【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1197話 権限者

 古代アンドロイドのティーナにエラーが発生している。
 このまま放置はできない。
 対応策を必死に探していたところ、俺は彼女が加護付与スキルの対象者になっていることを発見した。
 今までは対象者にすらなっていなかったのだが、今は『ティーナ繝?ぅ繝シ繝』と文字化け付きで表示されている。

「どういうことなんだろう?」

「ピピッ……。マスター、申し訳ありません。当機も状況がよく飲み込めません」

「まぁ、無理もないよな……」

 俺もそうだ。
 全てが未知の事柄である。
 当初は加護付与スキルの対象ですらなかった者が途中から対象者となった上、その名前が文字化け付きで表示されるとは……。

「ピピッ……。マスターのその御力の詳細は解析できておりませんが、偉大であることは分かります」

「ん? まぁそうだな。とても便利で強力な力だよ。これがあるから俺は活躍できている」

「しかし、当機のエラーがその御力に悪影響を与える可能性があります。当機はそれを強く懸念します……」

 ティーナが不安そうな声を出す。
 彼女の表情が曇っていた。
 その様子を見て、俺は悟る。
 彼女は自身がエラーを抱えている状態にもかかわらず、俺の方を心配してくれているのだ。

(確かに、俺の加護付与スキルにも異変が生じている……)

 俺はステータス画面を見つめる。
 そこには未だに『ティーナ繝?ぅ繝シ繝』と文字化け付きで表示されており、何が原因なのかは分からなかった。

(だが、これはエラー中のティーナの状態を表しているだけかもしれない)

 パソコンもしくはゲーム機の故障を想像してみよう。
 本体とディスプレイ(画面)が別になっているタイプだ。
 ディスプレイに妙な表示があった場合、問題箇所の候補は2つある。
 本体か、ディスプレイかだ。
 本体が故障している場合、ディスプレイに問題がなくとも妙な表示が勝手に出ることはあるだろう。
 もちろん、逆のパターンも然りだ。

 今回の場合、『本体=古代アンドロイドのティーナ』で、『ディスプレイ=ティーナの状態を表示する加護付与スキルのステータス画面』というように見なすことが可能だろう。
 そう考えれば、俺の加護付与スキル自体に悪影響はないとも考えられる。

「ピピッ……。マスターの偉大な御力に、万が一のことがあってはなりません。当機の廃棄処分を再提案します……」

「いやいや! それは違うぞ、ティーナ!」

 俺はティーナに反論する。
 彼女を廃棄処分だなんて冗談じゃない。

「さっきも言ったはずだ。お前は俺の愛する女だぞ。絶対に見捨てたりしない!」

「ピピッ……。マスター……」

 ティーナが顔を真っ赤にする。
 俺は彼女を抱き寄せ、その頭を撫でてやった。
 視界の隅にあるステータス画面が点滅している。

『ティーナ繝?ぅ繝シ繝に加護(小)を付与しますか? はい/いいえ』

 その文字を見て、俺は迷うことなく『はい』を選択した。
 だが――

『加護(小)付与の処理について、権限者が中止を要求しました。付与処理を中止します』

 視界の端に表示された文字が、俺にそう告げてきた。
 おいおい……。
 マジかよ。
 ティーナの不安が的中したのか?
 加護付与スキルにまでエラーが出ているじゃねぇか。
 いや、正確にはエラーではなくて権限者による中止か……。
 権限者って誰だよ?

「ふざけやがって……」

「ピピッ……。ま、マスター……?」

 俺が発した怒気の籠もった声を聞いて、ティーナがビクッとした。
 その反応は、完全に人間のそれである。

「すまん……。驚かせたな」

 俺はティーナに謝る。
 彼女は何も悪くないのに、つい強い口調で怒ってしまった。
 怒りの矛先は彼女じゃない。
 この『権限者』とやらだ。

「なぜティーナへの加護(小)の付与を中止させた? 彼女は人間じゃないって言いたいのか!? このクソ権限者がぁ!! 俺は許さないぞ!!!」

『…………』

 画面の向こうから誰かが見ているのだろうか?
 文字としては何も表示されていないが、画面の点滅具合からは動揺しているようにも見えた。

「彼女は俺の愛する女だ! 人間だ!! いつか俺の子を産む大切な存在なんだ!! 俺の愛するティーナを差別する行為は絶対に許さない!!!」

『…………』

「俺の未来はティーナと共にある!! 誰が何と言おうとも、だ!!!」

 俺はステータス画面に向かって啖呵を切る。
 俺の言葉を聞いたティーナが、嬉しそうな顔になった。
 そして――

『……加護(小)付与の処理を再開。付与完了しました』

 そう表示が切り替わったのだった。

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