【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1063話 龍神の力

 俺はリオンを倒した後、人魚メルティーネと少しだけ交流した。
 海の上に浮かぶリオンを回収して帰ろうとしたのだが、彼の闘気が急激に膨らみ始めたのだ。

「こんな奴に負けてもらっては困るな。我が力の使い方を見せてやろう」

 リオンがそう言った直後、凄まじい衝撃波が襲ってきた。
 俺は咄嵯の判断で回避するが、それでも完全には避けきれず、大きく吹き飛ばされてしまう。

「くっ……一体何が起こっている?」

 俺は即座に態勢を立て直すと、リオンの方を注視する。
 そこには――

「ふむ……。久々の受肉だ。こんな小物でも、やはり生の肉体は良い……」

 全身を黄金色に輝く鎧で覆ったリオンの姿があった。
 いや、正確に言えばあれはリオンではない。
 雰囲気が明らかに異なっている。

「お前は誰だ?」

 俺は問いかける。

「我は龍神の力を宿す者。全ての生命の頂点に立つべき存在なり」

「お前は……リオンじゃないのか?」

「違う。あんな小物といっしょにするな。我が名は龍神ベテルギウスである」

「……」

 俺は言葉を失った。
 これが英霊纏装の副作用か……?
 リオンが弱った途端、中にいた別の人格に体を乗っ取られるとは。
 なんということだ……。

「リオンは死んだのか?」

「否。我は異世界の英霊……。無闇にこの世界の民に危害を加えるつもりはない。奴の人格は眠っているだけだ」

「そうか……」

 どうやら、リオンは死んではいないようだ。
 最悪の事態は免れたらしい。
 あんな奴でも、何かの役に立つかもしれないしな。

「ならば、さっさと元の世界に帰るんだな。異世界の英霊よ」

「それはできぬ相談だ」

「なぜ帰らない? 中から見ていたのだろう? そいつは俺に負けた。龍神ベテルギウスの力も大したことなかったな」

「……ふん」

 俺の言葉を聞いたベテルギウスは鼻を鳴らす。
 そして――

「はぁっ!!!」

 パァンッ!!!
 一瞬にして彼の闘気が膨れ上がった。
 圧倒的な出力だ。
 ネルエラ陛下のように得体の知れない力でもなく、聖女リッカのように神聖さを感じる力でもない。
 ただただ、純粋なエネルギーのみで構成された強大な闘気だ。

「す、すばらしい……」

 俺は思わず呟いてしまった。
 今まで見たこともないような力だったからだ。
 おそらく、この世界で歴戦の武闘家ですら足元にも及ばないだろう。
 それほどまでに圧倒的だった。

「ふん……。最低限の見る目はあるようだな。思い上がった異世界のザコに、我が龍神の力の一端を見せてくれる」

 ベテルギウスが構える。
 次の瞬間――
 ドゴッ!
 俺の頬を彼の拳が捉えた。
 俺の反応速度を上回る速さだ。

「ぐぅ……!」

 俺は後方に飛んで衝撃を殺す。
 しかし、それでもかなりのダメージを負った。
 なんとか体勢を整え、反撃しようと試みるが――
 シュパッ!
 一瞬で距離を詰められ、腹部に蹴りを入れられる。

「がはっ……!」

 俺は海面を何度もバウンドしながら吹っ飛んだ。
 マズイぞ。
 龍神ベテルギウスの力の強大さは、操作者がリオンだったときから知っているつもりだった。
 しかし、本人が肉体の権限を握った途端にこれほどまでに変わるものなのか……。

「くっ……このっ……!」

 俺は重力魔法を駆使し、ギリギリで踏みとどまる。
 そんな俺の眼前に、ベテルギウスが迫ってくる。

「ぐっ!」

 俺は彼の左手で首を掴まれてしまう。
 このまま首を締められるのか?
 いや、これは――

「耐えてみろ」

 ドドド!
 ドドドドド!
 ベテルギウスの右手から猛烈なラッシュが放たれる。
 俺のボディに次々と拳が突き刺さっていく。

「ごほっ!」

 あまりの威力に胃液を吐いてしまう俺。
 彼の左手は俺の首を掴んでいるので、逃げることもできない。

「ふん。これが龍神の力の一端だ。思い知ったか?」

「ぐ……」

「さて、トドメだ」

 ポイッ!
 俺はベテルギウスによって、投げ捨てられるように空中へと放り投げられた。
 そして――

「【ドラゴニック・バースト】」

 ベテルギウスの両手から、凄まじい闘気を圧縮した波動砲が発射された。
 リオンも同じ技を使っていたが、練度が段違いだ。
 速度も攻撃範囲も凄まじい。
 避けることは不可能。

 俺はそれをもろに受けてしまい――
 ザッパァーーン!!
 海面へと落下し、盛大に水しぶきを上げた。
 そのまま海中へ沈んでいく。

(あぁ……異世界の英霊があれほど強いとは……。負けても仕方ないよな)

 俺はついそんなことを思ってしまう。
 だが、そんな俺を励ますように、体の奥から何かの力が湧いてくるのを感じたのだった。

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