１１９８話　ティーナへの加護（小）付与

「ティーナ……。俺の愛しい女よ……」

「ピピッ……。マスター……」

　俺はティーナを抱きしめながら、彼女の耳元で囁く。
　ステータス画面を見ていると、加護（小）が無事に付与されたことが分かる。

レベル？、ティーナ繝?ぅ繝ｼ繝
種族：繝上?繝輔い繝ｳ繝峨繧､繝
身分：豬∵ｰ
役割：使用人
職業：蜿､莉｣繧｢繝ｳ繝峨繧､繝
ランク：ーー

ＨＰ：？？？
ＭＰ：？？？
腕力：高め
脚力：？？？
体力：？？？
器用：？？？
魔力：無し

残りスキルポイント：？？？
スキル：
スキャン術レベル３（２＋１）
蜿､莉｣遨ｺ髢馴ｭ疲ｳレベル３（２＋１）
？？

（文字化けだらけだな……。ここまで凄いのは初めてだ）

　転移者フレンダや聖女リッカにも、文字化け付きで表示されている項目はあった。
　しかしそれぞれ、１つのスキルだけである。
　フレンダは「繝ｦ繝九繧ｯ繧ｹ繧ｭ繝ｫ」というスキル。
　リッカは「逾晉ｦ丈ｻ倅ｸ」というスキルだった。
　今回のティーナは、名前、種族、身分、職業などにも文字化けが及んでいる。

（いや、妙なところはもう１つある。ティーナのスキル『蜿､莉｣遨ｺ髢馴ｭ疲ｳ』にレベルが表示されていることだ）

　フレンダとリッカの文字化けスキルに、レベルの表示はなかった。
　まぁ文字化けしているぐらいなのでそれも込みでバグとも考えられるが……。
　レベル表示の有無に意味を見出すとすれば、フレンダとリッカの該当スキルにはレベルの概念がない可能性がある。
　俺の『ステータス操作』『スキルリセット』『加護付与』『異世界言語』にもレベルの概念はないしな。
　フレンダとリッカの文字化けスキルは、特別なユニークスキルか何かである可能性が高いだろう。

　そう考えると、ティーナの『蜿､莉｣遨ｺ髢馴ｭ疲ｳ』に対しては特に身構える必要もないか。
　文字化け表示はされているが、レベルの概念があるためユニークスキルではなさそうである。
　彼女が古代アンドロイドであることを合わせて考えれば、今では失われた古代スキルか何かなのかもしれない。

　俺はそんなことを考える。
　すると、ティーナがおずおずと声を上げた。

「ピピッ……。マスター、１つ報告があります」

「ん？　どうした？」

「当機のエラーが……未解消のようです」

「なに？」

　エラーが未解消。
　ステータス画面に文字化けがあることと、無関係ではないだろう。
　詳しく聞かなければ……。

「胸のあたりがドキドキします。当機の疑似心臓にエラーが発生中です……」

　ティーナが呟く。
　彼女は頬を紅く染めていた。

「エラーの解消はできなかったのか？　それはマズイ――」

「……いえ。ただ、不思議とこのエラーが心地よいのです。これは一体……？　当機には理解不能です……」

「ふむ……」

　エラーは未解消だが、そのエラーに不快感はないらしい。
　これは、あれか。
　人工知能が人間と触れ合うことで、新たな感情を得たということか。

「おそらくだが、問題あるまい。そのエラーはティーナにとって、新たな領域を切り開いていく良い意味での違和感だろう」

　古代アンドロイドのティーナは、いろいろと未知の存在だ。
　エラーの末、例えば大爆発を起こす可能性もゼロではないかもしれない。
　そうなれば、ティーナ本人や俺だけでなく、ミリオンズの面々も危険に晒されることになる。
　なにせ、今は隠密小型船で潜水中だからだ。

　しかし、俺の見立てでは爆発などのリスクは小さい。
　俺の加護付与スキルに関わっている『権限者』が、加護（小）の付与を最終的には認可し、そして新たなミッションなどを提示しなかったことが理由だ。

　推測だが、この『権限者』は加護付与スキルやミッションを通じて俺に何かをさせたがっている。
　俺や仲間たちが死亡することを良しとしないはずだ。
　ティーナの爆発の危険が差し迫っているのなら、例えば『古代アンドロイドのティーナを廃棄せよ』などというミッションが下されていた可能性が高い。

　だが実際には、そうしたミッションはなかった。
　ならば、俺たちは特に危険な状態ではない。
　俺はそう判断した。

「ピピッ……。良い意味ですか？　しかし……」

　ティーナが首を傾げる。
　彼女は少し悩んでいる様子だ。
　俺はティーナに言う。

「大丈夫だ。それはおそらく、感情の獲得による違和感だ」

「ピピッ……。当機は感情を獲得している……？」

　ティーナは驚いているようだ。
　まぁ、俺も驚いたけどな。

「そうさ。それは人間らしい感情だ。ティーナは『人間』になったんだよ」

「『人間』……？」

　ティーナはピンと来ていないようだ。
　まぁ、いきなり『人間になった』と言われても困るよな。

「ティーナは嫌か？　人間になるのは？」

「ピピッ！　そのようなことはありません。マスターと同じ種族になれるのは至上の喜びです！」

　ティーナは即答した。
　その言葉通り、彼女は喜んでいるように見える。

「ピピッ……。しかし、この感情は少し厄介かもしれません……」

「どういうことだ？」

　俺は尋ねた。
　ティーナは真剣な声色で答える。

「マスターと離れたくない……。そう強く感じます。マスターにずっと触れていたい……離れたくない……」

「ティーナ……」

　俺はティーナにキスをした。
　彼女の柔らかい唇を奪う。
　こうして、俺たちはしばらくの間、イチャイチャと愛を確かめ合ったのだった。