【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1095話 ギルドの応接室へ

 邪魔な冒険者はいなくなった。
 さっさとダダダ団頭領のリオンをギルドに引き渡したい。

「あの……」

「あら? あんた、まだいたの?」

 受付嬢が冷たい視線を向けてくる。
 なかなかの塩対応である。
 まぁ、ダダダ団壊滅の翌朝というクソ忙しい時に、見るからに弱そうな男が来たら、こんな反応をされるのも仕方ないかもしれない。

「実はですね……」

「もうっ! 本当にうるさい人ねっ! 今、私は忙しい……の……」

 受付嬢が俺を怒鳴りつけてくる。
 だが、急に黙った。
 受付嬢の目が大きく開かれる。
 彼女の視線は俺が提示したギルドカードに注がれていた。
 そこには『Bランク冒険者』の文字が刻まれている。

「なっ……。えっ? こ、これって……」

「しっ! 静かに!!」

 俺は受付嬢の口を塞ぐ。
 ここは冒険者ギルドの中だ。
 ギルド内の職員は慌ただしく動いているし、待機中だった冒険者の1人は先ほど出ていった。
 今の俺たちに大きく注目している者はいない。
 だが、あまりにも大声をあげればやはり注目を浴びてしまうだろう。
 それは避けたい。

「静かにしてください。いいですね?」

 受付嬢は目を白黒させている。
 が、やがてコクコクと首を縦に振った。

「ふぅ……。よし、それじゃあ、まずは奥の部屋に案内してくれませんか?」

「は、はひ……」

 受付嬢に先導されて、ギルドの奥の部屋へと向かう。
 ちなみにモニカとニムもいっしょだ。
 それを見た冒険者たちがつぶやく。

「――ん? おい、順番を間違えていないか?」

「でへへ……。可愛い女の子たちだなぁ……」

「奥の部屋に案内するなんて、めずらしいな……」

「さっきのあいつみたいに乱暴なことをするつもりはないけどよ。特別扱いされる奴を見ると、いい気はしないもんだぜ……」

 ……どうやら、少しばかり目立ってしまったようだ。
 まぁ、これぐらいは仕方ないよな?
 下手に長居すると、さっきの男みたいに絡んでくる奴が現れるかもしれないし……。
 受付嬢にいつまでも塩対応をされていては、話の進めようがない。

「ちっ! 生意気な奴だ……」

「さっきの話じゃ、Dランク冒険者って言っていたか?」

「あんな奴が可愛い女の子を2人も連れているなんて……。くそっ!」

「へへっ。童貞の僻みは見苦しいぜ?」

「なっ!? ど、どどど童貞ちゃうわっ!!」

 奥の部屋に向けて進んでいく俺たちを、冒険者が恨めしげに見つめている。
 まぁ、そんなに羨ましいなら、俺を倒してみるか?
 チート持ちの俺をな。
 ――などと思ったが、口には出さない。
 俺は大人なのだ。
 だが、そんな大人対応をした俺に対して、1人の男が立ち上がる。

「おい! お前! 1人だけ特別扱いされやがって! いい気になってんじゃ――うっ!?」

 突然、その男が怯んだ。
 今度は、俺は何もしていない。
 それなのに男が怯んだ理由は――

「…………」

 ――受付嬢だ。
 彼女が般若のような表情を浮かべながら、男を睨んで威圧していたのだ。
 まるで、ここで対応を間違えれば死んでしまうかのような必死さである。
 怯んだ男は、そのまま後退りし、元いた場所に戻っていった。

「えっと……」

「「ひっ!?」」

 俺は何かしらのフォローをしようとしたが、冒険者たちは一斉に視線を逸らした。
 彼らは俺を恐れているのではない。
 ただならぬ雰囲気の受付嬢を恐れているのだ。

(事情を知らないカス共……! 余計な真似をするんじゃないわよ……!! Bランク冒険者を怒らせたら、こんな地方支部じゃ手に負えないでしょうが……!!)

 ――そんな声が受付嬢から聞こえた気がした。
 彼女は俺の方に振り返ると、笑顔を見せる。

「さぁ、こちらです」

「あ、ああ」

 俺は何も見ていない。
 きっと、空耳だったのだろう。
 そう思うことにした。

「どうぞ、お入りください」

 受付嬢に促された部屋に入る。
 そこは応接室といった感じの場所だ。
 俺たちがソファーに座ると同時に、お茶が出てくる。

(う~む……。なかなかに迅速で丁寧な対応だな……)

 やはりBランク冒険者としてのギルドカードを提示すれば話が早い。
 とはいえ、堂々と提示すれば目立ってしまっていただろうし、今回の流れは何とか及第点といったところだろう。

「それで……ご用件は何でしょうか?」

「ギルドマスターを呼んでこい。話はそれからだ」

「……」

 受付嬢の顔が引きつる。
 そして、恐る恐るという感じで聞いてきた。

「その……失礼かもしれませんが、あなたは一体……。いえ、そもそもBランクの冒険者様が何のために……?」

「いろいろと事情があるのだ。一介の受付嬢に伝えるようなことじゃないな」

「……分かりました。ギルドマスターをお呼びします。少々お待ちくださいませ」

 受付嬢は頭を下げて、扉へと向かう。
 少し申し訳ないが、念押ししておこう。

「待て。お前のために言っておくことがある」

「な、なんでしょうか……?」

「ギルドマスターを呼んだらお前の役割は終わりだ。通常の業務に戻り、さっき見たギルドカードの情報は忘れろ。誰にも伝えるな。もし口外したら……分かるな?」

「ひっ……!? は、はい……。か、かかか、かしこまりました!」

 受付嬢は何度も首肯する。
 そして、逃げるように退出したのだった。

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