【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1105話 その正体は…

 俺の正体を知った、タル少女と魔導技師ムウ。
 2人は大きな声で叫んだ後――

「えっ!? あぁっ!?」

「うわっ!?」

 驚きすぎて、尻もちをついてしまう。
 いや、さすがにオーバーリアクションすぎるだろ。

「2人とも、落ち着いてくれ」

「ハイブリッジ卿がこう仰せです! さぁ、命が惜しければ早く言う通りに!!」

 ゴードン……。
 来てくれてありがたいと思ったが、逆効果じゃねぇか。
 俺に対して粗相がないようにしてくれているのは分かる。
 しかし、尻もちをついたぐらいで命がどうこうは言いすぎだろ。

「あ、あわわ……!」

「す、すみませ……!」

 タル少女とムウは、慌てて立ち上がろうとする。
 だが、上手く立てないらしい。

「そんなに緊張するな。俺は、確かにゴードンの言う通り貴族だ。しかし、元はただの平民だよ。普通にしてくれればいい」

「……」

「……」

 2人の表情は硬い。
 というか、こっちの話を聞いているのかすら分からない。
 ただただ、呆然と俺を見つめているだけだ。

(ふむ……。ま、無理もないよな)

 いきなり貴族のお偉いさんが目の前に現れたのだ。
 そりゃ驚くか。
 俺は少しばかり考え込む。

「……ゴードンは言った。『この方はハイブリッジ男爵様です! 怪しい方でもなければ、Dランク冒険者でもございません』とな。しかし、正確には少しだけ違う」

「え?」

「はい?」

 2人が首を傾げる。
 よしよし、やっと反応があったな。

「――ある時は、怪しげな集団『ダークガーデン』の首領『ナイトメア・ナイト』!」

 俺は超速で黒の装束に着替える。
 そして、決めポーズをとった。

「またある時はDランク冒険者の『タケシ』!!」

 次に、俺は素早く粗末な冒険者の姿に変わる。
 そして、鉄剣を構えてみせた。

「その正体は……『タカシ=ハイブリッジ男爵』! サザリアナ王国の未来を守る者! 俺はお前たちの味方だ!!」

 決まった。
 我ながら素晴らしい出来栄えだ。
 これなら、彼女たちの警戒心を解くことができるだろう。

「「……」」

 タル少女とムウはポカーンとしている。
 あれ?
 ちょっとやりすぎたか?
 俺は不安になり、チラりとモニカとニムの方を見る。
 すると、彼女たちはグッと親指を立てていた。

「かっこいいよ、タカシ!」

「決まってます、タカシさんっ!」

「ふっ……照れるぜ」

 俺は少し赤面してしまう。
 彼女たちとの付き合いも長いが、褒められてると照れる。
 俺は満足感と共に、タル少女やムウに話しかける。

「これで分かっただろ? 俺は貴族だ。それも、サザリアナ王国の中では結構な地位にいる。しかし同時に、いろんな顔を使い分けて世のため人のために動いているのさ。つまり、君たちに危害を加えるようなことは絶対にしないということだ」

「は、はい……」

「分かりました……」

 タル少女とムウは、まだ少し放心状態だ。
 俺は話を続ける。

「ええっと……ムウはいいとして、そっちの君はどうしてここにいるんだ? 『ダダダ団』がいなくなったこの街で平和に暮らしていくのだと思っていたが……」

「あっ! はい! 実は私……少し前から、ムウさんの魔導工房でたまにお手伝いをしていまして……」

「ほう?」

「行方不明になったムウさんを探して、街中を歩いていたんですよ。そんな時、たまたま『ダダダ団』に目を付けられて、冒険者の人たちに助けてもらって、タルの中に隠れて……」

「あー、なるほどな」

 タル少女とムウは、元々知り合いだったというわけか。
 意外なところで繋がっていたものだな。

「ところで、君の名前は?」

「あっ! すみません! 私はメルルです! 魔導技師見習いです! よろしくお願いします!!」

「メルルか。こちらこそ、よろしく頼む」

 俺は彼女と握手を交わす。
 タル少女はメルルという名前なのか。
 改めて覚えておこう。

「ムウ、メルル。一応言っておくが、俺のことは口外しないようにな。この造船所内は構わないが」

「は、はいっ! 元より、そういう契約を交わしていますのでっ!」

「完成するまで泊まり込みで、完成後もしばらくは出てはいけないことになっています!」

「そうか。ならば安心だな」

「「はい!」」

 彼女たちの造った船に、俺たち『ミリオンズ』は乗り込むことになる。
 しっかりとした船を期待したいところだ。

「あ、そう言えば……」

「ん? どうした? メルル」

「お借りしていたものをお返ししますね。ありがとうございました」

 彼女は懐から何かを取り出す。
 それは、俺が以前渡していた――

「えっ? パンティー?」

「た、タカシさん……? どういうことですか?」

 モニカとニムが怖い。
 目が笑ってないぞ。

「ち、違う! 誤解だ! メルルが『ダダダ団』の件で、下着がなくて困っていたから俺が貸してやったんだよ!!」

「へぇ……」

「そうですか……」

 俺は必死に弁明する。
 嘘は言っていないぞ。
 メルルが『ダダダ団』から逃れてタルに隠れ、彼女を不審者と勘違いした俺が火魔法でパンツごと焼き払ったのだからな。
 この事故は『ダダダ団』の件と表現しても間違いではない。

「は、ハイブリッジ卿……?」

「えっと。タケシさん……いえ、ハイブリッジ様は変態さんだったんですね……」

 ゴードンやムウまでもが、ドン引きしている。
 ――その後、何とか誤解を解くことに成功した。
 隠密小型船の建造は、ゴードン、ムウ、メルル、特務隊の作業員たちに任せておけばいい。
 俺たちはしばらくは暇になりそうだ。

 その間、何をしようかな……。
 俺はそんなことを考えながら、街中へ戻っていくのだった。

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