【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1051話 人魚の血

 俺はダダダ団の首領リオンと対峙している。
 彼が研究している『不老不死』について聞き出したが、犠牲となる者の人数が多すぎるので俺は興味を失った。

「お前の存在は危険だ……。排除させてもらおう」

 リオンの話では、不老不死を達成するためには賢者の石が必要。
 そして賢者の石を作るには、サザリアナ王国の全国民の命を捧げなければならないらしい。
 そんなことになれば、新大陸中――いや、世界中が大混乱に陥るだろう。

(もしかして、俺が受けているミッションにおける『世界滅亡の危機』というのも、こいつが絡んでくるのか……?)

 ただの一研究者に世界を滅亡させる力はない。
 だが、野望の大きさが大きさだ。
 直接的に世界を滅ぼすことはなくとも、連鎖反応の一端としてリオンの存在が絡んでいてもおかしくはない。

「排除か。随分と強気だな」

「強気なのはどっちだ? 俺は『ダークガーデン』の首領『ナイトメア・ナイト』。たかがチンピラ集団の首領ごとき、敵ではない」

 俺は威圧しながら言い放つ。
 するとリオンは、ニタリと口角を上げた。

「クッハッハ! 私のことをただのチンピラ集団の首領だと思っているのか?」

「事実だろう」

「いいや、違うね。人の話はちゃんと聞くものだ。ダダダ団など、オルフェスにおける私の隠れ蓑に過ぎないと言ったはず。私の本職は研究者だ」

「ならばなおさらのこと。研究者が戦闘で俺に勝てると思うな」

 俺は瞬時に魔力を練り上げる。
 そして、右手の指先から闇のレーザーを撃ち放った。

「【闇波】」

「ぐっ!?」

 俺のレーザーはリオンの太ももを貫く。
 彼は苦悶の表情を見せた。

「おおおっ!? い、痛いじゃないか。いきなり何をするんだ!!」

「ふん……。これでも手加減してやった方だ。次は頭を狙うぞ」

 俺は容赦なく告げる。
 本当に頭を狙うかどうか、すごく悩ましい……。
 ヨゼフ以下のチンピラなら、殺す必要はないんだよな。
 無力化した後に然るべき者に引き渡して罰を与えてもらえばいいし、『隷属の首輪』をはめてリンドウ鉱山で働かせるのもいい。

 だが、リオンのような存在は別の意味で危険だ。
 戦闘能力は大したことがなさそうだが、捕らえたところで将来的に脱走しないとも限らない。
 殺した方が確実だ。

(しかし、彼の研究成果にも興味あるんだよな……)

 さすがに不老不死は眉唾ものとしても、その研究の副産物は魅力的だ。
 治療魔法なり医療なりが発展し、将来的に世界滅亡の危機に立ち向かう上で役立つ可能性がある。
 できれば、彼を殺したくはなかった。

「降参し、罪を償え。そして、平和的な方向で研究を続けるんだ。……そう言えば、西方では優秀な人材を募集中と小耳に挟んだが」

「西方? ……ああ、タカシ=ハイブリッジ男爵かね? あれはダメだ」

「……」

 ダメだと言われ、俺は思わず閉口してしまう。
 こういう否定の言葉って、面と向かって言われるのもキツイが、間接的に伝えられると想像以上にショックが大きいものだ。
 俺はこの街に来てから最も大きいダメージを負う。

「彼は優秀ではあるが、人格に問題がある」

「……」

 人格……だと……?
 表向きの俺は、貴族として模範的な行動をとってきたはず。
 どこが問題だというのだ。
 まさか、女好きという噂が広まってしまっているのか?
 いや、子ども好きという方か?
 あるいは、いろんな特殊な嗜好を持っていることがバレているのか……?

「ハイブリッジ男爵は高潔すぎる。聖人君子だな。一般的に言って、その思想は素晴らしい。だが、自分の上司やパトロンとしては落第点だ」

「……聖人君子?」

 思っていた方向と違った。
 そうかそうか。
 俺の表向きの顔は、想像以上に高評価だったようだ。
 しかしだからこそ、リオンのように怪しげな研究者は近づいてこないわけか。

「そうだ。私は常々思っている。『人間とは、もっと欲望に忠実であるべきだ』とな」

「……」

「私は不老不死となる。この世の美食をすべて味わい尽くす。惰眠を貪り続ける。童貞を卒業する。金銀財宝を集める。すべてを手に入れる」

「欲望を持つのは結構。だが、その野望が叶うことはない。なぜなら、俺がそれを許さないからだ」

 俺はリオンの言葉を遮り、宣言する。
 リオンはニヤリと笑う。

「それはどうかな?」

「なんだと? ――むっ!!」

 次の瞬間、リオンが勢いよく立ち上がる。
 そしてそのまま、鋭い蹴りを俺に放ってきた。
 俺は咄嵯に後退し、距離をとった。

「ほぉ……。今のを避けられるとはな」

「お前の足は、俺が確かに撃ち抜いたはず……。どういうことだ……?」

 リオンの太ももの傷は塞がっていた。
 まるで時間が巻き戻ったかのように、何事もなかったかのようになっている。

「これこそが『不老不死』研究の副産物の一つ。人魚の血による効果だ」

 リオンが得意げに語る。
 そして、ニヤリとした笑みを浮かべたのだった。

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