【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1041話 闇は時に、人の心を飲み込む

 俺はダダダ団アジトのとある部屋に乱入し、ヨゼフを殴り飛ばした。
 そして、取り急ぎエレナとルリイを拘束から解放した。

「さて、次は貴様だ。美しき三日月が荒れた大地に落とされたか……」

「んんーっ!!」

 エレナやルリイの状況も酷かったが、テナも負けず劣らず酷い状況だ。
 部屋の中にわざわざ砂利をまかれ、その上に正座で座らされている。
 ご丁寧に、膝の上には重りが乗せられている始末だ。

「しばし待て。これより、地に落ちた三日月を空へ戻そう」

「んん……!」

 俺はテナの拘束を解き、正座状態から解放する。
 そして、口枷を外してあげた。

「あ、ありがとうっす。怪しい人っすけど……」

「闇に魅入られた哀れな子羊よ。今こそ俺の手を取り立ち上がるがいい。さすれば、闇は晴れるだろう」

 俺は適当なことを言っておく。
 正座していたせいか、足を痛めている様子だ。
 立ち上がるためには手を貸してやる必要があるだろう。

「オレっちなら大丈夫っす! 足腰も多少は鍛えているっすから!!」

 テナは自分の力で立ち上がった。
 強い子だ。
 土魔法使いは、魔法使い系の中では比較的身体能力が高い者が多い。
 初級土魔法に『ロックアーマー』が存在する影響だろう。
 ミリオンズのニムや、ノノンの父親であるニッケスも、なかなかの身体能力を誇る。

「――って、うわわっ!」

「む」

 とか考えていると、バランスを崩したテナが倒れ込んできた。
 咄嵯に受け止める。

「も、申し訳ないっす……。お陰様で助かったっす……」

「構わない。闇の底から這い上がったばかりの少女が倒れ込むことなど、想定の範囲内だ。差し当たって戦局に影響はない」

 俺はテナを抱きしめながら、そう答える。

「……」

「……」

「……あ、あの……」

「どうした? 哀れな少女よ」

 テナの言葉を受け、俺が尋ねる。
 すると彼女は、頬を染めて恥ずかしげに言った。

「助けてくれて、本当に感謝するっす……。でも……そろそろ離してほしいっす……。というか、お尻を鷲掴みにされたら恥ずかしいっす……」

「ん?」

 テナに言われ、俺は自分の腕の中を見る。
 そこにはテナの身体があったのだが……なぜか俺の手が彼女の臀部を揉んでいたのだ。

(無意識のうちに触ってしまったのか……)

 俺の肉体は美少女を求めるあまり、俺の意志とは無関係に動くことがあるらしい。
 全く困ったものだ。

(俺がタカシ=ハイブリッジだとバレていないよな……?)

 ミリオンズの面々、ハイブリッジ男爵家配下の面々、その他男爵としての俺に関わった者は、俺の気性や嗜好というものを知っている。
 黒い装束に身を包み仮面で顔を隠していても、女好きであることをヒントに『ナイトメア・ナイトとタカシ=ハイブリッジ男爵が同一人物』という事実に気付かれる可能性はあるかもしれない。

(いや、この3人は大丈夫か。タカシ=ハイブリッジ男爵としての俺と、直接の交流はないし……)

 彼女たちが知っている俺は、『冴えないDランク冒険者タケシ』である。
 ならば、女好きであることをヒントに『ナイトメア・ナイト』の正体に辿り着かれる心配はないだろう。
 俺は安心して、テナの体から手を離す。

「これは失敬。闇は時に、人の心を飲み込む。気を付けねばならない」

「そ、そうっすか……。み、見かけ通りヤバい人っすね……」

 テナが引き気味に言う。
 ピンチに颯爽と登場することによって稼いだ好感度が、あっという間に下がってしまった気がする。
 ま、まぁいい。
 とりあえず3人とも無事だったんだから。

「最後は貴様だが――特に外傷はないようだな?」

「は、はい! 傷は何もないです!」

「しかし念のため――」

「い、いえ! 大丈夫です!! 本当に!!」

 魔導工房の少女にも外傷はないらしい。
 何やら力説されてしまった。
 純粋に心配しているだけなのに、不本意だ。

 ま、いいか。
 これで囚われの少女たちの無事は確定した。
 俺が次にするべきことは――

「ふん……。邪悪な闇がまた這い出てきたか……」

「ちっ! 舐めやがってよぉ! ダダダ団を敵に回して、生きて帰れると思うなよ!!」

 とりあえず、こうしてイキっているヨゼフを倒すことからだな。
 俺がエレナたちを解放している間に、奴は仲間を呼んでいたようだ。
 彼の背後には、ダダダ団のチンピラたちが集まってきている。
 手間が省けた。
 さっさと倒して、ダダダ団を壊滅させることにしよう。

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