【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1151話 エリアヒール

 俺はゴブリンキングを一撃で倒した。

「いやぁ、すまんすまん。少しばかりピンチだったようだし、俺が倒してしまった。別にそれでも良かったんだよな?」

 俺はそう謝罪しつつ、確認する。
 直前にトミーから『タカシの旦那が出ると騒ぎになりやす。この魔物騒動の始末は俺に任せてくだせぇ』と言われていたのだ。
 パッと見た感じではそんなに強い魔物が見当たらなかったので、俺はその言葉に従った。
 だが、ゴブリンキングという思わぬ大物の存在に気づき、慌てて参戦を決めたのである。

「た、タカシの旦那! すげぇよっ! さすがです!!」

「ふふん。まさかゴブリンキングを一撃で倒すなんて……。それでこそ、私が見込んだ男ね!」

 トミーやユナが喜びの声をあげる。
 この様子だと、俺が倒しても別に問題はなかったらしい。
 他の住民たちも、喜びの声をあげている。
 だが、少々やりすぎてしまったようだ。

「うおおおぉっ! タカシ=ハイブリッジ男爵だ!!」

「キャーッ! こっちを見てくれたわよ!!」

「素敵ー! 抱いてー!!」

「ユナ様ーっ!! タカシ様ーっ!!!」

 これはマズイ。
 住民たちが騒ぎ出した。
 このままでは、収拾がつかない。
 早々に撤収しないと。
 だが、その前に1つだけやるべきことがある。

「トミー、そちらの女性は?」

 俺はトミーに声をかける。
 彼は勝利の余韻もそこそこに、今度は青い顔をして女性に駆け寄っていた。

「へ、へい……。俺のパーティメンバーでさぁ。ゴブリンとの乱戦で、不覚を取ったらしく……」

「ほう……?」

 言われてみれば、見覚えのある女性だ。
 彼女はフレンダの元パーティメンバーだな。

 フレンダはBランク冒険者だ。
 以前は他に2人のCランク女性冒険者とパーティを組んでいた。
 戦闘だけならソロが向いているのだが、地球かれの転移者でこの世界の常識に疎いため、彼女たちにサポートしてもらっていたらしい。

 そんな中、彼女たちはラーグやリンドウに活動拠点を固定した。
 見知らぬ土地を訪れる機会が激減し、パーティを組む意義は薄くなった。
 そのため、元パーティメンバーの2人はそれぞれが別のパーティに移籍した。
 1人はアラン率いる『紅蓮の刃』に、もう1人はトミー率いる『緑の嵐』に加入したのである。

「Cランクの彼女が、ゴブリンに不覚を取ったと? 妙だな……」

 魔物にも強さの各というものがある。
 ゴブリンは大したことがない。
 Cランク冒険者なら、少しばかり油断していても深手を負うことはないように思えた。

「い、いえ。実は諸事情で戦える状態じゃなかったんでさぁ。なのにこいつは、無理をして……」

「ふむ」

 諸事情というと……。
 女性特有のアレか?
 いや、トミーが把握しているあたり、また別の事情でもあるのか?
 ……まぁ、そこら辺は俺の立ち入るところではないか。

「タカシの旦那! こいつは住民を守るために無茶したんです! どうか――」

 頭を下げるトミー。
 それを、当の女性冒険者が制止する。

「トミー……! やめてよ」

「でも、お前……」

「私が勝手にしたことよ……? 領主様の手を煩わせるほどじゃないわ……」

 彼女は、ケガを負った右足の患部を押さえながら言う。
 命に別状はないようだが、軽いケガでもなさそうだ。

「ふむ……。ちょうど良い」

「旦那?」

「彼女、治療するぞ? ――【エリアヒール】」

 俺は広範囲に治療魔法をかける。
 その効果は、ケガをしている彼女の足を瞬時に癒やしていった。

「えっ!?」

 トミーが驚く。
 ユナも驚いている様子だが、口を挟まない。
 その治療効果は、周囲の住民にも及ぶ。

「なっ……!? 腕の擦り傷が……治ってやがる!」

「すげえ! これがハイブリッジ男爵様の実力か!!」

「タカシ様、ありがとうっ!」

「さすが、ハイブリッジ男爵領の英雄だぜ!」

「うおぉぉっ! タカシ様、最高だぁっ!!」

 住民たちは歓喜する。
 そんななか、トミーが俺に向かって頭を下げてくる。

「すいやせん。俺のツレのために、迷惑をかけちまって……」

「いやいや。これぐらい構わんよ。治って良かったじゃないか」

 俺はそう答える。
 実際、大したことはしていない。
 中級の治療魔法を発動しただけだ。
 トミーがお願いしなくても、俺は治療したと思う。

「ふふん。さすがね? やっぱりタカシは優しいわ。領主になって長いけど、決して驕らないのね」

 ユナが言う。
 言われてみれば、配下とか一般住民のために無償で魔法を行使する領主は珍しいのかもしれない。
 さっきの女性が少し遠慮気味だったのも、そのあたりが理由か。

「ユナも、戦ってくれてありがとう。でも、見せ場を奪ってしまったかな?」

「そんなことないわよ。私は手加減がまだ苦手だもの。下手をしたら、街が消し飛んでいたもしれないわ」

 確かにそれはそうか。
 ユナの火魔法は、手加減のできるレベルじゃない。
 剣術を使える俺が参戦して、やはり正解だ。

「タカシの旦那、それにユナの姉御。本当に助かりやした。ありがとうございやす!」

 トミーはもう一度、俺たちに礼を言ってきた。
 俺とユナは気にしないで良いと伝えるが、彼はそのまま頭を下げ続けるのであった。

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