【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1082話 す、好き…

 2人の女性と共に転倒した俺。
 純白のパンツを俺に押し付ける形になってしまったルリイは、赤面して逃亡した。
 それを追いかけようとする俺だったが、エレナが下半身にしがみついていて動けない。
 さらには、エレナはなぜか俺の股間を執拗にクンカクンカしていた。

「エレナさん! ちょっ……! 何をしているんですか!?」

「すぅ……はぁ……。こ、これは……! やはり……!!」

「え? 何が『やはり』なんですか?」

 俺には理解できなかった。
 エレナが何を確信したのか……。

「やっぱり、これはアレよ!!」

「えっ!?」

「間違いないわ……。でも、どうして……!?」

「ど、どういうことなんです!?」

 答えてくれているようで、エレナは何も答えてくれていない。
 ただひたすらに、俺の股間を嗅ぐだけだ。
 完全に自分の世界に入っており、俺の言葉など聞こえていない様子である。

「――いえ、まさかね……。私の勘違いだわ……」

「ええっと……?」

「こんな冴えないカスが、タカシ様と同じ匂いなんてあり得ない。それに、あの怪しい『ナイトメア・ナイト』も実力は確かだったわ……。どう考えても別人ね……」

「――ッ!?」

 俺は思わず息を呑む。
 なぜこのタイミングで『タカシ』や『ナイトメア・ナイト』の名前が出る?
 今の俺は『Dランク冒険者タケシ』だぞ?

 ……いや、答えは分かっている。
 体臭だ。
 あるいは、身体から発せられている魔力や闘気の雰囲気と言ってもいいかもしれない。
 おそらくだが、それをエレナは感じ取ったのだろう。

 エレナはCランク冒険者だけあって、なかなかに鋭い感覚を持っているようだ。
 まぁ、消臭剤や香水を使って誤魔化さなかった俺の落ち度とも言えるが……。
 いずれにせよ、この窮地は早めに脱出しておきたい。

「あの! エレナさん!!」

「な、なによ!?」

 俺は大きめの声で話しかける。
 すると、エレナが不機嫌そうに返事をした。
 ……まだ俺の股間に顔を押し付けたままではあるが。

「いい加減に離してください! ルリイさんを追いかけないと!!」

「嫌よ!! あんたみたいなカスの指図は受けないわ!!」

 エレナが即答する。
 相変わらず、俺への評価が低い。
 だが、これならこれでやりようはある。

「くっくっく……。それほど気に入りましたか?」

「はぁ? 何の話を――」

「この俺の匂いですよ! どうです? 俺の体は! 素晴らしいでしょう!!」

「なっ……!?」

 俺は大声で叫びながら、エレナに股間を押し付けた。
 まぁ、もちろんズボンは履いたままだが……。
 エレナはビクッと震えた。

「くっ……。やめなさい!! 変態っ……!!」

「ふふふ……。嫌がっているようで、体の方はとても正直ですね? 俺から手を離さないじゃないですか」

「ち、違うわよ! これは……!!」

「さぁ、もっと素直になってください……。さぁ……!」

 俺はさらに強く押し当てていく。
 押し付けているのは俺だが、それを受けても離れないのはエレナの意思だ。
 つまり、彼女の意思で股間へと顔を埋めていることになる。

「はぁ……! はぁ……! ダメ……! これ以上、この匂いを嗅いだら……!!」

「いいじゃありませんか。遠慮しないで、思う存分に堪能して下さい……」

「ダメ……! ダメなのに……!! はぁはぁ……」

 エレナの呼吸が荒くなる。
 瞳孔が開き始め、頬も紅潮していた。
 興奮状態になっているようだ。

「さあ、そろそろ認めましょう……。俺の匂いが好きだと……」

「はぁはぁ……。す、好き……」

「そう! それで良いのです!!」

「私はタケシのことが――いいえ! やっぱり違うわ!!」

「!?」

 エレナが急に正気に戻った。
 俺の股間から顔を引き離し、立ち上がる。
 その表情は真剣そのものだ。

「私の貞操はタカシ様のもの! 怪しげな『ナイトメア・ナイト』はもちろん、あんたみたいな低ランク冒険者に捧げるようなものじゃないわ!!」

「ちょっ!? エレナさん!?」

 タカシ=ハイブリッジ男爵も、ダークガーデンの首領『ナイトメア・ナイト』も、正体は俺なんだが……。
 俺はこのチャンスを逃すまいと声を上げる。
 しかし、正体をバラすわけにもいかない。

「うるさいわね!!」

「ぶへっ!?」

 エレナに思い切り顔面を殴られた。
 ――が、今度は倒れたりしない。

「なっ!? 私の拳を耐えるなんて……」

「ふふふ……。元気になってくれたみたいですね?」

「な、なにを言ってるのよ!? まさか、今の茶番は私を元気づけるためのものだったとでもいうつもり?」

「えぇ……。まぁ……。そんなところです」

 俺はニヤリと笑う。
 エレナはダダダ団の一件で落ち込んでいる様子だった。
 ならば、こうした茶番で元気を取り戻すこともあるだろう。
 そう、全ては計算通りだ。
 決して、自分の股間を女性の顔に押し付けて喜んでいたわけではない。

「ルリイさんも元気を取り戻していた様子……。残るは、テナさんだけですね」

「あ、あんたまさか、テナにも変態行為をするつもり……!?」

「いえいえ、そんなまさか。テナさんは宿屋で静養中でしょう? 差し入れを持っていこうかと」

「…………」

 エレナがジト目になった。
 信じていないようだ。
 ……が、多少の問答の末、『差し入れぐらいなら』と納得してくれた。
 俺とエレナは、途中でルリイとも合流しつつ、テナが静養中の宿屋に向かっていくのだった。

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