【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1014話 止めてくださいよ!

 サーニャちゃんが、床の片隅にとある液体を見つけた。
 それは、昨晩の『エクスプロージョン』の残滓だ。

「にゃぁとしたことが、掃除漏れを見つけてしまいましたにゃ……。お客様、申し訳ありませんにゃ……」

 サーニャちゃんがシュンとする。
 彼女は真面目な良い子のようだ。

「いえいえ、こちらこそすみませんでした。元はといえば、俺が汚したものです。俺が拭きますね」

「いえ、にゃぁがやりますにゃ! お客様はゆっくり休んでいてくださればいいのですにゃ」

「そんな、悪いですよ。ほら、俺のこのタオルで拭きますから……」

 俺はベッド横に置いてあった自分のタオルを手に取り、それで濡れた箇所を拭こうとする。
 だが、それを見たサーニャちゃんが素早く動いた。

「させませんにゃ! これぐらい……手でパパッと……」

「えぇっ!?」

 俺よりも先に汚れ地点に手を伸ばしたサーニャちゃん。
 彼女は、そのまま素手で床をこすり始めた。

「ちょ、ちょっと待ってください! 手でなんて、汚いですよ!!」

「あっ、ごめんなさいですにゃ……。確かに、にゃぁの手で拭いたぐらいじゃきれいになりませんにゃ。逆に汚くなっちゃうですにゃぁ……」

 サーニャちゃんがそう言う。
 違う、そうじゃない。

「そうではなくて! さっちゃんさんのきれいな手が――」

「にゃぁのことですかにゃ? 大丈夫ですにゃ! 床は普段からちゃんと掃除しているので、そこまで汚くないのですにゃ!」

「いや、ですからその液体が汚くて……」

「え? これのことだったのですにゃ? 汚いものとは思っていなかったのですにゃ。これはいったい、何なのですにゃ?」

 サーニャちゃんが小首を傾げる。
 やはり、何もわかっていないようだ。
 マズイぞ……。
 どうにか誤魔化さないと……。

「何かわからないものを、手で拭いたのですか?」

「朝に掃除した感じだと、危険なものではないと思ったのですにゃ。危ないものは、触っただけで痛かったり、凄い匂いがしたり、色が変わっていたりしますからにゃ」

 サーニャちゃんが言う。
 どうやら、彼女の経験則からの答えらしい。

「なるほど……。しかし、いくら何でも無防備過ぎでは……?」

「そうかもしれませんにゃ。でも、にゃぁはこう見えても好奇心旺盛で、怖いもの知らずな性格をしているんですにゃ」

 確かに、彼女は度胸がある方だと思う。
 いくら両親が遠くに行ってしまったからといって、一人で宿屋を切り盛りしようとは思わないだろう。
 しかも、ダダダ団の件では、俺が駆けつける前の時点からチンピラと口論していたのだ。
 普通の少女なら、怖くて震えて動けなくなるところだろう。

「それで、この液体の正体は何なのですにゃ? 危険なものではありませんにゃ?」

「はい。確かに、それは危ないものではありませんが……。ええっとですね……」

 俺は、どう説明したものかと頭を悩ませる。
 まさか、俺のアレだとも言えないし……。

「ふむぅ……。お客様は、この液体についてご存じのはずですにゃ! にゃぁに教えてくれないのは、ずるいですにゃ! にゃぁだって知りたいのですにゃ!」

「しかし――」

「教えてくれないなら、もういいですにゃ! にゃぁが自分で当ててみせますにゃ!!」

 サーニャちゃんがムキになる。
 好奇心旺盛な性格というのは、本当のようだ。

「いったいどうやって当てるつもりなのです?」

「それは――こうしますにゃ!!」

 ペロッ。
 サーニャちゃんは、自分の手を舐めた。
 そこには当然、先ほど拭いたばかりの液体が付着していた。

「なっ!? 何を……!?」

「ふむふむ……。にゃるほど。口にすると、改めて独特な匂いが鼻を刺激しますにゃ。イカ臭いというか……。味は――苦くて、しょっぱいような、不思議な味なのですにゃぁ。にゃぁは嫌いな味ではないのですが、美味しいとも思いませんにゃ」

「ちょ、ちょっと……。止めてくださいよ!!」

 何の羞恥プレイだ。
 こんな食レポを聞かされるとか……。

「にゃ? よくわかりませんが、お客様の顔が真っ赤になっていますにゃ! こうなったら、意地でもこの液体の正体を当てて――」

「止めてくださいよ!!!」

 俺が再度、強く制止する。
 今度は言葉だけではない。
 彼女の手を掴んで無理やり止め――

「あっ」

「にゃんっ!」

 俺はベッドの上でバランスを崩す。
 そして、サーニャちゃんに覆いかぶさるように倒れ込んでしまったのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品