【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1075話 リンドウのPR

 朝の海岸線。
 些細なことから、俺はエレナと掴み合いになりかけた。
 そこで、彼女が心に大きな傷を負っていることを知った。

「エレナさん」

「なによっ!」

「ええっと……冒険者としてずっと頑張ってこられたんですよね? ここらで一度、ゆっくり静養されるのもアリなんじゃないでしょうか?」

 俺はとりあえず思い付いたことを口にした。
 だが、エレナは即座に反応してくる。

「バカ言わないでよ!! そんなことをしたら、『三日月の舞』の評判が下がっちゃうじゃない!! 私たちの目標はAランクよ! こんなところで立ち止まるわけにはいかないのよ!!」

「うーん……。でも、無理をしては身体や心を壊してしまいますよ」

「ふんっ! あんたみたいな軟弱者に心配されても嬉しくないわ!!」

 エレナは吐き捨てるように言った。

「……」

「……」

「……」

 俺、エレナ、ついでにルリイ。
 3人の間に、気まずい空気が流れる。
 そこで俺は、1つ提案することにした。

「あそこはどうですか? 静養できる施設があり、しかも冒険者としての仕事もたくさんある場所なのです」

「はぁ? そんなオイシイところがあるわけないでしょ! 適当なことを言わないで! このウスラトンカチ!!」

「いえ、それが本当なのですよ」

「はぁ~? いったい、どこの街だって言うのよ?」

「リンドウです。ハイブリッジ男爵領の領都ラーグから西に行ったところにある新しい街ですよ」

 俺はそう伝える。
 まぁ、そのハイブリッジ男爵ってのは俺のことなわけだが……。
 自分で自分の街をオススメするっていうのも妙な気分だな。

「リンドウ……。タカシ様が開発に注力されている、新しい街だったわね」

「わたしも聞いたことがあるよー。エレナちゃんが土壇場で照れちゃって、寄ることができなかったけどー……。そこってどんな街なの?」

 エレナとルリイは興味を持ってくれたようだ。
 Cランク冒険者の彼女たちがリンドウに来てくれれば、開発も加速するだろう。
 ここはしっかりとPRしておこう。

「活気があって、とても過ごしやすい素敵な街ですよ。開発中なので、確かな人口は不明ですが……。定住人口だけでも300人は軽く超えていると思います」

「ふーん。なるほどねぇ。……で?」

「で、とは……?」

「新しい街なら、そりゃ冒険者としての仕事はあるでしょうよ。でも、『静養できる施設』とやらはどうなのよ? そういうのって、開発済みの安定した街にしかないもんでしょうが!!」

 エレナが噛みついてくる。
 俺は困ってしまった。

「え、えーと……」

「ほら、やっぱりないんでしょ? だいたい、私が女だからって、バカにしてんの!? そんな常識すら知らないとでも――」

「い、いえ! それがあるんですよ! 静養できる施設が!!」

「はぁ~? あるわけないでしょ!!」

 エレナがヒートアップしてきた。
 本当に強気で短気な性格だなぁ……。
 ま、これが彼女の魅力的で可愛いところでもあるのだが。
 それに、今はダダダ団の件で気を張っているというのもある。
 無闇に折らず、何とかこのままリンドウへ誘導したい。

「リンドウの近くには鉱山があるんです!」

「鉱山で静養しろっての!? バカじゃないの!?」

「いえ、そうではなくてですね! 山の中に温泉が出たのですよ!!」

「あ……温泉……。なるほど、確かにそれなら……」

 エレナが考え込む。
 よし、あと一押しだ。

「温泉の近くには、温泉旅館という宿泊施設があります!」

「オンセンリョカン……?」

 エレナの顔に疑問符が並ぶ。

「はい! 簡単に言えば、温泉に付随した高級宿屋です!」

 俺は力強く答える。
 これは嘘ではない。
 俺が主導の上、アビーに依頼して温泉旅館の準備を進めてもらっている。
 少し前には、聖女リッカの襲撃をきっかけに先行で宿泊体験をさせてもらった。
 もう完成していると言っていいだろう。
 俺がラーグを出発してから結構な時間が経過したし、もう一般に開放している頃かもしれない。
 そのあたりの判断は、アビーやその他の従業員に任せている。

「つまり、私はそこに泊まって、温泉にゆっくりと浸かっていれば良いということかしら?」

「そうです! そうすれば、心身ともに癒され、元気になるのは間違いありません!!」

「ふーん。なるほどね……」

 エレナは腕を組みながら、俺の話を聞いてくれる。
 よし、いい感触だな。
 このままリンドウのPRを続けて、押し切っていこう。

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