【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1220話 恐れるのをやめましょう

「え? なんだって?」

「だから、人魚を見たんだってば!」

 俺の目の前に座るユナが、俺に話しかけてくる。
 ここは隠密小型船のデッキ。
 俺たちはヤマト連邦に向けて、順調に航海中だった。

「人魚ですか? モニカさんからも聞きましたね」

「わたくしも、以前から噂ぐらいは耳にしていますわ」

「うむ。拙者も同じくでござる」

 サリエ、リーゼロッテ、蓮華がユナの言葉に反応する。
 この場には、乗組員が勢揃いしていた。

「マリアも見たよっ! すっごく美人さんだったよ!!」

「ふむ……。ユナに加えてマリアもか……」

 マリアは『視力強化』のスキルを取得済みだ。
 そしてユナは、素で視力がそこそこ優れている。
 その2人が目撃したというのなら、間違いないだろう。

「人魚の生息域が近づいてきているのかもしれないな。気を引き締めていこう」

 俺はそう告げる。
 オルフェスからヤマト連邦までの進行具合は、およそ6~7割ぐらいだろうか?
 魔導回路は引き続き正常に作動しているし、順調に進んでいるはずだ。
 ヤマト連邦に到着するのもそう遠くないと思われるが、その前に人魚関連で何か起きるかもしれない。

「かしこまりました。私なりに、警戒しておきます」

「ピピッ! 当機も警戒モードに移行いたします」

「知らない土地……。ちょっと怖いかも……」

「私は地縛霊だったし、島国は初めてだよー」

 レイン、ティーナ、ドラちゃん、ゆーちゃんが口々に言う。
 その他の面々も、それぞれの反応を見せた。
 楽しみにしている者、不安そうにしている者、動じない者。
 その様子は様々だが、いずれも少しばかり不安な気持ちを持っている様子だ。
 俺はゆっくりとうなずき、そしてみんなの顔を改めて見回した。

「俺から1つ」

 俺は声を上げた。
 みんながこちらに注目する。

「過度に恐れるのをやめましょう。海を見たら人魚がいたりとか、ヤマト連邦の海岸線沿いにサムライがいたりとか、上陸後には忍者や力士がいたりとか……。噂でしか聞いたことがないような存在がいると思う。だが、これからは、やっぱり恐れてしまったら乗り越えられない。今回は、俺たち自身の軌跡を刻み、サザリアナ王国の平和を勝ち取るために来たんだ。謎の存在への恐れを捨てて、未知なる地に打ち勝つことだけを考えましょう。さぁ、行こう!!!」

 俺はそう鼓舞した。

「はい!」

「頑張ろう!」

「了解ー」

「き、気合いが入りました!」

 ミティ、アイリス、モニカ、ニムが元気よく返事する。
 他のみんなも、口々に同意の言葉を発してくれた。

「よし……。それでは引き続き、ヤマト連邦に向けて全速前進DA!」

「「全速前進だ!!!」」

 俺の号令に合わせて、みんなは拳を振り上げた。
 ……さてと。
 これで少しは緊張がほぐれたらいいんだけどな……。

 そんなことを考えつつ、俺は前方を見据える。
 前方には水平線まで広がる海。
 そして、その先には、ヤマト連邦があるのだろう。

「……むっ!? さっそくか!!」

 俺がそう告げた瞬間、船が大きく揺れる。

「何事ですか!?」

 サリエが周囲を確認するように見回す。
 他のみんなも同様に警戒していた。

「前方の海に大型の魔物――これはリトルクラーケンだ!!」

 俺の口から魔物の名前が飛び出す。
 前方の海から巨大なイカの化け物が姿を現したからだ。
 全長は6メートルぐらいだろうか?
 以前ルクアージュの近海で戦ったリトルクラーケンより、一回り大きい。

 触手のようなものも大量に生えており、触手の先端が吸盤になっている。
 その吸盤で船を捕えて、一気に引きずり込むつもりなのだろう。

「みんな! 戦闘準備だ!!」

 俺は声を上げた。
 だが、ここは海の上。
 船の上では、使える魔法が制限される。
 船を破壊しないためにも、範囲攻撃系の魔法は控えるべきだろうな。
 俺はそう考える。

「わたくしが行きますわ!」

 そう言って、リーゼロッテが前に出た。
 リトルクラーケンの触手が伸びる。

「はっ!!」

 蓮華が触手に向かって斬撃を放った。
 伸びてきた触手は、見事に切り刻まれる。

「ピピッ! 2時の方向から、新たな触手が来ます!」

 ティーナが声を上げる。

「私が止めます!! ――【オーバーヒール】!!!」

 サリエが魔法を発動した。
 過剰な治療の力が触手を襲う。

「ピギャー!?」

 リトルクラーケンが悲鳴を上げ、触手を引っ込めた。

「やりますね、サリエさん! わたくしが追撃いたしますわ!! ――【レインレーザー】!!」

 ちゅどん。
 リーゼロッテの杖から、レーザー光線のような水が放たれる。
 それはリトルクラーケンの頭部に向かって一直線に突き進んでいった。

「ギュルゥー!?」

 リトルクラーケンが悲しげな鳴き声を上げる。
 これで討伐完了だ。

「みんな、見事だった。素晴らしい」

 俺はそう称える。
 リトルクラーケンぐらいなら、俺たちの敵ではないな。
 これからも順調に進んでいけるだろう。
 俺はそう確信しつつ、航海を進めていくのだった。




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