【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1091話 ホモ疑惑

 モニカとニムの浮気疑惑は、俺の早とちりだった。
 疑って申し訳ない。
 だが、それはそれとして、自分の妻が他所の男の面倒を見ている姿を見るのは、あまり良い気持ちがしないのも事実である。
 そこで、リオンの世話役を俺に交代してもらうことにした。

「ふむ……。確かに消耗しているな。それに、全身が傷だらけだ……。これは、あの時の戦いによるものか……」

 リオンの身体を眺めながら、呟く俺。
 俺は彼との戦いを振り返る。
 まず、ダダダ団のアジトで『アーティファクト・チャンピオン』形態の彼と戦った。
 次は海上に戦いの場を移し、『英霊纏装・ベテルギウス』状態の彼と死闘を繰り広げた。
 最後は、ベテルギウスが彼の体を乗っ取り、俺と激しい戦闘を繰り広げることになった。

 特に最後の戦いが、肉体の持ち主であるリオンへの負担を大きくしていただろう。
 ベテルギウスも悪い奴ではないのだが、宿主に対して配慮せず好き放題に暴れていたからな。
 それに対する俺も、手加減して戦えるような状態ではなかったし……。

「このままでも命に別状はないだろうが……」

 リオンはダダダ団の頭領である。
 ――が、マフィアのトップというよりは、むしろ研究者タイプだった。
 研究を進める上で都合がよいということで、ダダダ団を利用していたようである。

 もちろん無罪放免というわけにはいかないが、問答無用で死刑というのはやり過ぎだろうし、傷を放置して死んでも構わないとまでは思えない。
 改心させるか、あるいは上手く研究欲をコントロールできれば、今後は世のため人のために活動させることも可能だろう。

「もう少しだけ回復しておいてやるか。――【キュア】」

 俺は最初級の治療魔法を発動する。
 すると、リオンの外傷が少しばかり癒えていった。

「これぐらいでいいだろう」

 あまり回復させすぎると、意識を取り戻してまた良からぬことを始めるかもしれない。
 研究者としての彼をハイブリッジ男爵領にスカウトしたい気持ちも少しあるが、とりあえずはオルフェスの衛兵か冒険者ギルドあたりに引き渡してからの判断だな。

「たっちゃん、その人を治療してあげたの?」

 いつの間にか近くに立っていたモニカが声を掛けてくる。
 ニムは……あれ?
 どこかに行ったのか?
 まぁいい。
 とりあえず、モニカへの返事だな。

「ああ、そうだ。多少は治療しておいてやろうと思ってな」

 俺が返事をするなり、彼女は小首を傾げた。

「たぶんだけどさ、それだけじゃ不十分じゃない? 背中側とか……」

「背中……? ああ、なるほど。そういうことか」

 治療魔法の効力は、どこまで及ぶものか?
 それは、発動した治療魔法の種類と、その発動に込めた魔力量に依存する。

 中級の『エリアヒール』ならば、その魔法自体の特性により一定範囲内にいる全員に対して薄く広く効果を及ぼす。
 一方、最初級の『キュア』には、そのような広範囲の者に対する影響力はない。
 あくまで対象は1人だけだ。
 そして、その1人の中でも治療の効力を発揮する部位というものは一定ではない。

 下級の治療魔法使いなら、患部に手をかざして治療範囲を絞る必要があるだろう。
 俺ぐらいになると、ただの『キュア』でもかなりの範囲を治療できる。
 例えば、仰向けに寝ている者に対して上空側から魔法を発動し、体の背面まで治療することも可能だ。

 ただ、今回は治療しすぎないよう、敢えて出力を抑えていた。
 よって、体の前面部は治療できていても、背中側はまだ傷が残っている可能性がある。
 モニカはそれを指摘したのだ。

「出力を上げてもう一度……いや、こいつの体勢を変えた方がいいな」

 魔法の出力を上げれば、背中側まで治療できる。
 だが、それに伴ってその他の部位まで一気に治療が進んでしまうだろう。
 ここは物理的に彼をひっくり返して、背中側に低出力の治療魔法を掛けた方がいい。

 ――まるで焼肉だな。
 ぶ厚めの肉で、火に接している側の下面は焼けたが、上面が焼けていない。
 そんな場合、どうするべきか?
 そのまま焼き続ければ、いつかは火に接していない上面まで火が通るだろう。
 だが、その頃には火に接し続けていた下面は丸焦げ状態になっている。
 均等に焼くためには、物理的にひっくり返す必要があるのだ。

「よし、こいつをひっくり返してやるとするか。――む、結構重いな……」

 リオンは研究者タイプだが、それなりに体も鍛えられている。
 なかなかの体重があった。
 そもそも、脱力状態の人をひっくり返すのは大変だ。
 同じサイズ、同じ重さであっても、完全な固形物なら簡単にひっくり返せるので問題ないが、人間はそうはいかない。

「たっちゃん、私も手伝おうか?」

「いや、大丈夫だ。俺1人で何とかする」

 この期に及んで、嫉妬心を抑えられない俺である。
 愛する妻が半裸の男に触れるというだけで、胸の奥底から黒い感情が湧き上がってくる。

「ふんっ! どりゃあっ! ――うわっ!?」

 リオンの体をひっくり返す際に、俺はバランスを崩した。
 半裸のリオンと絡むように、ベッドに倒れ込んでしまう。

「くっ……! この俺が、男とベッドインすることになるとは……。――ん?」

 ふと視線を感じた。
 モニカの視線だけではない。
 顔を上げると、部屋の入口付近からニムの目線もあった。
 さらに、彼女の隣には――

「はわわ……! こ、これが噂に聞く男同士の……! す、すごいですっ!!」

 ――なぜか魔導工房の少女がいて、両手を頬に当てながら目を輝かせているのだった。

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