【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1066話 炎精纏装・サラマンダー

 海中での作戦会議で、俺は炎精サラマンダーことサラの力を借り受けられることになった。
 打ち合わせを終えた俺は、水面に向かって上昇していく。
 そして、重力魔法を使って空中に浮き上がった。

「――ほう。逃げずに戻ってきたか」

 海上では、俺を待ち構えていたかのようにベテルギウスが佇んでいた。

「待たせたな。よく追撃してこなかったものだ」

「ふん。逃亡や時間稼ぎをするようであれば、容赦なく叩き潰していたところだがな」

「そうか……。だが、あいにくとお前に勝つための秘策を思いついてな」

「ほぉ……。やはり我が期待した通り、少しは楽しめそうだ。面白い。やってみろ」

 ニヤリと笑う俺。
 対するベテルギウスも、不敵に笑い返した。

「行くぞ」

 俺は体内で魔力を高める。
 そして、サラの力を借りるために詠唱を始めた。

「天より来たりしは紅蓮の焔。大地を灼くは煉獄の業火。我が心は既に燃え盛る炎なり。故に、我は炎の化身と化さん。――炎精よ。今ここに顕現し、我と融合せよ。――【炎精纏装・サラマンダー】!!」

 俺の全身が炎に包まれていく。
 同時に、体内で膨大な力が膨れ上がっていくのを感じた。
 炎精サラマンダーは、俺の中に宿ったままその力を開放したのだ。

「なんだ……その姿は……?」

 ベテルギウスが戸惑う。
 無理もない。
 今の俺は、真っ赤な炎の鎧を身に着けているのだから。

 俺は以前から、纏装術を使用していた。
 そしてネルエラ陛下との一戦から、新たなレベルの纏装術を模索し練習していた。
 炎精サラマンダーの力を借りることにより、それがいよいよ完成したことになる。

「さぁ、いくぞ。第二ラウンドの開始だ」

 俺はそう言って、拳を構える。

「ふん。たかが人間が、精霊の力を得た程度で調子に乗るなよ」

 ベテルギウスが両手を広げる。
 次の瞬間、彼の身体から強烈な闘気が吹き出した。
 それはまるで、荒れ狂う嵐のようだった。

「さぁ、来い。貴様の力を見せてみろ!!」

「言われなくてもそうするさ! まずは――【獄炎球】!!」

 俺の右手から、巨大な火の玉が放たれる。

「くだらん!!」

 ベテルギウスがそれを片手で受け止めた。

「まだだ! ――【爆裂火炎弾】!!」

 俺は左手からも火魔法を放つ。

「ふんっ!」

 ベテルギウスは右手を突き出したまま、今度は左手で魔法を受け止める。
 ――魔法攻撃を耐える際に最も効率がいいのは、自分の魔力を攻撃側の魔力と同じ属性にすることだ。
 そうすることで、効率よく抵抗力を上げることができ、ダメージを軽減することができる。
 次善策は、変質前の純粋な魔力で対抗すること。
 だが、ベテルギウスはそのどちらでもない方法で、俺の攻撃を防いだ。
 つまり、ただの闘気で対抗したのである。

「無駄だ! この程度の威力の魔法では、我が闘気を貫くことはできんぞ!!」

 ベテルギウスが叫ぶ。
 実際、それほどまでに彼の闘気の出力は高い。

「ならば、これはどうかな? ――【火炎車・炎帝乱舞】!!」

 俺は無数の炎の車輪を出現させる。
 それは、俺の周囲を取り囲むようにして高速回転し始めた。

「行け!」

 俺はベテルギウスに向けて、炎の車輪を放った。

「小賢しいッ!!!」

 ベテルギウスが吠えた。
 彼は俺が生み出した炎の車輪を、次々に殴り壊していった。
 だが、それだけではない。

「なに!?」

 ベテルギウスの姿が消える。
 ――それは俺が放った最後の炎の輪に紛れてのことだ。

「後ろだ」

 俺の背後からベテルギウスの声が聞こえた。
 それと同時に、彼が勢いよく腕を振り下ろす。
 その一撃は確かに俺の体を捉え――

「なっ!? バカな!!」

 ベテルギウスが驚愕の表情を浮かべる。
 それも当然のことだろう。
 なぜなら、彼が攻撃を加えた箇所の俺の体が、炎となって霧散してしまったのだから。

「残念だったな」

「まさか……幻か?」

「幻? そんなチンケなものと一緒にするな。今の俺は、まさに炎そのもの。物理攻撃は通用しないというわけさ」

「なるほど……。この火魔法こそが、貴様の切り札。影魔法は実力を隠すためのものか」

「ご名答」

 俺は素直に答える。
 英霊ベテルギウスは強い。
 だが、その強さの大部分を闘気に依存している。
 物理攻撃さえ無効化すれば、俺が圧倒的に有利だ。
 ダダダ団や一般民衆への正体バレだけは怖かったところだが、海上で異世界の英霊相手に戦う今はそんな心配は無用である。

「くっくっく……。はーっはっは!!」

「何がおかしい?」

「久方ぶりの美味い魔力に釣られて召喚に応じれば、召喚者はただの小物。ハズレを引いたと思っていたが、このような掘り出し物と出会えるとはな!!」

 ベテルギウスはそう言うと、不敵な笑みを浮かべる。
 どうやら、純粋に戦いを楽しむタイプのようだ。
 まぁ、『英霊』と呼ばれているぐらいなのだから、悪人ではないと思っていたが……。
 これはこれで厄介だ。
 戦闘で満足してくれるまで帰ってくれそうにない。
 10分間云々という話も、ベテルギウスからリオンに課しただけの制約だし……。

「さて、仕切り直しといこう。この戦いを思う存分に楽しもうではないか!!」

「いいだろう。龍神ベテルギウスの力、もっと深くまで見せてもらおう!」

 ベテルギウスが再び闘気を高め始める。
 そして、俺も負けじと魔力や闘気を練り上げたのだった。

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