【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1212話 『食料の減りが早い』事件

 数日が経過した。
 俺は今、隠密小型船のデッキでくつろいでいる。

「あれからは嵐にも遭遇せず、順調ですね」

「そうだな……」

 ミティの言葉に、俺は返事をする。
 隠密小型船は今も移動を続けていた。
 操舵は交代制だが、さほどの負担はない。
 船に備え付けられている魔導回路によって、半自動で制御できるのだ。
 今は、サリエやリーゼロッテが操舵を担当してくれている。

「ふふ、順調すぎて暇だね」

 アイリスが笑う。
 この数日間は、本当に何もなかった。
 嵐にも遭遇していないし、海の魔物に襲われることもない。
 平穏な航海だった。
 まぁ、やることはヤッているけどな。

「ねぇ、ちょっとだけ気になることがあるんだけど……」

 モニカが口を開いた。

「なんだ?」

「船倉に保管している食料なんだけど、ちょっと減りが早い気がするんだよね」

「……ん? そうか?」

 モニカの言葉に俺は首を傾げる。
 食料の減りが早い?
 元々、大量に用意していたはずだが……。

「気のせいかもしれないけど……」

「いやいや。食料の管理は重要だ。モニカが気になるなら、詳しく調査していく必要がある」

 名付けて、『食料の減りが早い』事件といったところか。
 長い船旅において、食料不足は死に直結する。
 まぁ俺たちの場合、船倉以外にも保管場所があるので致命的ではないが……。

 俺とレインは空間魔法を使える。
 具体的には『アイテムボックス』や『アイテムルーム』だ。
 そしてミティは魔道具『アイテムバッグ』を持つ。
 さらに古代アンドロイドのティーナは『アイテムコンテナ』という機能を持っている。
 これらを用いれば、異空間にたくさんの物資を保管することができる。

 仮に食料が不足した場合も、船倉にある分とは別に食料を持ち出すことが可能だ。
 ついでに言えば、俺やリーゼロッテの水魔法によって飲料水の心配もない。

「そんなに深刻にならなくてもいいのかな?」

「いや、ヤマト連邦やそれに至る海域は未知の領域だ。何らかの理由で魔法の調子が悪くなる可能性はある。現物の食料もしっかり管理しておきたい」

 俺はそう指摘する。
 魔法を発動するには、自身が持つMPを魔力に変換して放出することになる。
 だが、その出力の100パーセントを自前で用意する必要はない。
 大気や地脈にある魔素を上手く利用して発動すれば、MPを節約して魔法を発動できる。

 それをスキルに昇華したものが、俺の持つ『MP消費量減少』のスキルだろう。
 そこまでは至らずとも、多かれ少なかれ、それぞれの魔法使いは類似技術を使っていることが多い。
 便利な技術ではあるが、逆に言えば環境次第で魔法の行使に支障が出るということでもある。
 魔素が極めて薄い海域をうっかり通ってしまい、ちょうどそのときに船倉の食料が尽きる……なんてことは避けたい。
 慎重すぎるくらいでちょうどいいだろう。

「とりあえず、モニカは船倉で食料の総量を再確認してみてくれ。俺は船内を見回りして、異常がないか確認する。不審人物が乗り込んでいないかとかな……」

 見回りに最も適した人材は、俺だ。
 スキルとして『気配察知レベル2』『視力強化レベル1』『聴覚強化レベル1』を持っており、不審人物を発見しやすい。
 また、『気配隠匿レベル2』を持っているのも大きい。
 俺の気配は察知されにくく、不審人物側から警戒されにくいのだ。
 仮に人物じゃなくて小動物なんかが紛れ込んでいた場合も、似たようなものである。

「では、私はデッキを見回ります」

「ならボクは、念のために出入り口を見張ってるね!」

 ミティとアイリスが名乗りを上げる。
 これで役割分担がはっきりしてきたな。

 モニカは食料の総量を再確認する。
 ミティは船のデッキを見回り、俺は船内を見回る。
 その出入り口は、アイリスが見張る。
 これなら、不審人物や小動物が紛れ込んでいても逃げ場はない。

「じゃあ、みんなよろしくね。私は食料を確認してくるから。ニムちゃんにも手伝ってもらおっかな」

 モニカはそう言って、船倉へと降りていった。
 今の時間は、サリエやリーゼロッテが操舵担当だ。
 ニム、ユナ、マリアあたりは自由時間だったはず。
 ニムに限らず総出で手伝ってもらってもいいが、そこまでするほどのことでもないか。
 不審人物ではなくて小動物って線もあるしな。

「よし、俺は船内を見て回る。2人も、しっかり頼んだぞ」

「うん!」

「分かりました」

 俺はアイリスとミティに声をかける。
 彼女たちはこの場に残る。
 そして俺は、1人で船内の見回りを始めるのだった。

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