【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
1245話 偏見
俺は侍女リマに治療魔法を施した。
そして話題は、人族と人魚族の過去へと広がっていく。
「詳しく聞かせてくれ。メルティーネ姫のような融和派の意見が、子どもへの教育内容にも影響を与えているって?」
「はい。人族からの被害がしばらく確認されていないこともあり、わたしたちの世代は過去の被害について詳しく教えられていないのです」
「ほう……」
「わたしも、人族を実際に見たことはありませんでした。文献や絵本などのお話で聞くぐらいです。だから、あなたたちに対する恐れより好奇心の方が強かったのです」
「なるほど……。そういうことか」
俺は納得した。
歴史を教えることは大切なことだが、全てをそのまま教える必要はない。
大前提として、教育は子どもや集団全体を発展させるために行うものだ。
ならば、子どもに悪い影響を与える教育内容は排除するべきだろう。
人族が今なお鬼畜外道で危険な存在であるのなら、『かつて人族は人魚族に無体を働いた』という教育を徹底した方がいい。
だが、そうでないのなら……。
ここ最近の人族が友好的なのであれば……。
適度にぼかして、人族に対する偏見や嫌悪感を植え付けず、フラットなまましておくのもアリだ。
その教育方針の方が、人魚族全体としてはプラスに働く可能性がある。
「先ほどの『海神の怒り』の連中はどうなんだ? リマと同じ教育を受けてきたのか?」
「いえ、彼らは人族の過去について詳しく学んでいるはずです。姫様から聞いた話では、かなり誇張された内容も含んでいるとか……。ただ、実際に祖父母世代が行方不明になってしまった者もいるようです」
「そうか……」
リマの答えを聞いて、俺は考える。
10歳前後のリマと、20歳前後の不良集団『海神の怒り』。
この間が1つの境目になっているらしい。
ある意味では、『海神の怒り』も被害者と言っていいかもしれないな。
幼少期から受けた教育というのは、その者の思想に大きな影響を与える。
彼らが俺に対して偏見を持っているのも仕方ない。
それに、実体のない嫌悪感ではなく、実際に彼らの祖父母世代の一部は行方不明になってしまったそうだし……。
問答無用でぶち殺したりしなくて良かった。
「今の王族の方々には、メルティーネ姫様を筆頭に心優しい方々が多いです。彼らなら、きっと人族と人魚族が共に手を取り合える道を模索してくれるでしょう」
リマは笑顔で言う。
だが、俺は首を横に振った。
「いや、そう簡単な話ではない。抵抗勢力も多いのだろう? 人族に偏見を持つのが『海神の怒り』だけとは思えないな」
「それは……そうですね。元老院や戦士団幹部の中にも、未だに人族に対して懐疑的な方は多いです……。今回、姫様が人族に誘拐された件に関しても、かなりの怒りがありました」
リマが表情を曇らせる。
あれか。
人族のマフィア『ダダダ団』の首領リオンが、研究のためにメルティーネを監禁していた件だな。
まぁあれは、意外に悪くない待遇だったようだが……。
それでも人魚族からするならば許せない話だろう。
あの件で、人族嫌悪派が勢いづくのは間違いない。
「あまり楽観はできないな……」
「そう……ですね……」
リマは落ち込んでいる様子だ。
タイミングが悪かった。
メルティーネ姫などの融和派が人魚族内で支持を広げている最中、当の本人が人族に誘拐されたのだから。
そして畳み掛けるように、ジャイアントクラーケンを討伐するような人族が里にやって来た。
これでは、人魚の里が混乱してしまうのも仕方ない。
(しかし……)
俺は考える。
先ほど『海神の怒り』の男たちが叫んでいた言葉だ。
彼らは『大ボスに連絡しないと!』や『水中でなら、こうはいかなかった!』などと口にしていた。
あの不良集団とはまた別に、『海神の怒り』の上位組織が存在するようだ。
そして、次の戦いは水中で仕掛けられる可能性が高い。
(面倒なことにならないといいんだが……)
俺はそんなことを考えつつ、リマと共に静かな時を過ごすのだった。
そして話題は、人族と人魚族の過去へと広がっていく。
「詳しく聞かせてくれ。メルティーネ姫のような融和派の意見が、子どもへの教育内容にも影響を与えているって?」
「はい。人族からの被害がしばらく確認されていないこともあり、わたしたちの世代は過去の被害について詳しく教えられていないのです」
「ほう……」
「わたしも、人族を実際に見たことはありませんでした。文献や絵本などのお話で聞くぐらいです。だから、あなたたちに対する恐れより好奇心の方が強かったのです」
「なるほど……。そういうことか」
俺は納得した。
歴史を教えることは大切なことだが、全てをそのまま教える必要はない。
大前提として、教育は子どもや集団全体を発展させるために行うものだ。
ならば、子どもに悪い影響を与える教育内容は排除するべきだろう。
人族が今なお鬼畜外道で危険な存在であるのなら、『かつて人族は人魚族に無体を働いた』という教育を徹底した方がいい。
だが、そうでないのなら……。
ここ最近の人族が友好的なのであれば……。
適度にぼかして、人族に対する偏見や嫌悪感を植え付けず、フラットなまましておくのもアリだ。
その教育方針の方が、人魚族全体としてはプラスに働く可能性がある。
「先ほどの『海神の怒り』の連中はどうなんだ? リマと同じ教育を受けてきたのか?」
「いえ、彼らは人族の過去について詳しく学んでいるはずです。姫様から聞いた話では、かなり誇張された内容も含んでいるとか……。ただ、実際に祖父母世代が行方不明になってしまった者もいるようです」
「そうか……」
リマの答えを聞いて、俺は考える。
10歳前後のリマと、20歳前後の不良集団『海神の怒り』。
この間が1つの境目になっているらしい。
ある意味では、『海神の怒り』も被害者と言っていいかもしれないな。
幼少期から受けた教育というのは、その者の思想に大きな影響を与える。
彼らが俺に対して偏見を持っているのも仕方ない。
それに、実体のない嫌悪感ではなく、実際に彼らの祖父母世代の一部は行方不明になってしまったそうだし……。
問答無用でぶち殺したりしなくて良かった。
「今の王族の方々には、メルティーネ姫様を筆頭に心優しい方々が多いです。彼らなら、きっと人族と人魚族が共に手を取り合える道を模索してくれるでしょう」
リマは笑顔で言う。
だが、俺は首を横に振った。
「いや、そう簡単な話ではない。抵抗勢力も多いのだろう? 人族に偏見を持つのが『海神の怒り』だけとは思えないな」
「それは……そうですね。元老院や戦士団幹部の中にも、未だに人族に対して懐疑的な方は多いです……。今回、姫様が人族に誘拐された件に関しても、かなりの怒りがありました」
リマが表情を曇らせる。
あれか。
人族のマフィア『ダダダ団』の首領リオンが、研究のためにメルティーネを監禁していた件だな。
まぁあれは、意外に悪くない待遇だったようだが……。
それでも人魚族からするならば許せない話だろう。
あの件で、人族嫌悪派が勢いづくのは間違いない。
「あまり楽観はできないな……」
「そう……ですね……」
リマは落ち込んでいる様子だ。
タイミングが悪かった。
メルティーネ姫などの融和派が人魚族内で支持を広げている最中、当の本人が人族に誘拐されたのだから。
そして畳み掛けるように、ジャイアントクラーケンを討伐するような人族が里にやって来た。
これでは、人魚の里が混乱してしまうのも仕方ない。
(しかし……)
俺は考える。
先ほど『海神の怒り』の男たちが叫んでいた言葉だ。
彼らは『大ボスに連絡しないと!』や『水中でなら、こうはいかなかった!』などと口にしていた。
あの不良集団とはまた別に、『海神の怒り』の上位組織が存在するようだ。
そして、次の戦いは水中で仕掛けられる可能性が高い。
(面倒なことにならないといいんだが……)
俺はそんなことを考えつつ、リマと共に静かな時を過ごすのだった。
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