【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1215話 くやしく説明してくれ

 密航者の正体が判明した。
 Cランクパーティ『雪月花』の三姉妹だ。

「長期依頼の約束を反故にしたのは悪かった。しかし、どうしてそれがヤマト連邦に関するものだって分かったんだ?」

 俺はそう問う。
 彼女たちには、王都への護衛をしてもらったこともある。
 また、最初に出会った場所はラスターレイン伯爵領のルクアージュだ。
 長期依頼と聞いたなら、王都やルクアージュ、あるいはその他の街の依頼を想像するのが自然だろう。

 俺が疑問に感じていると、三姉妹が顔を見合わせた。
 そして次女の月が代表して答える。

「話の流れで分かったわよ……」

「そうか?」

「だって、私の故郷がヤマト連邦だって話を聞いた直後に、長期の護衛依頼をするかもって言い出したんだもの。普通に考えたら、ヤマト連邦の話だって分かるじゃない」

「あー……」

 確かにそうだ。
 少し油断していたかもしれない。
 しかし、普通はそれだけでヤマト連邦に関係があるとは思わないだろう。
 Cランクパーティ『雪月花』は、戦闘能力や美貌だけでなく、頭の回転も優秀なようだ。

「まったく、ハイブリッジ男爵も迂闊ね。機密性の高い情報は、推測させる材料さえ与えないことが重要よ」

「申し開きもない。……しかし、『ハイブリッジ男爵』呼びとは他人行儀だな。あの夜みたいに『旦那様』と呼んでくれてもいいんだぞ?」

 俺は月と深い仲になっている。
 肩書き付きで呼ばれると、距離を感じてしまう。

「っ……。そ、そんなことよりも、これからのことについて話しましょう」

 月が顔を赤くしながら話題を変える。
 彼女にしては珍しい反応だ。
 そんな俺たちの様子を、花は羨ましそうに、雪は静かに見つめている。

「それで、密航した理由は何だ? 里帰りか?」

 俺は話題を逸らす月の話に乗ることにした。
 長期依頼の約束が反故にされ、それについて文句を言うのは分かる。
 だが、勝手に船に乗り込むのはやり過ぎだろう。

「ええっと……」

「黙秘権はないぞ。食べた分は話してもらうからな」

 俺はそう告げる。
 食料に余裕はある。
 だが、長い船旅において無断で食料を食べられるのは看過できない。
 場合によっては、しっかりとお仕置きする必要があるだろう。

「花ちゃんはね~。純粋に里帰りだよ~」

「……そうなのか?」

 自分で候補に挙げたことではあるが、本当に里帰りだとは思わなかった。
 普通、ただの里帰りで密航するか?

「いや待て、『花ちゃんは』って言ったな? 他の2人は違うのか?」

 彼女たちは三姉妹でパーティを組み、普段からほとんどの行動を共にしている。
 当然、密航の目的も同じだと思っていた。
 しかし、実際は違うのかもしれない。

「……ボクは2人の付き添いだね。それに、実家からお宝でもくすねられたら、それで満足……」

 雪はそう言う。
 俺は雪の理由に納得した。
 彼女は金銭欲が強いタイプだ。
 実家に帰って、何らかの資金援助を受ける計画だろう。
 その『実家からお宝をくすねる』という表現には不穏当さがあるが、この際置いておこう。

「……はぁ。2人とも、本当に自由人ね」

 月が溜め息を吐く。
 花と雪の自由人っぷりに呆れているようだ。

「それで? 月はどうしてだ?」

 俺は再度尋ねる。
 彼女の口ぶりからすると、また別の理由がありそうだ。

「神宮寺家の責務を果たすためよ」

「責務?」

 俺は首を傾げる。
 三姉妹の出身はヤマト連邦だが、育ちはサザリアナ王国だ。
 そんな彼女らが責任を負うような事柄とは何か?

「名家に生まれた私たちが、他国に逃げざるを得なくなった理由……。成長した私たちなら、きっと解決できるはずだわ。ハイブリッジ男爵の後ろ盾もあるし……」

「名家? ……いやそれより、『ハイブリッジ男爵』呼びは他人行儀だからやめないか?」

 俺の要望を、月は華麗にスルーした。
 彼女はそのまま話を続ける。

「ヤマト連邦の平和は、私たち神宮寺家が守るわ」

「……なるほど?」

 俺はとりあえず納得した。
 詳細についてはまだ分からないが、全体像は見えてきた。
 神宮寺家は、ヤマト連邦内で何かしらの影響力を持つ名家らしい。
 しかし、何らかの理由で幼少期の彼女たちが他国に逃がされたようだ。
 成長した彼女たちは、責務とやらを果たすためにヤマト連邦に帰ることにしたと……。

 責任感の強い月らしい行動だ。
 彼女が権力や名声を求めることとも無関係ではあるまい。

 一方、花と雪はあまり気にしていない様子だ。
 彼女たちは自由なタイプだからな。
 家の責務なんて、知ったことではないのかもしれない。
 ……いや、月に付き合っているあたり、多少は気にしているのか。
 いずれにせよ、現状の情報だけでは不足だ。

「くやしく説明してくれないか?」

「はぁ? えっと……。ヤマト連邦の平和は、私たち神宮寺家が守るわ!」

(# ゚Д゚)ムッキー
( `Д´)フォオオオオオオオオオ!

 月が激おこ状態になった。
 いかにも悔しそうだ。
 俺は続ける。

「違う違う。もっとくやしく頼む」

「ヤマト連邦の平和は、私たち神宮寺家が守るわ!!!

(ノ#`Д´)ノ⌒┻━┻
ヽ(`(`(`(`ヽ(`Д´)ノ ファ・フォァ・フワォオオオオオオオオオオオン!!

 月が俺の要望に従い、渾身の力を込めて叫んでくれた。
 素晴らしい熱演だ。
 意外にノリが良いな……。
 俺は満足する。

「いや、間違えた。『くやしく』じゃなくて『くわしく』だ」

「はぁ? ……今の茶番は何だったのよ?」

(#^ω^)ビキビキ 

 月が俺を睨む。
 俺は彼女をなだめつつ、話を聞いていくのだった。

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