【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1104話 この方は

 俺たちは秘密造船所を見学していた。
 そして、差し入れや治療魔法を使って、現場の士気を上げようと試みる。
 すると、そこに思わぬ人物が現れたのだ。

「ナイトメア・ナイトさん!」

「タケシさんっ!」

「「…………え?」」

 現れたのは、見覚えのある少女2人だった。
 2人とも、驚いた表情をしている。

(俺を『ナイトメア・ナイト』と呼んだのは……スラム街で出会った少女か)

 名前は知らない。
 確か……彼女は『ダダダ団』から隠れるために、タルの中に潜んでいたのだったな。
 それを怪しんだ俺は、彼女の体のすぐ近くを通るように剣を突き刺した。
 そして、彼女は漏らした。
 さらに俺は、オリジナルの火魔法『焼失』で非生物を焼き払った。
 結果、彼女は全裸の状態で俺の前に姿を表したのである。

(もしもの時のために、少女用のパンツを常備しておいてよかったな……)

 事実上、冤罪をふっかけてしまった俺。
 せめてものお詫びとして、全裸の彼女にパンツをプレゼントしたのだ。

(俺を『タケシさん』と呼んだのは……魔導技師ムウか)

 こちらは、つい今朝方に話したばかりの相手だ。
 ここで、時系列を整理しておこう。

 昨晩。
 俺たちは『ダダダ団』を壊滅させるために動き出した。
 タル少女と遭遇したのがこの時だ。
 俺たちの動きに少し遅れて、冒険者や衛兵隊も動きだし、『ダダダ団』は本格的に壊滅。

 早朝。
 頭領リオンを海上で撃破した俺は、海岸線へ流れ着く。
 エレナたち『三日月の舞』とアレコレ話したりラッキースケベを体験したりする。
 宿屋『猫のゆりかご亭』に帰り、サーニャちゃん、モニカ、ニムと再会する。
 魔導技師ムウが、『ダダダ団』の件で『Dランク冒険者タケシ』にお礼を言いに来る。

 昼過ぎ。
 俺は冒険者ギルドを訪れる。
 職員たちが慌ただしくする中、秘密裏に頭領リオンを引き渡す。

 夕方。
 俺たちは秘密造船所を訪れ、現在の隠密小型船の完成状況を確認する。
 そして今、タル少女や魔導技師ムウと遭遇したというわけだ。

(うん……。改めて整理しても、なかなかのハードスケジュールだな……)

 地元マフィアの『ダダダ団』が壊滅したのだから、多少は仕方ないだろうが……。
 魔導技師ムウなんて、救出された翌日だぞ?
 Cランクパーティ『三日月の舞』ですら、本格的な活動再開はまだのはずだ。

(ムウが休む間もなく働く理由は……俺のせいでもあるんだよな)

 隠密小型船の魔導回路部に、ムウが関わっている。
 彼女が誘拐されていたため、作業が滞っていたのだ。
 無事に救出された今、仕事を再開するのは当然ではある。
 普通なら数日から数週間の療養が必要だろうが、この仕事はネルエラ陛下の肝入り案件だ。
 休んでなどいられないだろう。

(だが、まさかこんなところで再会するとは……)

 いや、タル少女はともかく、ムウとの再会リスクは十分に予想できた。
 うっかりしていた。
 俺の落ち度だ。
 俺はどうしたものかと悩む。
 だが、悩んでいる時間はあまりなかった。

「えっと……『ナイトメア・ナイト』さんですよね? ダークガーデンとかいう怪しげな集団を率いる……」

「いえっ! 彼はタケシさんですよっ! Dランク冒険者です! 私は知っています!!」

 タル少女と魔導技師ムウが、困惑しつつも話しかけてきたからだ。
 俺はこの街で、3つの顔を使い分けてきた。
 平民『Dランク冒険者タケシ』。
 ダークガーデンの首領『ナイトメア・ナイト』。
 貴族『タカシ=ハイブリッジ男爵』。
 この3つだ。
 タイミング悪く、俺の異なる顔しか知らない者が集まってきてしまったことになる。

「「……」」

 どうしよう?
 無難な言い訳が、何かないか……。

「「…………」」

 2人の視線が俺に集まる。
 俺は困り果て、再び天を仰いだ。
 その時――

「ムウ殿! メルル殿! 何をしておいでですか!?」

 ゴードンが駆けつけてくる。
 ナイス!

「ゴードン! ちょうどいいところに! 実は……」

 助かった!
 彼がいれば、話が早そうだ。
 俺はそう思ったのだが――

「2人とも、早く頭を下げてください! 死にたいのですか!?」

「え?」

「ひゃっ!?」

 ゴードンは2人の頭を軽く押さえつけ、無理やりに下げさせた。
 まるで土下座でもさせるかのような勢いだ。

(いや、いくら何でもそこまでしなくても……)

 ゴードンも微妙な立場だよな。
 ネルエラ陛下直属の特務隊に所属し、秘密造船所の総責任者を任されるほどには優秀な男である。
 だが、爵位持ちかつネルエラ陛下お気に入りの俺よりは目下だ。
 それに、魔導技師ムウに対しても高圧的には接することができない。
 社会的な立場としてはゴードンの方が上だろうが、この案件に関して言えば、彼は依頼する側だからだ。

 さながら中間管理職。
 彼の胃は大丈夫だろうか?

「申し訳ありません! ハイブリッジ卿! 私の監督不行き届きです!」

「お、おう。まぁ、気にするな。大したことじゃないからな」

 必死の形相で謝ってくるゴードン。
 俺は軽く返す。

「えっと……?」

「何事ですか……?」

 タル少女とムウは、未だに事態が飲み込めていないようだ。
 混乱している2人に、ゴードンが告げる。

「2人共! この方はハイブリッジ男爵様です! 怪しい方でもなければ、Dランク冒険者でもございません!」

「「えっ!? ……えええぇーーっ!?」」

 ようやく理解が追いついたのだろう。
 2人は大きな声を上げたのだった。

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