【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1205話 千秋との記憶?

「……知ってる天井だ」

 俺は目を覚ます。
 そして、お約束の言葉を口にした。

「ここは……俺の自室じゃないか。まさか、俺の異世界冒険は、夢オチだったのか!?」

 俺は頭を抱えて絶望する。
 ミティやアイリスとの愛情は?
 モニカやニムとの熱い夜は?
 ティーナやドラちゃんと育みつつあった愛は?

 これら全てが夢オチだったのか!?
 いや、でも夢にしてはやけにリアルだったような……。
 それに、メチャクチャ長かったし……。

「うぅ……。ミティぃ……」

 俺は泣きそうになる。
 そのとき、部屋の扉がノックされた。

「タカシ君、起きてる?」

 扉越しに誰かの声が聞こえてきた。
 聞き覚えのある声だ。
 母ちゃんではない。
 ミティやアイリスでもない。
 ニムやモニカの声でもない。

「……千秋か?」

 俺は声の主を推測する。

「うん、そうだよ」

 部屋の扉が開けられた。
 やはり、俺の推測は間違っていなかったらしい。

「おはよう、たかし君」

「おはよう、千秋……」

 俺の目の前には、黒髪の少女が立っていた。
 彼女は俺の幼なじみの千秋。
 セーラー服を着用しており、清楚系の女子高校生といった出で立ちだ。

「お前、その服は……」

「なぁに? 変なところでもある?」

 千秋が俺の顔を下から覗き込むようにして、そんなことを言ってくる。
 とても可愛い。
 その姿自体に違和感はない。
 あるとすれば、時系列がおかしいことくらいだ。

(千秋は俺と同じく、成人済みだったはず……。つまり、これは昔の夢か……)

 俺はそう結論付けた。
 記憶が正しければ、俺は20代で無職だったときに異世界へ転移した。
 そこでミティやアイリスと出会い、そろそろ3年が経過しようとしている。
 当然、俺と同い年の千秋もとっくに成人済みだ。
 セーラー服を着ているのはおかしいし、顔立ちも明らかに幼い。
 間違いなく、高校生時代の夢だろう。

「ねぇ、どうしたの?」

 千秋は問いかけてくる。
 俺はすぐに首を横に振った。

(まぁ、細かいことはどうでもいいか……)

 夢の中とはいえ、せっかく幼なじみと再会できたのだ。
 余計なことを考える必要はない。
 俺は千秋に問いかける。

「いや、何でもないよ。それよりも、せっかく俺の部屋まで来てくれたんだ。何か用があるんだろ?」

「うん! そろそろ起きる頃かなと思って、おはようのチューしに来たの!」

「チューって、お前な……」

 俺は苦笑する。
 夢の中とはいえ、なかなかに可愛いことを言ってくれるじゃないか。
 これは高校時代の夢だろ?
 俺と千秋は幼なじみとして仲が良かったが、さすがにそこまでの仲にはなっていなかった。
 せいぜい、手をつなぐぐらいだったはず……。
 もっと仲を深めるのは卒業後と考えていたが、その後いろいろとあって――

「んっ……」

 千秋が俺の首に両腕を回し、キスをしてきた。
 俺は思考を中断させられる。
 そして、また別の疑問が浮かんできた。

(いや、これ本当に夢か?)

 違和感がある。
 千秋がやけに積極的なのは、俺の願望が夢に表れた結果だろう。
 だが、このキスの気持ちよさは……。
 夢って、こんなにハッキリとしたものだっけ?

「んっ……はぁ……」

 千秋が唇を離す。
 彼女の顔は少し上気し、トロンとした表情になっていた。

「えへへ……。たかし君、好きだよ」

 千秋は幸せそうな笑みを浮かべている。
 あぁ……、可愛いな。
 俺はそう思う。
 どうして、転移前の俺は千秋を幸せにしてあげられなかったのだろう?
 たとえチートの力がなくとも、1人の女を幸せにするぐらいなら何とかなったんじゃないか?

 後悔の念が押し寄せてくる。
 だが、今ここでそれを考えても仕方がない。
 過去は変えられない。

「たかし君……。お願いがあるの……」

「ん? どうした?」

 千秋が何かを言いたそうにしていた。
 俺は彼女の言葉を待つ。

「わたしを……助けて」

「助けてって……。どういう――っ!?」

 俺が聞き返そうとしたとき、俺の首に回されていた千秋の腕が外れた。
 俺は後ろに倒れ込む。
 そして、千秋が悲しげな表情で、俺を見下ろしていた。

「たかし君……。また会いたいよ……」

 そう口にすると、彼女は俺に背を向けた。

(ちょ、待てよ!)

 俺は起き上がろうとする。
 だが、身体が動かない。
 金縛りにあったように、俺の身体は硬直していた。

(くそっ!)

 俺は必死にもがく。
 かろうじて動いた右手が、千秋のセーラー服の裾を掴んだ。
 ……ように思えたのだが、彼女は止まらない。

(なんでだよ……)

 俺は何もできないまま、その場で呆然とする。
 だが、次第に視界はぼやけていった。

(待ってくれ! 千秋!!)

 俺の心の叫びもむなしく、視界はそこで暗転したのだった。

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