【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1249話 労役命令

 俺がスキルを強化した数日後――

「ナイ様、おはようございますですの」

 メルティーネ姫が俺を訪ねてきた。
 俺はベッドに寝転んだまま視線を彼女に向ける。

「おはよう、メルティーネ」

 今日も元気なお姫様だ。
 しかしなぜか、彼女は目を丸くしていた。

「どうした? 何か問題でもあるのか?」

 俺の問いに、メルティーネ姫は首を横に振る。

「い、いえ……。あの、どうしてベッドがあるのかと思いまして……。それに、右手の拘束も……」

「ああ、そういう……」

 俺は思い出した。
 初日の時点での俺は、四肢を『魔封じの枷』と『闘気封印の縄』で拘束されていたのだった。
 しかしその後、『海神の怒り』を追い払うために右手の縄を弾き飛ばし、侍女リマを治療するために右手の枷をぶっ飛ばしたのである。
 今の俺は、右手がフリーの状態だ。
 そして快適に休むため、空間魔法から材料を取り出して簡易的なベッドをも作成済みである。

「勝手なことをしてすまない。だが、見ての通り敵意はないんだ」

「は、はぁ……。それは一目で分かりましたが……」

 メルティーネ姫は困惑している。
 それはそうか。
 俺は今、ベッドでゆったりとだらけている。
 暴れたりしないという意思を示すためにあえて姿勢を正さなかったのだが、王女を前にそれはマズイかもしれない。

「すまないな、すぐに起き上がるよ」

 俺は体を起こす。
 そして改めてメルティーネ姫と向き合った。
 彼女は依然として困惑した表情だ。

「それで、何か用事があるのか?」

 俺が尋ねると、彼女は表情を引き締めた。

「はいですの。実は、ナイ様に不躾なお願いがありまして……」

「ふむ、何だ? 遠慮せずに言ってくれていい」

 俺は即答する。
 どのような内容であれ、メルティーネの頼みなら聞くつもりだ。
 彼女は美少女であり、しかも人魚族だ。
 仲良くなるきっかけはいくらあっても困ることはない。

 ついでに言えば、彼女は王族でもある。
 彼女からの評価を稼げば、人魚族全体からの評価も上がるはず。
 そしてゆくゆくは、ミッション『10人以上の人魚族に加護(微)を付与せよ』の達成にも繋がっていくだろう。

「ほ、本当に何でもよろしいのですの? かなり不躾なお願いなのですけど……」

「もちろん。何でも言ってくれ」

 俺がそう言うと、メルティーネがパッと表情を明るくした。

「実は……ナイ様に労役の命令がございまして……」

「ほう……労役か」

 つまり、俺に働けということである。
 確かに今の俺は、牢屋代わりの『海神の大洞窟』でタダ飯を貪るニート生活だが……。

「労役の内容は何だ?」

「具体的には決まっておりませんの。ただ、ナイ様が人魚族に貢献されることを通して、無害であることを理解してもらおう、と」

「ふむふむ……なるほどな……」

 俺は納得した。
 まぁ妥当な判断だろう。
 人魚族にとって、俺は憎き人族だ。
 しかも、単騎でジャイアントクラーケンを討伐寸前まで追い詰めた。
 率直に言って、かなりヤバい存在であることは間違いない。
 まずは人魚族に俺という存在を知ってもらい、無害であることを証明しなくてはならないのだろう。

「私の発言権では、この内容の譲歩しか引き出せませんでしたの……。本当に申し訳ないですの。私の、そして里の恩人であるナイ様にこのようなお願いを……」

 メルティーネが申し訳なさそうな顔をする。
 この様子からすると、かなり頑張ってくれていたのだろう。
 彼女がいなければ、俺の処刑が決定したりしていたのかもしれない。
 まぁ、その場合は全力で抵抗していただろうが……。

「気にするな。むしろ大歓迎だ」

 俺は彼女に向かって微笑む。
 労役ぐらいどうということはない。
 むしろ、好都合だ。
 忠義度稼ぎに繋がる。
 メルティーネを通して……という間接的な手段ではなく、直接的に人魚族と接触するチャンスだ。

「それでは、さっそくですがナイ様に何か労役をお願いしたいのですの……。できれば、人魚族の役に立っていることが分かりやすいお仕事が良いですの……」

 メルティーネは言い辛そうに言う。
 俺は彼女に向かってニヤリと笑った。

「任せておけ。……というか、実はもう始めていたりする。偶然だけどな」

「えっ? もうですの? いったいどのようなことを……?」

 メルティーネが驚いた顔になる。
 ここ数日、俺は本当に暇だった。
 そんなとき、あるきっかけで俺はちょっとした仕事をしていたのだ。

「ほら、言っている間にも……来たぞ」

「えっ?」

 メルティーネが困惑する。
 俺は彼女の背後をチラリと見た後、小さく笑みを浮かべたのだった。

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