【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1150話 つい倒してしまったけど【北部side】

 ゴブリンの群れに襲われているリンドウ北部。
 たまたまリンドウに居合わせたユナとトミーが駆けつけた。
 2人の実力――特にユナの火魔法があれば、ゴブリンキングだって大きな脅威ではない。
 しかし、それは周囲の被害を考えない場合の話だ。

「ふふん。のんきなものね……。私が来たことで安心しきっているのは、嬉しくもあり、微妙な気分でもあるわ」

 ユナが呟く。
 彼女の周囲には、街の住民たちがいた。
 彼らは逃げようとしていない。
 Bランク冒険者にして『魔弾』の二つ名を持つユナが登場したことで、安心しきっているのだ。

「ユナ様の火魔法では、街に延焼するかもしれやせん。住民も熱狂しちまってますし、ここは俺の風魔法でバランスを崩させつつ――あっ!? え……?」

 トミーが突然、狼狽した様子を見せる。
 彼が視線の端で捉えたのは、ケガをして倒れている女性の姿だった。
 その女性は、少し前に『緑の嵐』に加入した新メンバーだ。
 トミーが慌てて駆け寄る。

「お前、どうしてここに!? 休憩所で休んでいたはずだろ!?」

「トミー……あんただって同じじゃない……。街に魔物がなだれ込んできたなら、冒険者として加勢するのが当然でしょ……」

「だがよ! お前は今、まともに戦えるような状態じゃ……」

 彼女はフレンダの元パーティメンバーであり、Cランク冒険者だ。
 実力としてはトミーと同格。
 だが、諸事情によりその戦闘能力は一時的に落ちていた。
 結果として、ゴブリンの群れを相手にした乱戦の中、手痛いダメージを追ってしまったようである。

「くっ……。ゴブリンキング……! お前だけは絶対に許さない!! お前だけは……絶対に!!!」

 トミーはゴブリンキングに向き直る。
 そして、彼の体から闘気が溢れ出した。

「くたばりやがれっ!!」

 トミーが放つ渾身の一撃。
 そこらの魔物なら、一撃で屠れるほどの一撃だ。

「ゴギャアアアァッ!」

 しかしゴブリンキングは違った。
 その一撃は致命傷にはなっていない。
 それどころか――

「ちっ! やべぇな……」

「グルアアァッ!!」

 ゴブリンキングが反撃に移ろうとしている。
 大切な者を傷つけられ暴走状態だったトミーは、防御が疎かになっていた。
 そのままでは攻撃をくらってしまうところだが――

「ふふん。しっかりしなさいよ。――【ファイアーウォール】」

「ゴブゥッ!?」

 ゴブリンキングは、ユナが発動した火の壁により足止めされる。
 その火力は驚異的だ。
 まともに当たれば、ゴブリンキングにも致命傷を与えるだろう。

 しかし、さすがに一瞬で灰にできるほどではない。
 巨体が燃え盛っている状態で最後のあがきをされたら、街に被害が出るリスクがある。
 そのため、ユナはあくまで妨害までにとどめた。

「ギャギャッ!! グルッグッグ!!!」

「いっちょ前に、状況を理解しているようね? あんたの推測通り、私は下手に火魔法で攻撃できないわ。街も大事だし」

 ユナの火魔法はリンドウの街全体を燃やしかねない。
 それほどまでにユナの火魔法の威力は高いのだ。
 もちろん、気をつければ被害を最小限にとどめることはできるのだが……。
 ゴブリンキングぐらいの魔物が相手となると、着弾後の最後のあがきが計算しづらいのも事実だ。
 少なくとも、建物の1つや2つは燃えてしまう可能性が高い。

「グルルルォオオオオッ!!」

「ふふん。でもね? あんたの命運が、それで復活したわけじゃないのよ?」

「グギャッ!? ――ギャオォッ!!??」

 ゴブリンキングの首が飛ぶ。
 ユナではない。
 彼女も剣は使えるが、メインは火魔法である。
 トミーでもない。
 彼は武闘をメインに、風魔法でサポートしつつ戦うスタイルだ。

 ならば、誰がゴブリンキングを倒したのか?
 それは――

「おっと……。つい倒してしまったけど、別に良かったんだよな? ユナ、それにトミー」

 タカシだった。
 彼の持つ剣が、ゴブリンキングの首を一撃で切り落としていたのであった。

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