【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1010話 にゃぁは安心しましたにゃ!

 俺はダダダ団にボコボコにされてピンチだった。
 そこに、エレナ、ルリイ、テナの3人からなる『三日月の舞』が乱入し、奴らを撃退してくれた。

「ふぅ……。危なかったな」

 俺はそう呟いて、地面に座り込む。
 チンピラたちは、この場から去っていった。
 しかし、これで終わりじゃない。
 むしろ、ここからが本番だ。

「エレナ、ルリイ、テナ。ありがとう」

 俺は立ち上がりつつ、礼を言う。

「これぐらい、気にしなくていいわよ。というか、ありがたいと思うんなら、いい加減に敬語を使いなさいよ!」

「ふふふー。どういたしましてー。エレナちゃんは上下関係に厳しいから、従っておいた方がいいかもねー」

「どうもっす! オレっちは気にしないっすけど、エレナっちは怒ると怖いっすよ!!」

 エレナはやや素っ気ない態度で答え、ルリイは微笑みながら返し、テナは元気よく応じた。
 ツンデレっぽいのが火魔法使いのエレナ。
 柔和なのが雷魔法使いのルリイ。
 元気でボーイッシュなのが土魔法使いのテナだ。

 よし、覚えた。
 俺は記憶力がいい方なんだ。

「でも、タケシも意外にやるのね。見直したわ」

「え? ……そ、そうか?」

「敬語!」

「……そ、そうでしょうか?」

 今の戦いで、俺にいいところがあっただろうか?
 最初に、偶然を装った金的攻撃でヨゼフを倒したぐらいかな……?
 しかし、あの時はまだエレナはここに来ていなかった。
 彼女が目撃したのは、チンピラたちにボコボコにされている俺の姿だろう。
 それなのに、俺を見直すとは一体どういうことなのか……。
 俺が首を傾げていると、ルリイとテナが口を開いた。

「ふふふー。そっちの女の子を助けるために、ダダダ団に挑んだんでしょー?」

「負けることが分かっていて立ち向かうなんて、なかなか出来ることじゃないっす! その精神だけは立派っす!!」

「……」

 なるほど。
 そういうことか。
 確かに、一般人からすればダダダ団は怖い存在だからな。
 チンピラ相手に殴られる覚悟を決めてまで助けに入るというのは、なかなかできることじゃないだろう。

(まぁ、実際はそこまで考えての行動じゃないのだが……)

 サーニャちゃんが泣きそうになっているのを見て、咄嗟に体が動いただけの話だ。
 俺が予定している『ヤマト連邦への潜入作戦』を考えれば、むしろスルーするべき局面だった。
 ネルエラ陛下にバレたら俺の評価が下がるかもしれない。
 まぁ、結果的にチンピラを追い払えたし、とりあえずは良しとしよう。

「ふっふっふ。見る目があるじゃないですか! その通りです! 俺は正義のために立ち上がったのですよ!!」

 俺は精一杯カッコつけて言う。
 しかし、エレナたちは半眼で俺のことを見ていた。

「……タケシ、調子に乗らないことね。その精神は素晴らしいけど、現実問題としてあなたは何もできなかったんだから」

「ふふふー。でも、タケシさんは凄いよー。あれだけボコボコにされていたのに、もう大丈夫そうだもんねー?」

「遠目で気付かなかったっすけど、実は闘気で防御していたんすか? なかなかの防御力っす!」

 エレナ、ルリイ、テナの順で言葉を発する。
 俺のことを一定程度には評価してくれているようだが、どうにも上から目線というか、どこか馬鹿にしたような雰囲気がある。
 まぁそれも当然か。

 彼女たちはベテラン冒険者であり、少なくとも3年前ほどの時点からCランクパーティを組んでいた。
 一方の俺は、彼女たち視点ではDランクで停滞中の新米冒険者だ。
 しかも、つい先ほどチンピラたちにボコボコにされているシーンを目撃している。
 格下が粋がっているように見えるのだろう。

(舐められていることは別にいい。俺の偽装が成功しているということでもあるからな。しかし……)

 すぐに立ち上がったのは失敗だったかもしれない。
 彼女たちから見て、俺の防御力が優れていることになってしまっている。
 実際にその通りなのだが、ここで肯定するべきではない。
 こういう小さなところから、俺の正体がバレる恐れがあるからな。

「うっ!? いたた……。やっぱり痛いですね……。あはは……。ちょっと休んでおきますよ」

 俺はお腹を押さえて、苦しそうな演技をする。
 我ながら名演技だ。
 これで男優賞は俺のもの――

「にゃにゃっ! お客様ー! 死んじゃダメですにゃーー!!!」

「ふごっ!?」

 俺は突然現れた少女に抱きつかれて、変な声を出してしまう。
 今のはいいところに直撃した。
 油断していたので闘気を切っていたし、殺気がなかったので咄嗟の回避もできなかった。

「……って、さっちゃんさん!?」

 体の痛みに耐えつつ視線を上げると、そこには猫獣人の少女がいた。
 彼女は俺に強く抱きついている。
 発展途上の柔らかい胸が心地良い。

「はいですにゃ! サーニャですにゃ!! お客様、生きてますにゃ!? 死んじゃ嫌ですにゃ!!」

「え、ええ。なんとか無事です……。今のタックルは効きましたが……」

 俺は少しだけ苦笑いをしながら答える。
 すると、彼女はパッと顔を輝かせた。

「よかったですにゃ! にゃぁは安心しましたにゃ!!」

「むぐっ……!」

 再び、彼女の膨らみかけの胸に顔を埋められてしまう。
 またもや、心地よい感触が俺を襲ったのだった。

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