歳を超えているように思う。
メルティーネは微妙なところだ。
大人っぽい17歳……という可能性もあるが……。
普通に見れば、20歳ちょいぐらいかな。
「確かにそうだ。しかし、俺たちは王族だぞ?」
「うん?」
「王族である俺たちは、幼少期から護衛を与えられていた。単独で人里に向かってしまうリスクは小さい。それに、為政者としてより正確な歴史を知っておく必要がある」
「ああ、なるほどな……」
教育というのは、子どもをより良く育てていくためのもの。
一般住民の子どもに対する教育であれば、『人族はとにかく危険な連中だから近づいてはダメ』と教えておけばいいだろう。
自分から人里に向かってしまうリスクさえ低減させておけば、特に問題はないからだ。
しかし、将来的に為政者となる王族に対する教育であれば……そういった教育は不要となる。
護衛の目があるため勝手な行動をするリスクは小さいためだ。
それに、成長後の統治判断において、偏った知識で判断を下すことは好ましくないという事情もある。
「先代国王は、一般住民に対する教育を徹底しすぎたと悔いておられた……。現国王――父上は、人族への歩み寄りに前向きだ。とはいえ、大歓迎というわけでもないがな」
「ふむ……。それはそうだろうな……」
こういうのは、理性だけではどうにもならないことが多い。
先代国王の世代では、実際に人族からの被害も出ていたはずだ。
現国王の世代に変わって被害はなくなったようが、記憶が風化するにはまだ早い。
さらなる融和は、エリオットやメルティーネの世代になってからのことになるか……。
「実を言えば、俺の同世代の戦士どもにも人族を嫌う者は多くてな……」
「ほう」
「連中の鬱憤を抑えるために、『海神の憤怒』という組織まで立ち上げてやったほどだ。人族に鉄槌を下す練習をさせて、怒りを発散してもらっている。今となっては、その組織をどうしたものか持て余しているのだがな……」
エリオットは苦笑いしながら言う。
どこかで聞いたような組織だ。
いや、あれは『海神の怒り』だったか。
少し違うな。
「ずいぶんと内情を話してくれるんだな。王族なのに、内情をペラペラ喋っていいのか?」
「貴殿にはそれだけ期待しているということだ。そもそも、これらの情報は融和に向けては重要な一方で、里全体としては大した情報ではない」
エリオットがそう言う。
彼が漏らした情報は……人魚族の教育方針の転換や、『海神の憤怒』という組織についてか。
確かに、国として絶対に秘匿するべき情報でもなさそうだ。
「では、そろそろ本来の目的に戻ろう。ナイトメア・ナイト殿、貴殿は治療岩にて軽傷者の治療をしてくれたそうだな」
「ああ……まぁな……」
話が一周してきた。
エリオットがここに来た『本来の目的』とは、いったい何なのだろう?
「ふむ……。貴殿がナイトメア・ナイト殿か。このたびは、人魚族の戦士たちの傷を癒やしていただき、心より感謝する」
俺が滞在している『海神の大洞窟』にて、1人の青年人魚がそう告げる。
彼はなかなかに立派な鎧を身に着けており、気品ある雰囲気を漂わせていた。
「エリオット兄様……」
メルティーネが小声でつぶやく。
兄様?
つまり、メルティーネのお兄さんか。
確かに顔立ちや雰囲気が似ている。
「ああ、俺はナイトメア・ナイトだ。好きに呼んでくれ」
俺はそう名乗る。
本名はタカシだが……。
この里の人たちには、既にそう名乗ってしまっているからな。
今さら訂正するのも面倒だし、このままでいいや。
「それで、エリオット殿下はどうしてここに?」
「もちろん、貴殿の様子を見に来た。父上やメルティーネからも話は聞いているが、人族が人魚族の里で滞在しているというのは実に興味深い」
エリオットが言う。
人魚族は、人族への偏見や嫌悪感が強いはずだが……。
エリオットはそうでもないのか?
どうして……。
「不思議そうだな。人魚族の俺が、人族の貴殿に敵対心を向けていないことが」
「あ、ああ……。エリオット殿下は俺に対して、特に偏見や嫌悪感を示さなかったからな……。メルティーネも同じだったし……」
俺は少し驚きながらそう言う。
「人族への警戒心は、教育によって叩き込まれていたものだ。幼い子どもや無茶な若者が、無闇に人里へ行かぬようにな」
「ふむ……?」
エリオットが説明してくれる。
そういえば、メルティーネの侍女リマも同じようなことを言ってたな。
「現時点で20歳以上の者は、そういった教育を色濃く受けている」
「ならば当然、エリオット殿下やメルティーネもそうなのではないか?」
俺はそう指摘する。
エリオットは、間違いなく20歳を超えているように思う。
メルティーネは微妙なところだ。
大人っぽい17歳……という可能性もあるが……。
普通に見れば、20歳ちょいぐらいかな。
「確かにそうだ。しかし、俺たちは王族だぞ?」
「うん?」
「王族である俺たちは、幼少期から護衛を与えられていた。単独で人里に向かってしまうリスクは小さい。それに、為政者としてより正確な歴史を知っておく必要がある」
「ああ、なるほどな……」
教育というのは、子どもをより良く育てていくためのもの。
一般住民の子どもに対する教育であれば、『人族はとにかく危険な連中だから近づいてはダメ』と教えておけばいいだろう。
自分から人里に向かってしまうリスクさえ低減させておけば、特に問題はないからだ。
しかし、将来的に為政者となる王族に対する教育であれば……そういった教育は不要となる。
護衛の目があるため勝手な行動をするリスクは小さいためだ。
それに、成長後の統治判断において、偏った知識で判断を下すことは好ましくないという事情もある。
「先代国王は、一般住民に対する教育を徹底しすぎたと悔いておられた……。現国王――父上は、人族への歩み寄りに前向きだ。とはいえ、大歓迎というわけでもないがな」
「ふむ……。それはそうだろうな……」
こういうのは、理性だけではどうにもならないことが多い。
先代国王の世代では、実際に人族からの被害も出ていたはずだ。
現国王の世代に変わって被害はなくなったようが、記憶が風化するにはまだ早い。
さらなる融和は、エリオットやメルティーネの世代になってからのことになるか……。
「実を言えば、俺の同世代の戦士どもにも人族を嫌う者は多くてな……」
「ほう」
「連中の鬱憤を抑えるために、『海神の憤怒』という組織まで立ち上げてやったほどだ。人族に鉄槌を下す練習をさせて、怒りを発散してもらっている。今となっては、その組織をどうしたものか持て余しているのだがな……」
エリオットは苦笑いしながら言う。
どこかで聞いたような組織だ。
いや、あれは『海神の怒り』だったか。
少し違うな。
「ずいぶんと内情を話してくれるんだな。王族なのに、内情をペラペラ喋っていいのか?」
「貴殿にはそれだけ期待しているということだ。そもそも、これらの情報は融和に向けては重要な一方で、里全体としては大した情報ではない」
エリオットがそう言う。
彼が漏らした情報は……人魚族の教育方針の転換や、『海神の憤怒』という組織についてか。
確かに、国として絶対に秘匿するべき情報でもなさそうだ。
「では、そろそろ本来の目的に戻ろう。ナイトメア・ナイト殿、貴殿は治療岩にて軽傷者の治療をしてくれたそうだな」
「ああ……まぁな……」
話が一周してきた。
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