【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1232話 不完全

 俺はジャイアントクラーケンと戦っている。
 新技の『神霊纏装』によってそれなりのダメージを与えた。
 時間稼ぎは成功と言っていいだろう。

 だが、結果的にはそのダメージ量は中途半端なものになってしまった。
 ジャイアントクラーケンが生命の危機を感じて逃げるほどでもなく、かと言って俺という存在への無関心を維持するほどでもない。
 今すぐに俺が隠密小型船に合流しようと移動を始めれば、奴は追いかけてくるだろう。
 それは困る。

「ふぅ……」

 俺は呼吸を整える。
 俺の力の根源は、大きく3つある。
 魔法の発動に使用するMP。
 聖なる力、聖気。
 そして、身体能力を底上げする力――闘気だ。

 聖気は既に空っぽ。
 MPには多少の余裕があるものの、空間魔法や重力魔法を維持するために温存する必要がある。
 そのため、すぐに攻撃に回せるのは闘気だけだ。

「かぁっ!! おおおおおぉっ!!!」

 俺は気を高める。
 俺の全身を、闘気が覆い尽くす。

「ゴオオォッ!!」

 ジャイアントクラーケンが、咆哮を上げる。
 奴は無数の触手で俺を狙ってきた。

「はあああぁ……!! っあああぁっ!!!」

 俺はさらに闘気を高める。
 全身を覆い尽くしていた闘気が、さらに大きく膨れ上がっていく。
 そして――。
 ドゴオオォォンッ……!!
 爆発的な衝撃音。
 俺の闘気が弾け、触手の一部を吹っ飛ばしたのだ。

「ゴオオォッ!?」

 ジャイアントクラーケンが驚愕の声を上げる。
 別に、今のは攻撃ではない。
 この形態に変化する際に発生した余波のようなものだ。

「時間がかかってすまなかったな。まだこの変化に慣れていないんだ。名付けるなら、【英霊纏装・ベテルギウス・不完全】ってところか……」

 俺を力強い闘気が覆っている。
 俺はそれらをコントロールし、身体にフィットさせていく。

「……よし、いい感じだ」

 俺はそうつぶやきつつ、両手を握り込んだ。
 まだ不慣れな技だったが、これなら戦えそうである。

「ゴオオォッ!!」

 ジャイアントクラーケンが触手で攻撃してくる。
 俺はそれを躱しつつ、反撃を叩き込んだ。

「【龍撃・神威】!!」

 俺は闘気を纏った拳で、奴の巨体を殴りつけた。

「ゴオオォッ!?」

 驚愕の声を上げるジャイアントクラーケン。
 俺の拳がめり込んでいる。
 俺は追撃を加えるべく、闘気を全開にしたまま連撃を叩き込む。

「おらあぁっ!!」

 ガガガッ……!!
 ドゴォンッ……!!!

「ゴオォッ!!」

 俺の怒涛のラッシュに、ジャイアントクラーケンが苦しそうな声を上げた。
 なかなかタフだが……。
 まだまだこれからだ。

「【龍神脚】!!」

 俺は、足に闘気を集中させる。
 強烈な蹴りがジャイアントクラーケンを捉えた。

「ゴオオォッ……!?」

 再び声を上げるジャイアントクラーケン。
 少しばかり体勢が崩れた。
 やはり、この形態は強力だな。
 ここで畳み掛けるぞ!

「くらえっ! 【ドラゴニック・バースト】ぉおお!!!」

 俺は闘気弾を放つ。
 だが、ただの闘気弾じゃない。
 奴の戦意を挫くまで何度でも心の強さで撃ち出し、決して諦めない。
 ドラゴン級の闘気弾……ド闘気弾だ!!!

「ゴオオォッ!!」

 ジャイアントクラーケンも、負けじと応戦してくる。
 ド闘気弾と触手が激突し、お互いに相殺した。

「まだまだぁっ! 【ドラゴニック・バースト】ぉおおっ!!」

 俺は再び技を発動。
 ド闘気弾を連発する。

「ゴオオォッ!?」

 ジャイアントクラーケンが驚愕の声を上げた。
 触手では対応し切れず、何発か胴体や頭部に直撃させている。
 やはり、触手よりも本体の方がダメージが通りやすいようだ。
 人間でも、頭部や胴体を刃物で貫かれたら致命傷になるが、手足だったら何とかなったりするもんな。

「おおおおおぉっ!! 【ドラゴニック・バースト】ぉおおっ!!」

 俺はさらにド闘気弾を連発する。
 そろそろ限界が近い……。
 まだ奴は倒れないのか?
 そろそろ切り上げて船に合流するべきか……。
 いや、ここまで奴にダメージを与えたからには、向こうもタダでは俺を帰してくれないだろう。

 この勝負は、どちらかが倒れるまで続く。
 そう確信していた。
 だが、ここで奴が大きく動く。

「ゴオオォッ!!」

 ジャイアントクラーケンは俺目掛けて複数の触手を振る。
 その一撃は、これまでで最も速く鋭いものだった。

「っ!? しまっ……!!」

 ドガッ……!!
 俺は触手の直撃を受けた。
 そして、勢いよく跳ね飛ばされてしまったのだった。

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