【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1056話 龍神ベテルギウス

 リオンが英霊ベテルギウスを召喚した。
 そして、その霊体の力を借りて俺を倒す心づもりのようだ。

「ふん……。『英霊纏装・ベテルギウス』か……。面白い」

 俺は小さく笑みを浮かべる。
 正直、リオンのことは見くびっていた。
 だが、こうして異世界の英雄の力を得たともなれば、俺も本気で相手をしてやらねばなるまい。

「死ねぇぇっ!!」

 リオンが飛び出してきた。
 俺は冷静に彼を迎え撃つ。

「はぁぁぁぁぁぁあっ!!」

「むん」

 俺たちの拳が交差する。
 その瞬間、凄まじい衝撃波が発生した。

「ぐぅ!?」

 リオンが吹き飛ばされた。
 だが、空中で体勢を整え、着地を決める。

「クッハッハ! 素晴らしいパワーだ!! これならば、貴様にも勝てる!!」

 リオンは興奮した様子で言う。
 どうやら、自分の新たな力に大満足しているようだ。

「さすがは異世界の英雄……! これほどの力を我がものにできるとは……!」

 リオンが口角を上げる。
 そして、ゆっくりと腰を落とした。

「【龍神脚】」

 次の瞬間、リオンの姿が掻き消えた。

「ぬっ!?」

 俺は反射的に後ろへ跳ぶ。
 一瞬前まで俺がいた場所に、リオンの蹴りが突き刺さった。

「ほう。初見で私の技を避けるか」

「確かに初見だが、その技を使うのはお前も初めてだろうが。借り物の闘気と技で、俺に勝つつもりなのか?」

「減らず口を叩くな! 龍神ベテルギウスは絶対無敵の存在! 私がその気になれば、もっと強い力を出せる!!」

 リオンが連続で攻撃してきた。
 俺はそれを全て回避していく。
 異世界の英霊とはいえ、基本的な身のこなしは大きく変わらない。
 ゾルフ砦で学んだ『剛拳流』やアイリスから教わった『聖ミリアリア流』を活用すれば、何とかなりそうだ。

(しかし、威力は段違いだな……)

 一撃一撃が重い。
 おそらく、まともにくらえば俺の防御力を貫通するほどの威力があるだろう

「クッハッハ! どうした? 反撃しないのか? ザコめ!!」

 リオンが挑発してくる。
 俺が攻撃をしないことを好機だと思っているようだ。

「その必要があるか? お前のタイムリミットはわずか10分。そこまで持ち堪えれば、お前は元のザコに戻るのだからな」

「ほざけ! ならば、私のさらなる本気を見せよう!!」

 リオンがさらに速度を上げていく。
 だが、それでも俺を捉えることができない。
 逆に、攻撃に集中するあまり、隙がどんどん増えている有様だ。

「はああああああ!!!!」

 リオンが素早く攻撃を繰り出す。
 だが、俺はそれをサッと避ける。

「くそっ! なぜ当たらない! 私は最強になったはずだ!! それなのにどうして……!!」

 リオンが歯ぎしりをする。

「最強の力を得ても、戦い方がお粗末すぎる。そんな使い方では、本物の英雄にはとても及ばん」

「黙れ! 黙れえええっ!!」

 リオンの攻撃が激しくなっていく。
 そろそろいいか。

「隙だらけだぞ」

「ぶげっ!?」

 俺はリオンの横腹にカウンターの拳を叩き込んだ。
 リオンが吹っ飛んでいく。

「ごほっ! がはっ! な、なんで……。反撃はしないって……」

「お前があまりにも隙だらけだったものでな。つい攻撃してしまった。悪いことをしたな」

「ふざけるなよ……このクソ野郎が……」

 リオンの顔に怒気が満ちていた。
 完全にブチ切れてしまったようだ。

「こうなれば、龍神ベテルギウスの真の力を見せてやろう! 私をここまで虚仮にしてくれた貴様だけは許さん! 跡形もなく叩き潰してくれる!! ――【龍族龍化】!!!」

 リオンが叫んだ。
 同時に、彼の姿に変化が起きる。

「おお……」

 思わず感嘆の声が出てしまうほど、リオンの変貌は劇的なものであった。
 体のサイズが膨れ上がり、龍の鱗に覆われていく。
 手足は竜の爪となり、背中からは巨大な翼が生えてきた。
 頭部も龍のものへと変化しており、牙が剥き出しになっている。

「グオオオッ! 素晴らしいパワーだ!! 強いぞ、カッコいいぞぉ!!!」

 変身を終えたリオンが吠えた。
 その姿はまさしく荘厳なドラゴン。
 そう言いたいところだったが――

「ふむ……。少しばかり醜い見た目だな。龍神ベテルギウスの力をもってしても、リオンという小物を完全な龍にすることはできなかったか……。歪な怪物だな」

「怪物ではない! 今の私は神――龍神ベテルギウスだ! 私を侮辱したことを後悔させてやる……!」

 リオンが怒りの形相でこちらを見つめる。
 その迫力たるや、まさに龍神。
 しかし、不思議と負ける気はしない俺であった。

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