【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1079話 エレナからのお礼

 俺はルリイから、腕ハグというお返しをしてもらった。
 彼女のマシュマロみたいな柔らかい胸の感触が俺を襲ってきた。
 とても素晴らしい体験だったと言える。

 さらに、話の流れで次はエレナからお返しをもらえそうな雰囲気になっている。
 これは千載一遇の機会だ。
 逃すわけにはいかない。

「いやはや……。あの高名なエレナ様に無料券を受け取っていただけただけでも、望外の喜びです。お礼なんて気にせずとも結構ですよ!」

「……ッ! あんた、ふざけてんの? 敢えて大げさな言い方をして! 私をバカにしてんの!?」

「いえ、そんなことはありませんよ。本当にエレナさんに無料券を受け取ってもらえて嬉しかったからこそ、お返しはいらないと言ったんです」

「……ふぅん」

 エレナの眉間に深いシワが寄る。
 そして、鋭い視線を俺に向けてきた。

「……望みは何よ?」

「はい?」

「だから! 無料券の対価に、何を望んでいるのかって聞いてるの!!」

「いえ、ですから――」

「何も要らないなんて建前を言ったら、ぶっ殺すわよ?」

「……」

 こわい。
 めちゃくちゃ怖い。
 美人の怒った顔って、こんなに迫力あるんだ……。
 少し煽りすぎたか。
 ここは正直に望みを言ってみよう。

「え、えぇ……。もちろん、何かしていただけるなら、俺からエレナさんに望むことはありますよ」

「ふんっ……。言ってみなさい」

「はい。では……ルリイさんと同じことをお願いします」

「…………は?」

 俺の言葉を聞いた瞬間、エレナの動きが完全に停止した。
 そして、ゆっくりとルリイの方へと目を向ける。

「ふふふー。どうしたのー? エレナちゃんー?」

 ルリイは無邪気な笑顔を浮かべながら首を傾げた。
 おそらく、エレナの反応を見て楽しんでいるのだろう。

「はぁ……。もう、いいわ……」

 エレナがため息をつく。
 そして、俺に向き直った。

「タケシ。私はあんたのことなんか全然好きじゃないし、そもそも男として見ていないからね。勘違いしないでほしいのだけれど……」

「はい」

 し、辛辣だ……。
 まるでツンデレみたいな言い方だが、エレナの場合は照れ隠しとかじゃなくてガチだと思う。

「それでも、ルリイと同じことをしてほしいっていうなら、特別サービスでやってあげるわよ?」

「ぜひ! よろしくお願いします!!」

「……」

 俺が勢いよく頭を下げると、エレナが無言になった。
 あれ?
 ……もしかしてダメなのか?
 一度はやってくれるって言ったのに?

「あの……エレナさん?」

「……」

 エレナは黙り込んだままだ。
 もしかすると、ルリイと同じようにはできないということかもしれない。
 それならば仕方がないな……。

 というか、エレナがそこまで義理堅くて真面目だとは思わなかった。
 適当に『ありがとう』の一言で済まされると思っていたし、俺もそれで構わないと考えていた。
 ルリイからの思わぬ流れに乗ってみたのだが……エレナが嫌がるなら、しょうがないか。

「エレナさん、やっぱりいいですよ。変なことを言ってすみませんでした。こういうことは、好きな人とするべきですよね」

「……」

 俺がそう言うと、エレナはなぜか顔を赤く染めた。
 もじもじと指を絡ませている。
 なんだか様子がおかしいな……。

 男の腕に抱きついて胸を押し当てる――。
 もしかしたら、俺の想像以上に恥ずかしい行為なのかもしれない。
 エレナの様子を見ながらそんなことを考えていた時のことだった。

「ふんっ! 私は、やがてAランクになる『三日月の舞』のリーダーよ! この程度、朝飯前よ!!」

 エレナが俺を睨むようにして、そう言い放った。

「えっと……」

「いいから、さっさと目を閉じなさいよ……!」

「あ、はい……」

 俺は言われた通り、ギュッと目を閉じる。
 まるでキスでもされるかのような流れだが、エレナに限ってそれはないだろう。

「ほら、これでどう!?」

「おお……。エレナさんの手、とても温かいですね……」

「う、うるさいわね! 黙りなさいよ!!」

 エレナの両腕が、俺の右腕を包む。
 それだけでとても幸せな気分になる。
 心なしか、他にも微妙に固いものが当たっている。

(これは何だろう?)

 よく分からないが、どことなく心地良さを感じる。
 しかも、これだけで終わりではないはずだ。
 ルリイと同じ流れなら、次は胸部の感触が――

「はい! これでおしまい! 満足したでしょ!?」

「えっ!?」

 俺は思わず目を開ける。
 エレナは俺から腕を離すと、ルリイの後ろに隠れた。
 そして、俺に向かって叫ぶように言葉を発する。

「あんたが私にしてほしいって言ったから、仕方なくやっただけだからね!? 本当は絶対にやりたくないけど、施しを受けっぱなしなのは私の性に合わないから!!」

「あ……えっと……その……」

「何よ!? まだ何か足りないってわけ!?」

 エレナがすごい剣幕で言ってくる。
 元より、お礼は期待していなかったのだ。
 ここで引き下がってもいい。
 だが、一度高められてしまった期待を裏切られた俺は、つい余計なことを口走ってしまう。

「あの……手だけですか? 他には……?」

「はぁ!? わ、私はちゃんと、ルリイと同じにようにしたわよ!!」

 エレナが激怒する。

「はて? 手以外には何も接触していなかったような?」

「そ、そんなはず――」

「……ああ、そう言えば、何か固いものが当たっていましたね。あれは体のどこの部分だったので――」

 俺の言葉は最後まで続かなかった。
 なぜなら――

「誰が無乳だあああぁ!!」

「ぷごっ!?」

 エレナの拳が、俺の頬にめり込んだからだ。
 そして、俺は盛大に吹っ飛んだのだった。

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