【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1157話 とりあえず一件落着

 俺はエレナの怒りを鎮めた。
 次は、ワワワワンの男や犬たちの怒りを鎮める必要がある。

(さて、どうやって彼らを宥めるかな……)

 彼らが改心していないのであれば、暴力で解決する手もあった。
 しかし、実際には彼らは更生中であり改心の道を辿っている。
 俺が少しばかり勘違いし、不幸な行き違いがあっただけだ。
 自分の過ちを認めず『正義は我にあり!』と叫びながら暴力を振るうのは、さすがに人としてマズイだろう。

(となると……)

 俺はまず、犬たちをチラリと見た。
 俺に蹴り飛ばされた個体を筆頭に、彼らは俺に警戒心を向けている。

「ふっふっふ! 可愛いワンちゃんたちだな。ほら、こっちに来い」

「わうっ!? わん! ぐるるる……!!」

 俺は犬たちに手招きをする。
 だが、犬たちは警戒しているようで近寄ってこない。

「怖がる必要はないぞ? ほら、よしよーし」

「わうっ!? くーん……」

 俺は先頭にいた犬――俺が蹴り飛ばした個体――の頭を撫でた。
 最初は警戒している様子だったが、しばらくすると目を細めて気持ちよさそうにする。

「よしよし……。お前はお利口さんだな」

 俺は犬の頭を優しく撫でてやった。
 すると、他の犬たちも寄ってくる。

「わふっ! わふっ!!」

「くーん。くぅん……」

 犬たちが甘えてくる。
 俺が頭を撫でると、嬉しそうに尻尾を振った。

(ユナにテイムの指導を受けておいてよかった……)

 チート能力『ステータス操作』で取得できるスキルに、テイム術というものがある。
 このスキルは魔物や動物を仲間にする能力だ。

 ユナのテイム術はレベル5に達している。
 俺は未習得でレベル0なのだが、教えてもらったことで多少の心得はある。
 言ってみれば、レベル0.5といったところだろうか。
 そう遠くない内にスキルポイントを消費しないまま習得できそうな感じもする。

「よーし、よし。可愛いワンちゃんたちよ。お前らは俺が気に入ったみたいだなぁ……。だったら、俺の仲間にならないか?」

「わう……? わん!」

「わふっ! わふふっ!!」

 俺の問いかけに、犬たちは元気よく返事をしてくれた。
 これで俺に仲間が増え――

「おいおい! ちょっと待てや!!」

「俺たちの仲間を勝手に引き抜こうとするんじゃねぇよ!!」

 ――なかった。
 俺が犬たちと戯れていると、ワワワワンの男たちが抗議してきたのだ。
 そうか。
 この犬は、ワワワワンが飼っている犬だったな。
 俺が勝手にもらうのはマズそうだ。

「冗談ですよ。……しかし、なかなか可愛いワンちゃんたちですね。メロメロになりました」

「お、おう。そうだろう、そうだろう!」

「お前、なかなか見どころがあるじゃねぇか!!」

 俺の言葉に、ワワワワンの男たちは相好を崩した。
 ダダダ団のチンピラだった頃の面影はあまり残っていない。
 日本で言えば、犬好きの元ヤンといったところだろうか。

「この目がいいですね。飼い主に愛情を注がれているのが分かります。それに、毛並みも悪くない」

「へへっ! そりゃあな。実は、ダダダ団だった頃からエサとかはやっていたんだよ。ブラッシングを始めたのは最近だけどな」

 どうやら、社会奉仕活動に役立てるためだけに犬を連れ回しているわけではないらしい。
 ちゃんと愛情を持って接しているようだ。
 誤解してしまって少し申し訳ない。
 お詫びのものを渡しておこう。

「少ないですが、どうぞこれを……。ワンちゃんたちに美味しいエサでも買ってあげてください。引き続きの社会奉仕活動を応援していますよ」

「お? おお! 任せときな!!」

「よし、行くぞ! お前ら!!」

 俺の言葉に気をよくしたワワワワンの男たちが去って行った。
 これで一件落着だ。
 あとは……。

「エレナ」

「な、何よ……?」

 俺はエレナに向き直る。
 彼女はまだ動揺しているようで、頬が赤いままである。

「お前の相手をしてやりたいところだが、諸用があって無理なんだ。前にも言った通り、リンドウの温泉旅館でゆっくりしておけ。いずれ可愛がってやるから」

「あ……え……? ちょ、ちょっと待ってよ!?」

 エレナは俺の言葉に反応するが、俺は立ち止まらない。
 予想以上に仲を深められつつあるが、これ以上踏み込むとヤマト連邦の任務に支障が出る。
 気持ちを切り替えろ。
 俺は俺で、やるべきことがあるのだから。

 エレナを振り切り、俺は『猫のゆりかご亭』を目指して歩く。
 そして、隠密小型船の完成を待つためオルフェスで平穏に過ごしていくのだった。

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