【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1073話 骨なしチキン男

 朝。
 オルフェスの浜辺に漂着した俺は、街に向かって歩き出していた。
 もちろん、服は『ナイトメア・ナイト』モードから、『Dランク冒険者タケシ』のものに戻っている。

「ふぅ……。もうすぐ着くな」

 俺は軽く伸びをする。
 ちなみに、今いる場所はオルフェスの東の海岸線。
 そこから西へ進むと、すぐにオルフェスの市街地となる。

 俺はリオンを肩に担ぎ、進んでいく。
 本当は『影棺』にでも収納したいのだが、あいにくMPがまだ回復しきっていない。
 ここはMPを節約しよう。
 戦闘の余波で半裸状態となっている男を担ぐのは癪だが、これも仕方のないことだ。

「――むっ!?」

 そのときだった。
 前方から、見覚えのある少女が歩いてくるのが見えた。
 モニカでもニムでもない。
 彼女は――

「あっ! タケシじゃない! こんなところで何をしているのよ!!」

 Cランクパーティ『三日月の舞』のリーダー、エレナだった。
 後ろには雷魔法使いのルリイもいる。
 この場にはいない土魔法使いのテナと共に、昨日はダダダ団のヨゼフに捕まって拷問まがいのことをされていた。

「俺か? 俺はちょっと野暮用があって……」

 少し油断していたため、いい言い訳が思い浮かばなかった。
 というか、昨日の今日で元気だな。
 とても拷問まがいのことをされていたようには見えない。

「あって?」

「……いや、ありまして……」

 エレナに睨まれ、俺は慌てて言い直す。
 相変わらず、上下関係に厳しい奴だ。
 まぁ、Cランク冒険者である彼女に対して、Dランクのタケシが敬語を使うべきなのはその通りなのだが……。

「のんきなものね! こっちは、ダダダ団に酷い目に遭わされたっていうのに!!」

「ふふふー。本当に酷い目にあったよー。間一髪で助かったけどー……」

 エレナの言葉に、ルリイが同調する。
 怒っているエレナに対し、ルリイはやや落ち込んでいる感じか?
 多少の温度差はあるものの、大きな精神的ダメージなどは受けていないようだ。
 やはりCランク冒険者といったところか。
 これまでにも、似たような危機を何度か乗り越えてきたのだろう。

「ダダダ団? や、奴らがどうかしたのですか?」

 俺は動揺しているフリをしつつ問う。
 Dランク冒険者タケシとしての反応は、これぐらいが自然だろう。

「あぁん!?」

 すると、エレナの目つきが一気に鋭くなった。

「どうしたもこうしたもないわよ!! あいつら、私たちを捕まえて奴隷にしようとしたのよ!? ふざけんじゃないわ!!」

「ええっ……!? それは本当なのですか……!?」

 俺は大げさに驚いてみせる。
 まぁ、俺もダークガーデンの首領『ナイトメア・ナイト』として忍び込んでいたので、大方の事情は知っているわけだが……。

「ま、マズイですよ! 奴らを怒らせたら、この街で生きていけません! 今すぐに逃げましょう!!」

 俺は深刻そうな顔を浮かべる。

「バカ! あんたがこんなところでのんきにしている間に、奴らは壊滅させられたのよ!」

「な、何ですと!?」

「そうよ。昨日は大変だったんだから……」

「エレナさんたち『三日月の舞』が壊滅させたのですか?」

「いいえ、違うわ。ダークガーデンとかいう、謎の組織よ」

「ダーク……ガーデン? 聞いたことがありませんね……」

 俺はしれっとそう言う。
 実際には、もちろん知っている。
 というか、首領は俺だしな。

 その他のメンバーは2人。
 雷を司る『テルティウム』こと、モニカ。
 土を司る『クァルトゥス』こと、ニム。
 言うまでもなく、いずれも確かな実力を持つ頼もしいメンバーだ。

 他にも『プリームス』『セクンドゥス』『クィーントゥス』などの加入も検討予定だが……。
 現メンバーは、俺を含めてあくまで3人だけである。

「そのダークガーデンとやらがダダダ団を潰してくれたのですか。ありがたいことですね」

「ふんっ。あんたは何もわかっちゃいないのね」

「なんのことです?」

 俺はエレナに問う。
 正体不明の組織(実際には俺、モニカ、ニムの3人)がマフィアを潰したとして、エレナたちにはメリットしかないと思ったのだが……。

「そんな得体の知れない男に手柄を取られちゃったのよ? 私たち『三日月の舞』の評判はガタ落ちになるわ! もちろん、そもそもダダダ団に関わろうとしなかったあんたもね」

「うっ……。ま、まぁ仕方ないのでは? 実際、俺たちではダダダ団を倒せなかったわけですし……」

「情けない! この骨なしチキン男! 厄介な相手でも、自分が倒してやるっていう気概くらいは持ちなさいよ!!」

「は、ははは……。手厳しいですね……」

 あんな目にあったばかりなのに、エレナは強気を崩さない。
 これが彼女の良い点でもあり、悪い点でもあるよな。
 上手くいっている内はいいが、また何かしらの不覚を取って捕まったりしなければいいが……。

「笑いごとじゃないわよ!! まったくもう! こんなのが憧れのタカシ様と一文字違いの名前なんて……。世の中、間違っているわ!!」

「…………」

 エレナの口から放たれた暴言に、思わず閉口してしまう。
 そろそろ、俺の正体がタカシ=ハイブリッジ男爵だとバラすか?
 彼女の驚く顔が目に浮かぶ。

 いやいやいや……ダメだ。
 それは危険すぎる。
 ヤマト連邦への潜入作戦が控えた今、正体を明かすわけにはいかない。
 ここは適当に相手をして、この場をやり過ごすことにしよう。

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