【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1019話 タカシ様の御力で消し去るの

 ダダダ団の本拠地へと向かっている『三日月の舞』。
 その道中の雑談で、エレナの過去の話となった。
 彼女はかつて孤児であり、いろいろと苦労してきたらしい。

「あれ? でも、それがどうしてハイブリッジ男爵への憧れに繋がるっすか?」

「そのことだけどね。テナ、あなたはこの世界をどう思う?」

「どうって……」

 唐突で曖昧な質問に、テナが言葉に詰まる。
 そんな彼女の反応を予見していたのか、エレナはそのまま言葉を続ける。

「例えば、病死、戦争、飢餓……。この世界には、なくなった方が幸せに暮らせるものがたくさんあるわ」

「……」

「それらをタカシ様の御力で消し去るの。そうすることで、人々はより豊かな暮らしができるようになり、結果として私のような不幸な存在がいなくなるわ」

「いやいやいや! 飛躍しすぎっすよ!? なんでそうなったっす!?」

「ふふー。エレナちゃんらしいねー」

 迷いのないエレナの答えを聞いて、テナとルリイが苦笑する。

「とにかく、私はタカシ様を信じているの。彼の発想力、魔法技量、戦闘能力、配下統率力、経済力と政治力、その全てが私の想像を超えているわ。きっとこの世界に革命を起こすに違いない。そう確信したのよ」

「エレナっちが言いたいことは分かったっす……。つまり、ダダダ団を潰すのはその一歩ということっすね?」

「ふふふー。弱者へ暴力を振るうマフィアは、エレナちゃんが特に嫌いな存在だってことだねー? それに、もう一つの理由もありそうー」

「もう一つっすか?」

「上手くいけば、『三日月の舞』の名前がハイブリッジ男爵に届くかもしれないでしょー。そうなれば、エレナちゃんが彼の第九夫人になれる可能性が出てくるよねー?」

「ええっ!? エレナっち、ハイブリッジ男爵と結婚するつもりっすか?」

 ルリイの言葉を受けて、テナが驚きの声を上げる。
 エレナはタカシのことを好いているが、あくまで歴史に残りそうな偉人として尊敬しているだけだ。
 そこに恋愛感情は存在しない。
 少なくとも、テナにはそう見えていた。

「わ、わわわ私とタカシ様が結婚ですって? そ、そそそ、そんなことありえないでしょう!」

 だが、エレナの反応はテナの予想とは異なっていた。
 彼女は顔を真っ赤にして、明らかに動揺している。
 しかも、普段と違って声のトーンが高い。

「ええっ? エレナっちがそんなに驚くことってことは、やっぱり……」

「ふふふー。図星ってやつだねー」

 ルリイがニヤリと笑い、エレナを見る。
 一方のエレナは、ルリイの言葉を否定するように首を左右に振っていた。

「わ、私とタカシ様が……? ああ、そんな……。だめですぅ……。あっ、奥様方が見てますよぉ……」

 エレナは頭を抱え、妄想の世界へと旅立ってしまったようだ。
 両手を頬に当て、恥ずかしそうに体をくねらせている。

「エレナっちが壊れちゃったっす……」

「エレナちゃん、だいじょうぶー?」

「……はっ! ごめんなさい。ちょっと取り乱したみたい」

 エレナは我に返ると、申し訳なさそうな顔で謝る。

「まぁいいっすよ。それより、オレっちたちも協力するっす! エレナっちの夢のために、全力で頑張るっす!」

「ふふふー。もちろんわたしもー。ダダダ団をかるーく粉砕して、オルフェスからラーグに凱旋しようー」

「二人とも……、ありがとう」

 エレナは仲間からの温かい言葉を受け、嬉しそうな表情を浮かべる。
 そして――

「ダダダ団のアジトが見えてきたわ……。雑魚ばかりだと思うけど、油断は禁物よ! 確実に粉砕していくわ! この『紅杖・レーヴァテイン』から繰り出す火魔法でね!」

「ふふふー。わたしの雷魔法も負けないからー」

「オレっちも、土魔法で援護するっす! 『三日月の舞』が織りなす『三位一体』の攻撃は、絶対無敵っすから! 魔法を封じられない限りは!!」

 3人は改めて気合を入れ直す。
 そして、意気揚々とダダダ団の本拠地に向かっていくのであった。

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