【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1147話 青い空、赤いパンツ

 俺は建設中のリンドウ図書館を後にし、トリスタやリンのスキル強化も終えた。
 これでもう、ラーグやリンドウで済ませておく用事は9割ほど終わったと言っていいだろう。
 転移魔法陣を発動させるためのクールタイムも、あと1時間ぐらい待てば十分だ。

 俺がヤマト連邦に連れて行くメンバーは、俺を除いて10人。
 ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ。
 マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華、レインである。

 この内、モニカとニムは既にオルフェスで待機中。
 ミティ、アイリス、リーゼロッテ、レインとはラーグの屋敷で再会済み。
 マリアとサリエは治療院で元気に働いていた。
 蓮華とは、つい先ほどリンドウ図書館で会話した。

 残るはユナだ。
 彼女の現況を確認してからラーグの屋敷に戻れば、転移魔法陣のクールタイムがちょうどいい感じになるだろう。

「さて……。ユナはどこにいるんだ?」

 ミティやアイリスの話だと、『蓮華とユナは西の森方面に出かけていった』ということしか分からなかったんだよな。
 実際、蓮華とユナは途中までいっしょに行動していたらしい。
 そして、リンドウ図書館で別れたと。

「たぶんだが、リンドウの街の視察や観光かな?」

 俺が領主となってからは、ミリオンズが冒険者パーティとして活動することはやや少なくなっている。
 そんな中、普段の過ごし方というものには個性が出る。
 ユナはやや活発で自由人。
 屋敷の庭に植えている木の上で昼寝をしたり、街の住民に無料で弓の指導をしたり、西の森で気ままな狩りをしたり、リンドウやその他の町村をぶらぶらと散策したり……。
 基本的に自由だが、意外と面倒見も良い。
 放っておいても、変なことはしないタイプだ。

「ふーむ。リンドウも順調に栄えて、住民も増えているな……」

 俺はリンドウを歩きながら、独り言をつぶやく。
 聖女リッカと温泉旅館に泊まったことがあったが、その頃よりも一回り発展しているように見える。

「立派な街並みだ。雲ひとつない快晴も相まって、実に爽やかだ」

 俺は空を見上げる。
 爽やかな風が気持ちいい。

「青い空、そして赤い……ん? 赤い……パンツ?」

 俺が空を見上げると、ちょうど赤いパンツが視界に入ってきた。
 ……これは!?
 このパンツは!!

「ユナ!?」

 俺は思わず叫ぶ。
 スカートをたなびかせながら空を駆けるのは、ユナだった。
 彼女は赤狼族としての身軽さを活かし、屋根から屋根へと飛び移っていく。

「おーい! ユナー!!」

 俺はユナを呼ぶが、反応はない。
 彼女は焦った様子で、ただ駆けていく。

「何があった……?」

 ユナは強い。
 純粋な1対1なら、ミティ、アイリス、モニカ、ニムあたりには少し劣るかもしれないが……。
 ユナにはファイアードラゴンのドラちゃんがいる。
 その合わせ技の威力は凄まじく、それを込みで考えればミリオンズでも最強クラスだ。
 そんな彼女が焦っているというのは気になる。
 何か厄介な事態でも起きたのだろうか?

「これは、追いかけるしかないか。――ぶへっ!?」

 俺はユナの後を追うため、走り出そうとする。
 しかしその瞬間、後ろから誰かにぶつかられた。

「すいやせん! 急いでましてね……って、タカシの旦那!?」

「お前は……トミーじゃないか!」

「へい!」

 振り返ると、そこにはCランク冒険者のトミーがいた。
 彼とはラスターレイン伯爵領のルクアージュからの付き合いだ。
 その場で俺が声を掛けた結果、ラーグに活動拠点を移してくれた。
 そして今では、ハイブリッジ男爵家の御用達冒険者になっている。

「タカシの旦那にぶつかっちまうなんて、すいやせん。急いでるもんで……」

「いや、それはいいが……。そんなに慌ててどうしたんだ?」

「走りながらでいいですかい? ――実は、リンドウの北部から魔物の群れがなだれ込んで来たらしいんすよ!!」

「な、なんだって!?」

 魔物の群れが街中に入ってくる……。
 なかなかのピンチだ。
 かつてはラーグの街でも似たようなことがあり、モニカやその父ダリウスが営むラビット亭が大打撃を受けた。
 リンドウは急速に発展しているが、その反面で外縁部の防衛は薄い。
 魔物がなだれ込んでくるリスクは常にある。

「分かった、俺も行くぜ!!」

 問題は、迅速に対応できるかどうかだ。
 たまたま居合わせたユナやトミーが駆けつけようとしてくれているのは心強い。
 それに、この街にはその他にも戦力がいるはずだ。

「少し急ごう! ――【レビテーション】!!」

「お、おおっ!? こりゃスゲェっすね!!」

 俺は重力魔法でトミーと共に浮く。
 こうした方が最短距離で行けるし、単純な速度も上がる。
 俺はトミーと共に、現場へ急行するのだった。

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