【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1211話 悪夢

「はぁ、はぁ……! うぅ、どうしてこんなことに……」

 俺は森の中を疾走していた。
 全力に近いスピードで走り続けている。
 すでに魔力はほとんど尽きていた。
 もう体力も限界が近い。
 だが、足を止めるわけにはいかなかった。
 後ろから恐ろしい顔をした少女たちが追いかけてきているからだ。

「タカシ様……。信じていたのに、ひどいです……」

「ボクを好きって言ってこれたのは嘘だったの……?」

「恨めしや……。子どもまで生ませて、こんな仕打ちをするなんて……」

 ミティ、アイリス、モニカが俺を恨めしそうな顔で見てくる。
 彼女たちの表情には、深い恨みと憎しみが込められているのがよくわかった。

「違うんだ! 話を聞いてくれ!!」

 俺はそう口にする。
 しかし――

「い、言い訳は聞きたくないです……」

「ふふ……。大人しく観念しなさい……」

「タカシお兄ちゃん……。はんせーしてもらうよ……」

 ニム、ユナ、マリアが静かに怒りの声を上げる。
 確かに俺は、浮気三昧だった。
 しかし、彼女たちがここまで怒り狂うとは……。
 今まで、そんな様子は微塵もなかった。
 愛する妻たちが、まるで別人のようだ。

「お、落ち着いてくれ! とりあえず話を……」

 俺は必死の声を上げる。
 だが、彼女たちは聞く耳を持たない。

「問答無用です……」

「わたくしたちを悲しませた罪……、万死に値しますわ……」

「切り捨てるでござる……」

「弁解の余地はありません……」

 サリエ、リーゼロッテ、蓮華、レインまでもが、怒りと悲しみの混じった声を出していた。
 そして、俺を取り囲み始める。

(このままでは……)

 俺は絶体絶命の危機を感じる。
 1対1なら、チートの恩恵を最も多大に受けている俺が有利だろう。
 だが、さすがに1対10は……。
 体力も魔力もほとんど残っていない今の俺に、この状況はキツイ。

「ピピッ……。マスターの命運は尽きました……」

「私のブレスで……火葬してあげるね……」

 ティーナとドラちゃんまでが、怒りに燃えた目を俺に向けてきた。
 彼女たちの言葉には、冗談など微塵も含まれていないことが分かる。

(これは、本当にマズい……)

 俺は今更ながらに自分の置かれた状況を認識する。
 そして、命の危機を感じた。

「お、落ち着け……。話せば分かる……」

 俺は必死に説得を試みるが――

「おにーさん……、問答無用だよ……。男に騙された女の恨み……思い知れ……!」

 ゆーちゃんが俺に迫ってきた。
 彼女は怨霊のようなオーラを出している。
 怖っ……。

「ま、待ってくれ! 少しだけでも話を――」

「女たらしと浮気者には、死あるのみ……! 恨めしや~~~!!!」

「ぎゃあああぁぁあっ!?」

 俺は絶叫する。
 ゆーちゃんの顔が視界いっぱいに広がったかと思うと、すぐに暗転した。
 そして俺の意識は闇へと落ちていった……。



「――はっ! こ、ここは……?」

 俺は目を覚ました。
 辺りを見回すと、薄暗い部屋のようだ。
 上方から太陽の柔らかな日差しが差し込んでいる。

(ここはどこだ?)

 俺は必死に記憶を辿る。
 確か俺たちは――

「あ、タカシ様! ご起床されましたか!」

「タカシ、おはよー」

「ん? あ……」

 俺が声の方へ視線を向けると、そこにはミティとアイリスの姿があった。
 2人とも、活動的な普段着である。

(あ、そうか……)

 そこで俺は状況を思い出した。
 俺たちミリオンズは、ヤマト連邦に向けて隠密小型船で移動中だったのだ。
 その途中で雷雲が発生したため、潜水機能を使ってやり過ごすことになった。
 潜水中はやることも限られるので、ヤッていたんだったな。
 俺が寝ている間に他のみんなは起床し、潜水状態を解除して海上に戻っていたらしい。

「2人とも……。浮気性の俺ですまない……。愛する妻がいながら、俺という奴は……」

 俺は謝罪する。
 さっきの惨劇は夢だ。
 しかし、いつ現実になってもおかしくない内容にも思えた。

「え? 今さら?」

「偉大なるタカシ様から、謝罪していただくようなことではありませんよ」

 アイリスとミティの反応は淡白なものだった。
 夢で見たような、怒りと悲しみに満ちた顔はしていない。

「そ、そうか? 怒ってないのか?」

「怒る必要ある? ボクたちを捨てたならまだしも、他の人に手を出すくらい……」

「私やミカを愛してくれるのなら、お妾さんがたくさんいても問題ありません!」

 アイリスとミティが明るい声で言う。
 2人とも、いつもと変わらない様子だ。

「……そうか。ありがとう、2人とも……」

 俺は彼女たちの対応に、感動した。

(そうだよな……。ミティとアイリスが俺を見放すわけがないよな……)

 浮気を繰り返す俺を、受け入れてくれるとは……。
 感謝しかない。

 その後も俺は、モニカやニムを始めとした他のメンバーとも顔を合わせたが、彼女たちも怒っていなかった。
 むしろ、友好的に接してくれた。
 俺としては嬉しい限りである。

 しかしあの夢が正夢になることは避けたいので、その日はずっとみんなのご機嫌取りを行った。
 こうして俺たちを乗せた潜水艇は、ヤマト連邦へ向けて進んでいったのだった。

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