【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1173話 ゆーちゃん

 隠密小型船の積載量がオーバーしている疑惑が持ち上がった。
 そして、アイリス、ユナ、リーゼロッテの反応を見た結果、彼女たち3人が何かを隠していると判断する。

「アイリスたちを責めているわけじゃないんだ。ただ、真実を教えてほしい」

「う、うん……」

 俺が優しく言うと、アイリスがうなずく。
 清廉潔白な彼女が後ろめたい行動をするのは珍しい。

「詳しく説明してくれ。11人以外の存在を連れてきたって?」

 俺はアイリスたちにそう促す。
 すると、アイリスが言いにくそうにしながら話し始める。

「えーっと……。実は、この子なんだけど……」

「うん?」

 俺はアイリスの指差す方向を見る。
 そこには、何も見えないし感じない。
 いや、待て。
 何かおぼろげながら見えてきたぞ。

「やっほー、おにーさん。一応は初めましてかな~?」

「お、お前は……!」

 俺は驚愕する。
 俺の視線の先……その空中には、1人の少女が立っていた。
 正確には、少女のように見える何かだが……。

「もしかして、屋敷の?」

「うん! お屋敷の幽霊! ゆーちゃんだよ!!」

 少女――ラーグにあるハイブリッジ邸に住む幽霊のゆーちゃんは、元気よくそう言う。
 俺と彼女は初対面ではない。
 初めて屋敷を訪れたときからその存在は知覚していた。
 もっとも、当時の彼女は薄っすらとしか実体化できず、意思疎通もできなかったのだが……。

 その後、屋敷に住む者たちの魔力を少しずつ吸い、実体化が進んでいった。
 徐々に意思疎通らしきものも可能となった。
 アイリスがアイリーンを出産した際には、彼女がアイリーンの魂を戻して蘇生のきっかけをつくってくれたりもしたな。
 俺、アイリス、アイリーンの恩人だ。

「どうして、ゆーちゃんがここに……」

 俺は呟く。
 すると、アイリスが答える。

「ごめんね、タカシ。この子を連れてきたのはボクなの。その、どうしてもついて行くって聞かなくて……」

「そうなのか?」

 俺はアイリスに聞き返す。
 すると、ゆーちゃんはうんうんと頷いた。

「うん! おかげさまで、かなり強く実体化できるようになったからね~! それに、おねーさんに取り憑いた今、土地への縛りがなくなったから! もうどこでも行けるし、旅をしたくなったんだ!!」

 ゆーちゃんがそう言う。
 土地への縛り?
 ああ、要するに地縛霊のようなものだったのか。
 アイリスに取り憑いたことで、その縛りが一時的に解除されたような状態になっているらしい。

 ゆーちゃんとラーグ屋敷には、何か因縁のようなものがあったのかもしれないな。
 そのあたりも調査したいところだ。
 ……が、今は既にヤマト連邦に向かって移動中だ。
 彼女の過去については、また今度でいいだろう。

「そうだったのか。ふむ……」

「ごめんね? 勝手に連れてきちゃって……」

「ごめんなさい、おにーさん」

 アイリスとゆーちゃんが揃って頭を下げる。

「いや、いいんだ。アイリスもゆーちゃんも謝らないでくれ」

 俺は慌ててそう言う。
 確かに少し驚いたが、別にそこまで問題視するようなことではない。

「ゆーちゃんの体重って、どれくらいなんだ? 人間よりも重いのか?」

 俺は確認のためにそう聞く。
 すると、ゆーちゃんは首を横に振る。

「ううん! そんなことはないよ! むしろ軽いほう!! なんてったって、幽体だからね!」

 ゆーちゃんは、そう答える。
 どうやら、ゆーちゃん自身は体重が軽いらしい。
 まあ、実体がないから当然と言えば当然だが……。
 完全なゼロではないようだ。
 このあたり、この世界ならではの物理法則なのかもしれない。

「それなら、潜水深度に誤差が出ていることへの影響は微々たるものだと思う。ゆーちゃんが同行するぐらいなら問題ない。霊体なら場所も圧迫しないしな」

「タカシ……」

 俺の言葉に、アイリスが安堵する。
 元々の船全体の重量はどれくらいだったのだろう?
 俺たち人間が11人で……600~700キロぐらいか?
 アイテムルームやアイテムバッグの外に出している物資が300~400キロ。
 隠密小型船自体の重量が1万キロってところかな?
 魔導機構で補強しているから、地球における同サイズ船と比べてさほどの重量はなかったはずだ。

「一応言っておくが、霊体化したまま壁をすり抜けないようにな。周囲は広大な海なんだからさ」

 ゆーちゃんは、屋敷の壁をすり抜けていたことがある。
 この隠密小型船でも同じだろう。
 便利な能力だが、扱い方を間違えるとはぐれて大変なことになる。

「その点は心配ないよ~! おねーさんに憑依しているからね! 常に半霊化しているから、意識しないとすり抜けられないよ。それに、憑依対象のおねーさんの場所はいつでも把握できるから!」

「へぇ、便利なものだなぁ」

 俺は素直に感心する。
 それなら安心だ。
 アイリスがゆーちゃんを連れてきても、特に問題はない。
 次は……ユナとリーゼロッテから詳しい話を聞いてみることにしよう。

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